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お父さんがゆく異世界旅物語  作者: はなまる
第九章 忌み地

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閑話 この美しい世界を

 この世界に住む人たちに、身分制度がないのは何故なのか。弱肉強食の動物が進化したとしたら、種族の優劣があっても何ら不思議ではない。


 虎は強く、ウサギは弱い。


 だが、この世界の人たちは、ウサギの人も虎の人も、差別なく暮らしている。まるでメルヘンの、仲良しの森のようだ。


 権力に執着しない。街や村の責任者に利権がない。世襲もしない。大きな組織を作らない。街や村同士で争ったりしない。


 俺はこの事について考えると、自分の血がとんでもなく汚れている気分になる。上下があり、踏みにじる事のできる考え方を、力でねじ伏せる事を知っている自分は、この美しい世界に相応しくない。


 真実、自分は耳なしなのだと思う。踏みにじる事を知っている、悪魔だ。


 ロレンやリュートに聞く事も出来ない。知らないなら、そのままでいて欲しい。


 それは、ハルやハナに、無垢なままでいて欲しいと思う気持ちに似ている。だが、ハルやハナには、知ってなお、選ばない強さを持って欲しいとも思う。持ってくれると信じている。


 だがそれは、俺が、親としての責任において思考を誘導しようとしている事の表れかも知れない。人間は、善良な生き物では決してない。


 さゆりさんは、大岩の家に閉じこもる事を選んだ。小さな閉じられた世界で、完結させようとしている。自分の影響を最小限にとどめて、この世界を守り、老いていく事を良しとしている。


 なんて強い人だろう。


 俺は、ロレンに大儲けさせてやりたいと思う。ハザンやアンガーに、強い武器を渡してあげたいと思う。リュートや爺さんに面白い道具を、教えてやりたいと思う。


 思ってしまう。


 俺は早く地球に戻りたいと思った。ナナミを探して、家族揃って、クルミも連れて地球に戻りたい。



 俺がこの美しい世界を、汚してしまう前に。



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