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お父さんがゆく異世界旅物語  作者: はなまる
第四章 ニセ耳とビークニャ

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第九話 灰色狼の群れ 其ノ一

動物を殺す描写があります。

 夕焼けがはじまっても野営の場所が見つからず、仕方なしに道の端に馬車を寄せた時だった。


 狼の遠吠えが遠く近くで聞こえたかと思うと、行く手をさえぎるように大きな灰色狼が数頭、姿を現した。


 馬車はそう簡単にUターン出来ない。わかってやっているとしたら、頭の良い生き物だ。


 さらに遠吠えが吠え交わされ、やがて馬車はすっかり狼の群れに囲まれてしまった。日が沈み、暮れはじめた辺りに低く威嚇いかくの声がひびく。


 ロレンとガンザが弓を持ち、ほろの上に登る。俺たちの馬車の御者をしていたアンガーが、クーを毛布で包んで背負う。ハルが心配そうにアンガーの名前を呼ぶと、


『大丈夫、俺が絶対にクーを守る』と言って、ひらりと馬車を飛び降りて行った。


 ハザンが「ヒロトとハルも幌の上から応戦してくれ。狼は幌の上には届かない」と言って走って行く。


 俺はハザンが俺と、ましてやハルを戦力として数えた事に少し驚いた。信頼してくれているのか、それともそれだけ事態が逼迫ひっぱくしているのか。どちらにしてもやるしかない。今ならまだ外は明るさが残っている。闇に沈んでしまえば、夜目の効かない俺とハルにはすべがなくなる。


 俺とハルはスリング・ショットと、持てるだけの玉を腰ベルトの物入れに入れ、素早く幌に登った。近接戦闘の出来るハザン、トプル、ヤーモ、アンガーは馬を守って戦っている。馬車の側面を壁につけていたので、完全に囲まれていないのは好材料だろう。


「ハル、遠くのやつから狙うぞ!」


「うん! 頭だよね?」


 ロレンとガンザの矢の数を考えると、無駄打ちは出来ないだろう。手数ならスリング・ショットは弓矢に負けはしない。


 狼の狩りは波状攻撃はじょうこうげきだ。決して致命傷を狙わず、入れ替わり立ち替わり襲いかかり、少しずつ体力を奪う。


 俺とハルは首に掛けていたゴーグルを装着し、草むらや木の陰で様子を伺っているやつを、かたぱしから狙った。


 倒れる個体は少なかったが『キャウン』と鳴き、逃げて行くやつは結構いた。ハルも落ち着いて、丁寧に狙いをつけている。


 その間にも遠吠えの声が響く。まだ集まって来るのか? すでに三十頭前後は相手にしている。


 ハザンは数歩前に出ていて、狼を誘うように立ち、隙と見て跳び掛かってくるやつを危なげなく迎え撃つ。反射神経と、咄嗟とっさの反応速度が半端ないな。視界も広い。


 今は人の姿でいるはずなのに、獣の姿のハザンがやけに目に浮かぶ。牙をむき出しにして、四肢を広げ、獲物に跳びかかる寸前の姿勢だ。ゾクリと鳥肌が立つ。


 飢えた獣の、本物の殺気だ。


 トプル、アンガー、ヤーモはそれぞれ馬を守っていて、やはり跳び掛かってくるやつに対処する。同時攻撃を仕掛けてくるやつには、ロレンとガンザが弓矢を放つ。俺とハルは遠巻きにしている奴らを追い払う。


 そんな奇妙な均衡がやぶれた。


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