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お父さんがゆく異世界旅物語  作者: はなまる
第二章 キャラバンの旅とお食事係

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閑話 挙動不審 其ノ一

 ハルが『おとーさん、あれがラーザの街なの?』と、遠くかすかに見える街並みを指差して言った。


「ああ、そうだな」


「おかーさんに会えるかなぁ」


「会えるといいな!」


『あまり期待するなよ』と言おうとしたが『案外あっさり見つかるかも』とも思う。ナナミに会えたらまず何と言おうとか、会えなかったら、ハルを何と言ってなぐさめようかとか。


 つまりは俺に、色々余裕がないってことだ。




 ロレンに聞いたら、ラーザの街まであと三日くらいだと言う。あと三日も、こんなモヤモヤした気持ちでいなければならないのか。


 仕事があることは有り難かった。やらなければならないことに集中していれば、少しは気が紛れる。


 俺はアホみたいに筋トレをして、わき腹がもだえ苦しみ、クッソ手の込んだ料理を山ほど作って、ロレンに材料を使い過ぎだと怒られ、ハルに話しかけられても気づかないほど、のめり込んで絵を描いた。気づいたら鍋の底の絵を描いていた。


 馬車の中でにんじんのかざり切りを作っていたら、アンガーに『これ、いくつか持って帰ってもいいか?』と聞かれ、我に帰ったら馬車はとっくに止まっていたこともあった。


 挙動不審にもほどがある。


 次の日は色々反省して、一日中ハルと折り紙を折って過ごした。ロレンにメシを作れと怒られた。


 ますます挙動不審だった。


 そうしていよいよ、明日はラーザの街という夜。二日間の寝不足がたたって、晩メシを作り終えると、俺は倒れるように眠り込んだ。



 ▽△▽


 挿話  ハザンが見る『ヒロト』という男




「ごめん、手伝い、ハザン」


 ハルが、すまなそうに言う。


 ヒロトがぶっ倒れるように寝ちまったので、俺とハルで晩メシの後片付けをしていた。


「なあハル、お前の父ちゃん、どーしちまったんだ?」


 ハルとヒロトは嫁さんを探して、遠い異国から旅をして来たと言う。その割には旅慣れていないし、子供でも知っている常識にうといくせに、妙な事に詳しい。異国人というだけでは、説明がつかないことが数多くあった。


 俺は最初、苦労知らずのボンボンが、何かから逃げているのかと思った。ヒロトは明らかに何か隠かくしている。


 悪人にしては間が抜けているし、隙があり過ぎる。しかも弱い。あれで弱い振りをしているのなら、大した役者だと思う。


「おとーさんは、おかーさんがだいすき」


 考え込んでいたハルが言った。俺の質問に答えているのか?


「ラーザ、おかーさん、いない。どうしよう。それで、変なおとーさん」


 うーん、嫁さんに会えなかった時の事を考えて、あんな挙動不審になってるって事か? いい歳をしたおっさんが? 二人も子供作った嫁さんに対して?


 初恋にとち狂ったガキじゃあるまいし。


 俺がついプッと吹き出してしまうと、ハルが少しムッとして、


「おかーさんの事がだいすきなおとーさんが、ぼくはだいすき」


 と、やけにハッキリと発音した。


 すまんすまんと頭を撫なでると、ハルが『しんぱい』と、ポツリと言った。


 全く、子供にこんな心配かけてんじゃねぇよ! しょうがねぇ父ちゃんだな。


 明日嫁さんに会えなかったら、酒でもおごってやるか! ついでに隠しごとも全部聞き出してやる!


 俺はどうやら、自分で思っていたより、こいつら親子を気に入っているらしい。何か事情があるなら、助けてやりたいと思う程度には。


 俺はもう一度、ハル頭をフードの上から撫でた。そして、鍋の底をゴシゴシと擦りながら思った。


 それにしてもハルは可愛い、と。


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