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お父さんがゆく異世界旅物語  作者: はなまる
第二章 キャラバンの旅とお食事係

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閑話 ウサギ狩り

 夕方、狩りに出るというガンザに、俺はハルと一緒に着いて行くことにした。俺には圧倒的に実践経験が不足している。山猫に襲われた夜に、スリング・ショットの一発も打つことができなかったことは、やはり俺の胸に大きくシコリとなって残った。


 なるべく足音がしないように歩く。木の枝を踏まないように気をつけていると、足元ばかり見てしまい、獲物を探すどころではない。


 狩人かりゅうどへの道は遠く険しい。戦うお父さんへの道は、更に遠い。


 大岩の爺さんの言っていた『気配、消す』という奥義おうぎ ?を、俺なりに実践しながら歩いていると、ガンザが斜め上に向けてでキリキリと弓を引き絞る音が聞こえた。


 ヒュッと鋭い音がして『ククーッ!』と短く鳴き声が響く。茶色い羽根の鳥ががバサバサと羽ばたきながら落ちる。お見事です。


 目の周りが赤い三十センチくらいのキジっぽい鳥だ。茜岩谷サラサスーン足長鳥あしながよりも淡白だが、癖がない分食べやすい。


 うずらの足が長くなったような、ミニミニサイズのダチョウのような足長鳥は独特のえぐみがあり、ハルは少し苦手だったみたいだ。ハナは何でも、もりもり食べる。


「この前食べた、あのおいしい鳥だよね?」


 ハルが嬉しそうに言った。さっきまで生きていた動物を見て『うまそうだ』と思うとは、ハルくん、随分ずいぶんワイルドになっちゃったのね。


 俺は額のゴーグルを装着して、三十メートル程度先にピントを合わせる。注意深く探していくと、巣穴から顔を出している、耳の短いウサギを発見した。耳の間に小さな角のような突起が二つある。あれがハザンの好物のつのウサギか?


 ハルとガンザに指で獲物を示し、頷き合う。しばらく待っていると、あと二匹、いや二羽、全部で三羽巣穴から出てきた。全員が狙いをつけ、はやる気持ちを抑えて、合図を待つ。


 ガンザがチッと小さく舌を鳴らす合図に合わせ、同時に玉を撃ち出す。できる限り連射する。スリング・ショットは、弓より連続して射てる事が強みだ。


 ガンザが二羽、俺かハルの撃った玉が一羽を仕留めたので、晩メシのおかずには充分だ。


 狩りに出る前に『そんな玩具おもちゃみたいので、狩りが出来るのか?』と言っていたガンザは、帰り道では『それ、あとでちょっと打たせてくれ』とスリング・ショットに興味津(きょうみしんしん)の様子だった。


 ちなみに『ウサギを仕留めたのは自分だ』と、俺とハルが共に確信を持っていたのは当然だろう。


 ガンザは『どっちだっていいじゃねぇか』と笑ったが、イヤイヤ! そこんとこ重要だから!



 洞窟に戻ってウサギの解体をする時、ウサギ肉をフライパンでこんがりソテーしている時、ウサギジンジャーソテーを、美味しく頂いちゃってる時。俺は気になって仕方なかったことがある。


 俺とハルはフードで隠しているが、ウサギ耳を生やしている、という設定だ。遠い故郷の習慣で、耳や尻尾は隠して生活している。特に『俺とハルはウサギだ!』と説明した事はないが、それはキャラバンのみんなも同じだ。この世界の人は特に自分の種族について名言しないし、他人のそれを詮索しない。


 果たして俺とハルはこの肉、食べて良いのだろうか? 倫理的に。そこんとこ、どーなってるの? この世界的に!


 だれか教えてくれ!!


 ▽△▽


 今日のメニュー


 朝 塩にぎり、厚焼き玉子焼き、ピクルス(浅漬け)、胡麻と葉野菜のあっさりスープ


 昼 ヘビ肉入りチャーハン、かき玉汁


 夜 角ウサギのジンジャーソテー、豆入りの薄いパン(コラコラ)、ピクルス

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