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蠱毒の戦乱  作者: ZUNEZUNE
第五章:盾武者の宣戦
43/230

42話

面義と次に会った日、師匠と黒金にあいつから手に入れた情報を話した。俺が言葉の駆け引きでここまで色んなことを手に入れたことが驚きなのか、師匠どころか黒金も珍しく顔に出ていた。

俺だって最初に何か得るのは黒金の方だと思っていたし、まさかあんなに早く会えるとは予想外だった。まぁ俺たちが探しているのに対し、向こうは隠れようともしていなかったので当然かもしれない。


取り敢えず手に入れた情報としては鎧蟲狩りを行っている組織の目的は研究、今のところ甲虫武者がモルモットとして狙われているなんてことはなかったが、面義の言動からしてその可能性も捨てきれなかった。なので今はそこまで注意を払うべきでもないという結論が出る。

しかしあくまで現状での話で、完全に信用しているわけではない。その組織が今のところ俺たちや一般人に害をなしてないだけで、もしかしたらいつか敵になるかもしれないと黒金は言っていた。


俺も同じような危惧をしており、珍しくあいつと意見が合っていた。初対面こそかなり良い出会い方だったが二度目の対面で良く分かった――俺とこいつは全然違うと。

貧乏な現状、性格など一致するものは沢山あったが思想そのものが違い過ぎる。あいつは金を稼ぐためならなんでもする男、俺はそこまで非情になれない。


一見完全に面義を敵対視しているようにも見えるがそういうことでもない、確かにあいつは味方でもないがだからこそ説得し俺たちの()()()()()()()()()のだ。

あいつのメンガタクワガタの鎧は強力で、もし鎧蟲狩りなんかやっていなければ頼もしい友になっていたかもしれない。

その可能性を潰したのは面義の異常なまでの金への執念、あいつの行動基準は全てが金になのだ。それが全てを狂わせていると言っても過言ではないだろう。


(……何であそこまで金を欲しがるのかなぁ)


俺だってカフェ・センゴクに来るまでは今みたいな余裕もなく、金を欲しがって血眼に働いていた。しかし面義の「あれ」に比べれば可愛いもので、今まで会った誰よりも金銭欲を持っている男だ。

だからその理由を俺は知りたかった。それさえ分かれば少しはあいつのことを理解することもできるかもしれない。


そう思いつつ俺は店の掃除を行っていた。裏では伊音ちゃんが色々な準備をしており、あれから特に変わり事も無く平穏な日々が続いていた。俺もこの間のような連続ミスは起こさず、黙々と働けている。自分が何に恐れていたのか分かったからスッキリしたのだ。

その正体は、「面義やその後ろにいる組織が酷い人間かもしれない」という予感から来るものであった。でもあいつはただ金が欲しがっているだけ、もし何の関係も無い人を巻き込むというのなら止めればいい話だ。


(今度は、ちゃんと味方として戦いたいな)


そんなことを考えていると懐の中から振動を感じる。スマホの通知だ、客もいないのに見てみると黒金からの通話であった。

あいつが俺に電話してくるなんて珍しい、とは言うが俺もよっぽどのことが無い限りかけないし、それは向こうも同じのはず。つまりそのよっぽどが起きたのだろう。


「――黒金か!?もしかして……」


『鎧蟲が現れた。しかも2()()()()()に』


「ッ――ごめん伊音ちゃん!俺行ってくる!」


「あ、はい!」


その言葉で俺は一気に覚醒し飛び出るように店を出て、エプロンも脱がずに黒金の示す場所へと走り出す。2ヶ所同時……最悪だ!つまり両方どうにかしないといけないという意味だ。

やがてしばらく走り出すとようやく虫の知らせの索敵範囲が届くようになり、黒金の言った通り鎧蟲の反応が大きく分けて左右2つに存在している。


数で攻めても駄目なら分散か……大方俺と黒金を分断させるためのものだろう、勿論俺は黒金がいない方の反応へと急いだ。しかも前回の時と比べて人がいてもおかしくない場所であった。被害が出る前に急がないと!

そう言って辿り着いたのは1本の橋が架けられた川、その橋の舗装なのか上にはヘルメットを被った男性が複数いる。


だが彼らがその口から出している叫びは仕事に対しての奮起のためじゃない、正体不明の怪物に襲われている際の悲鳴であった。多くの蟻が彼らを狙って群がっていた。


「――このッ!!」


その光景を見た瞬間俺は走る速度を上げ、その痣から刀だけを形成して奴らに斬りかかる。作業員の顔に今にも届きそうだった歪な手を斬り落とし、牽制して庇うように前へ立った。


「早く逃げて!」


「は、はい!」


突然現れた虫の怪物に対してか、それともその手を切断した銃刀法違反者か、どちらに恐れているのかは分からないがその場にいた作業員はすたこらサッサとこの場を逃げ去る。

周りに人はいない、これで思う存分戦えるだろう。そんなことを考えているといつのまにか前方全体を蟻に囲まれていた。


「行くぞ――出陣!!」


早速俺は糸で数匹の蟻を薙ぎ払って橋から落とし、そのまま蛹を形成して鎧を身に纏う。白く輝く鎧が橋の上で爆誕し、奴らの前に現れる。


「我こそは、グラントシロカブト!おりゃああ!!」


やがて全ての蟻の瞳が俺に突き刺さった後、名乗りを上げて走り出す。数匹がこちら目掛けて突撃してきたがその脇を通ると同時に斬りかかった。

すると別に2匹が襲ってきたため飛んで避けると同時に手すりに乗り、少し高所からカウンターを入れる。橋の上はあっという間に鎧蟲の肉片と鮮血で染まった。


「たぁ!せいやぁ!!」


もう蟻如きに手こずる俺ではない、黒金の方も心配だしさっさと終わらせてそっちに行こう。というか俺が颯爽と駆けつけてあいつを助け、少し揶揄ってやろう。

だから、こいつらには共食いする暇も与えない!


俺は手すりの上を走り橋の反対側へ移動しそのまま降りる。そして引き続き向かってくる蟻を蹴散らしていった。

瞬間――俺の虫が背後からの攻撃を察知する。


「っと危ない――おらぁ!!」


振り返ると同時に背後を斬りつけると、手すりの上に手を乗せている蟻が下へと落下する。最初に落とした蟻たちが柱を伝って上へとよじ登ってきたのだ。

どうやら蟻のこいつらに上も下も関係無いらしい、何せ垂直の壁を登れるのだから。

しかし、上下を自由にできるのはこいつらじゃない。


「――はぁああああ!!!!」


俺は前翅を開いて橋から飛び降り、滑空して柱を登っている途中の蟻たちを切り裂く。橋下を潜った後は上に戻り、橋上に足を乗せないまま蟻たちを攻めていった。

そこで俺は一度離れて橋を一望する。確かに奴らは壁をよじ登れるが、足場が悪い分空を飛べる方が有利であった。


これなら飛んだままの方が良いだろう、再び奴らへ突っ込もうとした瞬間――


「アガッ――!?」


突如として背中を襲った激痛に、俺は顔を強張らせる。背中から侵入してくる異物、それは深々と俺の体に刺さりその影響で吐血してしまう。

俺は飛べなくなり川の上に墜落、水に浸かるわ刺されるわでどちらにしろ翅が使えなくなってしまった。


「何だこいつ……バッタ?いや()()()か!」


一体誰の仕業だ、水浸しになりながらも振り返ってその姿を確認する。

そこにいたのは蟻ではない新種の鎧蟲、しかし同じく足軽の格好をしていた人型のイナゴであった。


まるで人間に巨大なイナゴの顔を引っ付けたような姿で、手には俺の血で汚れた薙刀が握られている。あれで俺の背中を刺したのだろう、俺の鎧があんなもので貫かれるはずがない。だが前翅を開いた状態を狙われたのだ。

ここにきて新種の鎧蟲が来るとは思わなかった。しかも他の蟻も続々と川へと降りていく。新戦力に加え大量の蟻、流石に分が悪かった。


こうなったら一旦翅で退避し、猛吹雪で遠くから攻撃しよう。生憎弓兵の蜂はいない、距離さえ取れればいけるはずだ。使えなくなった翅もチョコバーを回復すれば……回復……


「しまったチョコバー忘れた!俺の馬鹿!」


回復用のチョコバーを忘れてしまったことに気づく俺、これじゃあ翅も治せないので地上戦を強いられるしかない。こうしている間にも背中の傷から血が流れ、ジンジンと痛みを感じていた。


(くっそ……この傷が治せないんじゃホントにヤバイかも……!)


「ギッ――!!」


現状況に焦りを覚えていると、イナゴの鎧蟲が水飛沫を上げながらこちらへと突っ込んで来た。

その速さは勢いで川の底を見せる程のもので、あっと言う間に俺との間合いを詰めてくる。水面の上で薙刀と白い刀がぶつかり合う。


「あぐッ……うわぁ!?」


背中の出血が酷くて上手く力が入れない、そのせいで唾競り合いにも負けて押し飛ばされてしまった。傷口に砂利や小石が食い込み痛みを加速させる。

やがて俺が背中に痛みに悶えていると、周りの蟻たちが一斉に跳びかかってきた。


「こっの……あああああッ!!!!」


喉の底から雄たけびを上げ俺は刀を振る。斬撃を飛ばす「猛吹雪」、それで蟻を吹き飛ばした。これでもうまともに戦える蟻はいないはず、これでイナゴに集中できるはず――


「うッ――うがぁああ!!」


その瞬間、俺は再びイナゴの薙刀で斬られその衝撃に吹っ飛ばされてしまう。川岸の上を転がり小石を掃けて一本道を作り上げた。

今の一撃で鎧に穴が開いたわけじゃない、しかしあの強烈な刃を足の力だけで受け止め切ることはできなかった。一体何がそんな威力を生み出しているのか、注目すべきは()――!


(脚力で一気に跳び刃の切れ味を上げる……勝家の野郎を思い出すな)


バッタやイナゴの名前を聞けばピョンピョン跳ねているイメージがある。よく知っているイナゴだって自分の身長を遥かに超える高さを飛び越えていた。

つまりその脚力は鎧蟲になっても変わらないということだ、足の力で加速し素早く動き攻撃の威力を上げる。さっき瞬く間に間合いを詰められたのもその原理だ。


そしてイナゴ自身も自分の強みを示すためか、その脚力を活かし一気に飛び上がる。俺の視界から外れ、その頭上を悠々に超えた。


(頭上なんていうレベルじゃねぇ!翅無しでも橋に飛び乗ることもできるぞ!)


その圧倒的なジャンプ力に圧巻している暇も無く、イナゴは着地と同時に自分の武器を振り下ろしてきた。

このまま受けるのは不味い!だったら……


「グラントシロカブト――白断ちィ!!!」


俺は真上からの攻撃を白断ちで迎え撃ち、奴を川のど真ん中にまで吹っ飛ばした。その体に深く刃を入れることはできなかったが効果覿面だ!

するとイナゴは再び自慢の脚力を使い、真正面から突っ込んで――!?


「フェイン――トォッ!?」


しかし予想に反しイナゴは二時の方向に跳び、その先にあった柱を中間として挟み方向変えてきた。思いがけない所から斬られ後ろに後ずさる。


トリッキーな動き……あの脚力だからこそできる芸当か!だが後ろさえ取られなければ――!


(なッ!?後ろを取られ――)


「――ギッ!!」


頭で理解するより先に痛みが脳へ届く。確かにあいつの薙刀は強烈だが俺の鎧が貫通されることはない、背中の傷をもう一度狙われない限り防戦一方でチャンスを伺える――そう考えていた。


しかしあいつは一瞬で俺の背中に回り、後ろから斬りつけてきた。

背の傷に、追い打ちが重なる。


「うっがあ……!!」


ドバドバと綺麗な川の中へと消えていく俺の血、それと比例するかのように大きくなる意識への負担、そして倒れそうになる直前に見たのは、自分に迫りくる追撃。

――そんなの、食らって堪るか!


「……らぁあああ!!」


1歩前へ踏み出し意識を保ち、振り返ると同時に刀を横に払う。まさか俺がまだ踏みとどまるとは思いもよらなかったのか、イナゴも反応しきれず腹に一太刀浴びせられた。


どうだ――ざまぁ見ろ!

俺は刀の先を突き出し、牽制することでその距離を作る。何とか一撃入れることはできたが、このままだと俺が先に崩れるのは分かっていた。

こうなったら最初に倒した蟻の死骸を少しでも吸収し、背中の傷を少しでも治す必要があった。そう言って右手を翳した瞬間――


「うわッ!?」


突然、視界を塞ぐほどの大きさを持った物が俺とイナゴの両方を蹴散らす。

それには見覚えがあった……()だ。植物のようにモサモサと伸びるその髭はそこら辺に散らばっていた蟻の死骸を一掴みし、そのまま遠くへ避難させる。その髭が伸びる元には、当然あの男がいた。


「……面義!」


「よぉ、随分とピンチじゃねぇか。皆の平和を守るじゃないのか?ヒーローさん」


第3の甲虫武者、面義がそこに立っていた。まだ鎧を纏ってはおらず盾と刀だけを作ってこの戦場に割り込んでくる。

この間会った時は喧嘩別れみたいな終わり方だったため、こうして顔を合わせると気まずくも思う。しかしその目は俺から外れすぐにイナゴへと移った。


「イナゴの鎧蟲……聞いたことのないタイプ、もしかして新種か!?よっしゃ更に稼げるぜ!」


どうやら新種の鎧蟲も面義にとっては大金を得るチャンスとしか思っていないらしい。いやそれにしたって何故俺から蟻の死骸を奪う!?俺の回復を妨げたってこいつには何のメリットも無いはずだ。


「蟻の死骸も一応買い取ってもらえるんだ、こう見えて一攫千金を狙ってるわけじゃない、無一文で帰るのも嫌だから一応の()()だ」


「ぐっ……お前!」


要するに、イナゴを逃した場合を想定して蟻の死骸を独占するつもりだった。

なんて迷惑な野郎だ!これじゃあこの鎧蟲に勝てないじゃねぇか……と思ったが、面義の参戦で状況は変わるかもしれない。


「じゃあお仕事の時間としますか……宣戦!」


川の水を散らしながら痣から糸が伸び、一気に包み込み蛹と化す。中からは鎧の装着音が反響し、内部から刀で亀裂を入れ盾で殴り自分の姿を解放させる。

オレンジのように爽やかな橙色、兜には黒金のオオクワと同じような2本の角が伸びている。その手に持つのは刀と盾、あの盾は様々な攻撃ができるようになっている。


「アイアム――メンガタクワガタ、はぁ!!」


メンガタの鎧を身に纏った面義はそのまま翅で飛び上がり、着地と同時にイナゴへ斬りかかる。それに対しイナゴは1歩後ろに下がって退避し、懐に潜り込むようにし薙刀のカウンターを入れた。


しかしその刃はガキン!という鈍い音と共に弾かれる。イナゴの一撃は面義の盾によって防がれた。仮面のようなデザインのそれは、傷など一切付かずにその一太刀を受け止める。


「重いの、食らわせてやるッ!!」


その瞬間、盾から発生した凄まじい衝撃波でイナゴは吹っ飛ばされた。打ち上がる水飛沫と共に水面に落ち、今しがた自分を襲った見えない攻撃に困惑している。


「メンガタクワガタ――翁呪樹!!」


すると面義は盾の仮面から髭を伸ばし、間髪入れずにイナゴへ畳み掛ける。髭はその両足を縛り上げ、そのまま軽々と持ち上げて玩具のように振り回した。

そして橋の支柱に何度もぶつけて刀ではなく打撃で倒そうとしているその姿は、まるで弄んでいるかのようにも見える。


「おい……さっさとトドメ刺せよ!お前の刀と技できるだろ……!」


「はぁ?そんなことしたら折角の商品に傷が入っちまう、できれば慎重に倒したいんだよ!」


「お……前……!」


俺は早く戦いを終わらせるよう面義に促すもこいつの行動基準はあくまでも金、その頭の中は綺麗な状態でイナゴを倒し、その死骸を売る事しか無かった。

その油断でイナゴを取り逃し、人がいる方へ逃げたらどうするつもりだ……!


「よし……このまま押し切ってやる!」


そんな俺の心配も知らずに面義は引き続きイナゴを振り回し、メリーゴーランドのように回転させていく。髭に足を完全に捕らえられたイナゴはどうすることもできず翻弄されていった。


やがてトドメにと橋の上にイナゴを叩きつけようとしたその時、イナゴは空中にも関わらず器用に体を翻し、髭を自分の方に巻きつけて盾を奪い取った。


「お、おい!?うぐッ――!?」


自分の手から離れる盾に戸惑う面義、一方イナゴは薙刀で器用に髭を切り裂く自由になる。そして橋の側面を足場にし真っ直ぐ突っ込んで来た。

もう盾も無い面義に自分を守る術は無い、その刃先が鎧を貫き体に侵食する。


「あがッ……この野郎ぉ……!」


腹部を刺され血を垂らし、面義は俺の所まで吹っ飛ばされる。いつのまにか痛手を受けた甲虫武者が2人並んで膝を川底に付き、イナゴがジリジリと詰め寄ってきた。


「さっきの蟻の死骸……あれ食って回復しろよ!少しくらいなら治るはずだ……!」


「馬鹿言うなよ……お前は飲食店のバイトでつまみ食いすんのか?」


「まだそんなこと言って……このままだと殺されるぞ!」


このままだと殺されるのは明白、残された手は蟻の死骸を吸収し傷を癒して立ち向かうしかない。しかしこんなピンチになっているのに面義は死骸を譲る気は無いらしい。

まだ金のことを考える面義に怒りを通り越して呆れを覚えた。一体こいつの精神はどうなっているんだよ!?」


「お前……金と自分の命、どっちが大切だ……!」


「――()()()()だ!兎に角盾も奪われたし、一旦退いて傷を治してから……」


俺の問いに対し食い気味で帰ってくる返答、すると面義はこの状況を不利と感じこの場から去ろうとした。

()()退()()――?何を言っているんだこいつは?俺はその肩に手を置いて引き留める。


「……何だよ?」


「ハァ……ハァ……ふざけんなよ!このまま奴を野放しにしたら、大勢の人が犠牲になるだろ!傷を治すために一時退却なんてしてる暇は無い!」


「俺の知った事か!だったらお前1人で戦えよ。もっとも、その傷で挑んだら死ぬと思うがな」


鎧蟲を前に互いの意見をぶつけ合う俺と面義、確かに一旦回復して再戦するのも1つの手だろう。けどそうしたらその間に巻き込まれる人がでるかもしれない、そう考えると引き下がることなんかできるわけない!


「俺だってそうしたい、だけどあいつを倒すにはお前の力が必要なんだ!悔しいけど、俺1人じゃあいつは倒せない!」


「それこそ俺に関係の無い話だ!あの黒い奴に頼めばいいだろうが!」


黒金は今別の場所で鎧蟲と戦っている、向こうに反応する虫の知らせもまだ消えてないのを見るとあいつの方も決着がついていないのだ。もしかしたら向こうにもイナゴタイプの鎧蟲が現れているのかもしれない。


だとしたら益々目の前のイナゴを倒さないといけない。そしてその為には面義の力がどうしても必要であった。


「兎に角俺は嫌だね、このまま帰らせてもら――」


「――いいから黙って俺と戦え!!金なら俺が払ってやる!!盾が無いなら俺が盾になってやる!!」


「――ッ!!!」


いつまでもウジウジという言う面義に、俺は我慢ができなくなり勢いよくその首元を掴み上げる。そして鎧の隙間に手を入れ財布を取り出し、そこに入っている有り金を全部その顔にぶつけてやった。


俺の圧力に押されたのか、面義は何も言わないようになり俺の形相を見つめてくる。静寂の中で2人の息遣いだけが聞こえ、しばらく睨み合いが続いた。

そんな俺と面義の喧嘩を見届けるのも飽きたのか、イナゴがこちらに突っ込んでくる。迫りくる刃先、ギラリと光ってこちらを刺し殺そうと狙う。


「――おらぁあ!!」


その突進に対し俺は両腕を交差して対峙し、真っ向からの刃先を籠手で受け止める。例え背中に穴が開こうが俺の鎧は絶対に壊れない、足腰に力を入れ何とか耐えきった。


「面義ィ!今だ――!」


「ッ――うおらぁあ!!!!」


そして俺は間髪入れずに面義の名を呼びチャンスを伝える。一瞬戸惑ったが橙色の武者はそれに合わせ、俺が受け止めている間にイナゴの体を切り裂いた。

体を斬られ数歩後ろに下がるイナゴ、その前には2人の武者が立ちはだかった。


「――金が入るなら一応働いてやるよ。だからお前も盾としてちゃんと働けよ」


「おう――好きなだけ使ってくれ!!」


こうして俺と面義の一時ばかりの共闘が始まった。盾として使われるのは癪だが、それで協力してくれるなら俺は喜んでこの身を捧げてやる!

倒すべきは目の前のイナゴ、2本の刃が奴に突きつけられた。

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