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お父さんがゆく異世界旅物語  作者: はなまる
第一章 スローライフと似顔絵屋さん

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閑話 なんの言い訳にもならない

「ねえ、ばーちゃん。ここは異世界なのに魔法はないの? 」


 ある日、どうしても魔法が使いたいらしいハルが聞いた。台所でジャムがくつくつと煮える、穏やかなある日の午後のはなしだ。



「火とか氷とか出したり、空を飛んだりする魔法?」


「うん、魔法使いはいないの?」


「そうねぇ、サラサスーンにはいないみたいよ? でも鳥の人なら空を飛べるんじゃないかしら」


 ふうん、とハルが言う。鳥の人では不満らしい。人型の知的生命体が鳥に変身して空を飛ぶ。充分過ぎるほどの不思議現象だと思うが?


「スーパーサイヤ人とかカメハメ波とかは?」


 おお、具体的だな。


「サイヤ人はいないけど、スーパーな感じにはなれるわよ! カメハメ波は武術の達人だとできるみたい」


「ほんと? すごい! どーやるの?」


 マジで!? 著作権とか大丈夫?


「あのね、私は耳が良くなるの。耳のつけ根あたりにうーんってチカラを集めるの。そうするといつもより遠くの音が聞こえるのよ」


 能力強化か? それはすごいな。


「ハルくんたちがこの家に初めて来た夜ね、私が何となく聴力強化を使ったら、ハナちゃんの泣き声が聴こえたのよ」


 そのせつはお世話になりました。いや、今も世話になってるけど。


「ずっとはできないから、ブーストかける感じかしら。人それぞれでね、リュートは早く走れるようになるし、カドゥーンは高く跳べるようになるのよ」


 ハルが興奮して立ち上がる。


「それ、ぼくもできるようになりたい!」


 ハル、気持ちはわかるし、そりゃあお父さんだって、できるようになりたい。でも、それ耳とか羽根とか生えてからじゃないか?


「あ、そうかも知れないわね。耳生えてからだった気がするわ」


「ばあちゃん、耳、どうやったら生えてくるの? 結婚しないとダメ?」


「え、あの、どうだったかしら。結婚する前だったと思うけど。どうして耳生えてきたのかしら。私もわからないのよ。ごめんなさいね」


「ぼくがんばってみる! 耳なくてもできるかも知れないから! あと耳が生えてくるようにがんばる!」


 えっ! 積極的に生やす方向!? ハルくん待って! それ人生に関わることだから!


 さゆりさんとハルで、話が盛り上がる。チカラの集中のやり方とか、カメハメ波が出せる人の話とか、ハルの目は輝きっぱなしだ。ヤバイ。このままだと、修行がはじまってしまうかも知れない。


「ハル、まずは身体を鍛えることからはじめよう。地力がないとブーストもなにもないだろう?」


 さゆりさんに目で合図しながら言う。


「そ、そうよハルくん。まだ子供なんだから、無理しちゃだめよ」


「ぼくはもう八さいだから、子供じゃない。それに、子供だからなんて、なんの言いわけにもならない」

 

 ハル、八歳は充分子供だ。あと、そのカッコイイの、誰のセリフ!?


 案の定、ハルの修行ははじまってしまった。毎朝毎晩、集中力を高めるために正座している。座禅は組めなかったらしい。カメハメ波が出るようになるまで頑張るそうだ。お父さん、その前に第三の目が開きそうで心配だよ。サラサスーンに滝がなくて、ホント良かった。


 ハルのこの習慣は、大人たちが理由を忘れたその後も、ずっと続けられた。ハルの、この諦めの悪い感じは誰に似たのだろう。


 ――ああ。間違いなく、俺だな。


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