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お父さんがゆく異世界旅物語  作者: はなまる
第六章 砂漠の旅とパラシュ

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第十四話 宝石の街ポーラポーラ

 砂嵐をなんとか、まあ、そこそこ無事に乗り切ってから二日。俺たちはほぼ予定通りに砂漠を越え、宝石の産地『ポーラポーラ』へと到着した。


 この街の警備は、他の街とは比べものにならないくらい厳重だった。街へと続く道は、そびえ立つ岩山に挟まれた一本道のみ。この道の入り口と、街の手前二ヶ所に門があり、衛兵がいるのだ。


 この世界における宝石の定義は、地球とあまり変わらない。つまり、少ししか産出されないのに、綺麗だからみんなが欲しがって、値段が高くなった石だ。俺は地球の宝石の事さえ良く知らないので、この世界の宝石の事など、全然わからない。とてもきれいだという事以外は。


 金になる物には、人が群がる。中には人の道から外れても、手に入れたい(やから)もいる。そんな事情がこの街に門を作り、衛兵を立たせるのだろう。





 ポーラポーラは、宝石を買いに来た人と、それに(たずさ)わる人しかいない、ある意味完成された、そして(いびつ)な街だった。


 ほとんどの人は、砂漠とは反対の海側からやってくる。街道の途切れた砂漠を、わざわざ越えて来る商人は少ない。つまり、サラサスーンに宝石が入ってくるルートは、海側から大きく回り込んでいるのだ。ポーラポーラの宝石は、そのルートを辿(たど)るうちに、いくつもの人の手を経由して、その度に値が上がって行く。


 ロレンはこのルートを、強引にショートカットしようとしている。成功すれば、さぞかし(もう)かるのだろう。


 なんとなく、ロレンと大儲けがイコールで繋がらない。少なくとも俺が見てきたロレンとは。


 今回の取引(とりひき)は、安く仕入れて高く売る、という商売の鉄則を守りながらも、誰かが困る訳ではない。自分のお人好しを恥じているロレンが、負ける人が誰もいない商売を模索(もさく)しているのだろう。


 ロレン、おまえのお人好しは、いい仕事をしているじゃねぇか。チョマ族の族長の尾羽は開いていたし、ドルンゾ山の(ふもと)の村はラーザの干物を楽しみにしている。


 砂漠の小さな集落の女の子が、サラサスーンのトマトを(かじ)った時の顔、見ただろう? あの顔は、おまえのものなんだよ。


 ロレンがあの顔を見たいと言うから、おまえのキャラバンの面子(メンツ)は砂漠を越えちまう。あいつらも大概(たいがい)なお人好しだ。


 おまえは、大儲けしたとしても大金持ちには、たぶんなれないな。みんなわかってるさ。だから思うようにやれよ。





 とまぁ、いつかロレンにそんな事を言ってやりたいとは思う。俺の異世界語レベルがあと三十も上がったら、伝わるように言えるだろうか。


 素面(しらふ)で言える気もしないけどな。あ、俺酒に酔わない体質だった! まぁいいか。




 ロレンが宝石の買い付けという鉄火場(てっかば)(いど)む頃、俺とハルはポーラポーラの街を出て、海辺の街『ミトト』を目指す。


 ミトトは港のある大きな街だ。この世界にも、荷物や人を運ぶ大きな船があるそうだ。往復で二、三日。少しみんなを待たせてしまう事になる。


 せめて何かナナミに関する情報が欲しい。


 ああ、また俺は期待値の上限を下げているな。ナナミに逢えなかった場合を想定して、自分を守ろうとしている。


 気がつくと俺は、小さな声でビートルズのlet it beを口ずさんでいた。


 この曲は歌い始めると、いつまでも終わらない。エンドレスで繰り返してしまう。そのうちにハルも覚えて一緒に歌い出した。


 俺たちは砂漠の名残りの風に(あお)られながら、あくびの背中でいつまでも同じフレーズを、繰り返し口ずさんだ。



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