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お父さんがゆく異世界旅物語  作者: はなまる
第六章 砂漠の旅とパラシュ

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第八話 乾燥注意報

 砂丘に挟まれるように伸びる街道を馬車が走る。薄っすらと砂に覆われた石畳(いしだたみ)は、いつか砂に飲まれてしまいそうで、心許(こころもと)ない気持ちになる。


 ナツメ椰子(やし)に囲まれた、小さなオアシスをひとつ、露店(ろてん)が立つ小さな街をひとつ越えた。いつくかの荷を降ろし、ナツメ椰子やサボテンの実、サーボスの粉を買う。サーボスの粉はオアシスに生える木の実を()いた粉で、砂漠の民はこれでパンを焼く。硬いが栄養があって腹にズッシリくる。


 ナツメ椰子は地球のものと良く似ている。生でも食べられるし、ドライフルーツにすると干し柿のように濃厚で甘い。そして、サボテンの種類はサラサスーンと、比べものにならないくらい豊富だった。


 味や食感も様々(さまざま)で、肉の旨味が沁みやすい大根っぽいものや、オクラっぽいネバネバ、アスパラっぽく瑞々しいもの、ほのかに甘くサクサクとした、マカロンっぽいものまである。共通しているのは、生でも食べられるし、料理にも使える。そして乾燥に強く保存も効く。


 サボテン万能(ばんのう)過ぎる。輸送時のリスクさえクリア出来れば、もっと流通するだろうに。


 ナツメ椰子の木陰で、水場を眺めているだけで、染み渡るような安堵感(あんどかん)を感じた。水の心配などした事のない日本人には、砂漠のプレッシャーはキツイ。水の(たる)が全て()れていて、途方に暮れる夢を何度も見た。俺は口に入れるもの全般と、一日に二十リットルも水を飲む馬の世話を任されているのだ。


 露店で砂漠の(たみ)が使う鍋を見つけた時は、飛び上がるほど嬉しかった。(ふた)が三角帽子のように尖っていて、鍋の中の水蒸気は三角帽子の天辺(てっぺん)で水滴になって鍋に戻る。砂漠ではこの鍋でほとんど水を使わずに煮込み料理を作るそうだ。



「次の街で、馬車を降ります」


 実際、馬の消耗は激しく、水の消費も大き過ぎる。だから野営中にロレンがそう言った時には、誰もが頷いた。


 それは同時に、馬や馬車と一緒に留守番をする人が必要になるという事だ。そして、街道の行き止まりの街で降ろすはずだった荷物を、どうにかしなければいけない。


「ガンザ、次の街は大きい市が立ちます。露店(ろてん)を出して、荷物の商品を(さば)いて下さい」


 うん。ガンザは人当たりもいいし、交渉も出来る。きっと海千山千(うみせんやません)の客にも負けないだろう。


「トプルは馬の世話と、馬車の護衛をお願いします」


 うん。トプルは腕っ節も立つし、よく俺が馬の世話をしていると手伝ってくれた。


「俺も残っていいか?」


 ヤーモが珍しく手を上げて言った。


「ああ、ヤーモは暑いのが苦手ですからね。わかりました」


 三人も抜けるのか。


「俺とハルは?」


 俺が聞くと、ハルが泣きそうな顔をした。自分は残っても着いて行っても、役に立たないと思っているのだろう。


 バカだな! ハル、大人に混じって役に立つ八歳児なんているわけないだろう?


「ハルは大切な(いや)し要員ですからねぇ。ハルを連れて行っても良いですか?」


 ロレンが留守番組に聞く。


「仕方ねぇな。ハル坊は(ゆず)ってやるよ! 俺たちはのんびり留守番するさ」


 ガンザが言った。みんながハルを気遣ってくれるのは嬉しいが、心苦しくもある。


 それはそうと、俺は連れてってもらえんのか、な?



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