表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お父さんがゆく異世界旅物語  作者: はなまる
第六章 砂漠の旅とパラシュ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/168

閑話 耳なしクロル

 《耳なしクロル》 日本語訳:二ノ宮ハル 監修:ロレン


 むかーしむかし、ある村に、仲の良いネコ耳の若い夫婦がいました。二人は結婚して何年もたつのに、なぜか子供ができませんでした。


 二人はいつか子供ができた時のために、たくさんのおもちゃやポンチョを作って、早く子供ができますようにと風や太陽の神さまに祈りました。


 ある日、森に狩りに出かけた二人は、ケガをした小さな男の子を見つけました。 額から血を流し、大きな声で泣いています。


 二人は男の子を大急ぎで連れ帰り、ケガの手当てをしました。


 男の子はすぐに元気になりましたが、自分の名前も覚えていないようでした。そして、二人にはわからない言葉を口にしていました。


 二人は男の子に『クロル』と名前をつけ、一緒に暮らしはじめました。『クロル』は春の最初の日に吹く風の事です。二人がずっと待っていた子供につけると、決めていた名前です。


 クロルは二人の子供になり、元気に暮らしました。すぐに言葉を覚え、村の人にも可愛がられて育ちました。


 クロルは時々、


「ねぇお母さん、どうしてぼくには耳と尻尾がないの?」と聞きました。


 お母さんは、


「もうすぐ生えてくるから、心配しなくて大丈夫よ」と優しく笑いました。


 お父さんは、


「耳も尻尾もなくても、クロルはクロルだ。それに、クロルはとても頭が良い」と誇らしげに言いました。


 そして二人ともその(たび)に、クロルをぎゅーっと抱きしめてくれました。


 クロルは二人と同じネコ耳が生えてくる日を、楽しみにして暮らしました。


 ある日、村の入り口に、空飛ぶ船が降りて来ました。船は、低く飛ぶことはあっても、地面まで降りてくる事は、滅多にありませんでした。村の人と一緒に、クロルたちも見に行きました。


 しばらくすると船から、変わった服を着た、耳も尻尾もない人が出てきました。


 耳のない人は、クロルを探しに来た人で、クロルはその人たちの仲間だと言いました。


 お父さんとお母さんは、クロルを連れて行かないでと頼みました。クロルも行きなくないと泣きました。


 耳のない人は、手から火を()き、クロルのお母さんの髪を焼きました。そして泣き叫ぶクロルを乗せて船は飛び立ってしまいました。


 お父さんとお母さんは、ポンチョを脱ぎ捨てると山猫の姿になり、船を追って走りました。手足に精一杯の力を集め、爪から血を流しながら、走りました。


 クロルは船から身体を乗り出し、


「お父さん! お母さん! きっと帰ってくるから!」と、叫びました。


 クロルの叫び声は、風に流され、遠い山にこだましました。



▽△▽



「ロレン、これで終わり?」


「そうですよ。おしまいです」


「続きは? クロル、帰ってくる?」


「どうでしょうね。ハル、続きを作ってくれませんか?」


「かんたん! クロル、耳生えて帰ってくる。みんな、幸せ、生活する」


「それが良いですねぇ。ハル『生活する』より『暮らす』の方が感じが出ますよ」


「幸せ、くらす」


「そう」


「物語りの最後は『そして、みんな幸せに暮らしました』が、一番良いですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ