四日目・・・狂気の世界
凜を迎え入れてから一日が経った
朝、リビングにはノックの音が響き渡る
日が差してきた
隣には凜がいた
ぐっすり寝ているようだ
「お父さん?お母さん?」
一緒に寝たはずなのに見当たらない
リビングだろうか
「起きたか」
父はとても疲れた顔をしていた
「どうしたの?お父さん、すごい疲れた顔してる」
「こんな世の中だ、全員で寝てしまうのが心配でな」
父は寝ずに見張りをしていたのだろうか
キッチンには母の姿があった
世界がこうなる前の風景によく似ている
「あら...やっぱり水はでないみたい」
「昨日言っただろ...凜はまだ寝てるのか?」
私は不思議と笑顔がこぼれる
こうなる前に戻ったみたいだ
「凜は寝てるよ、昨日寝れずに夜遅くまで起きてたのかも」
「そうか、ならよかった」
そんな会話をしていると玄関から激しいノックの音が聞こえる
ガン...ガガン...ガンガン
「未来、紗織、寝室に隠れてろ」
静かにそういうと父はそっと刃物に手を伸ばし玄関に向かった
私と母はできるだけ足音をたてないように寝室へ向かう
「何が起きてるの?未来」
凜は何が起きているのか分からず怯えているようだ
「大丈夫よ、凜ちゃん」
笑顔で母は答えようとしたがうまく笑えずひきつった笑顔をみせる
こんな時に誰が家に来たのだろう
強盗かそれとも助けを求める人か
「泊めてほしいって...そんなこと言われても困る。帰ってくれ」
「お願いします!一日でいいんです!」
父の声と...誰だろうか
「条件を飲み込むならいいだろう」
「泊めてもらえるなら何でも」
男の声だ
「そこのソファーで寝るんだ」
「そのくらいなんともありません」
「あと、私の家族に手出しするな」
「もちろん、安心してください」
母と凜も今の会話は聞こえていたようで
「大丈夫なのかしら...」
母がつぶやく
私も心配だ、凜もそうだろう
「みんな、出てこい」
父が寝室の扉を開けて私たちを呼ぶ
出て行って大丈夫なのか
そう思いながらも私たち三人もリビングへと向かう
「一日だけお世話になります吉川創と申します」
そう挨拶してきたのは十八・九の青年だった
彼の服はもうボロボロで汚れた大き目のバックを背負っていた
「とりあえずそこに座ってくれ」
そう父に言われた青年はバッグを下ろし椅子に座った
「外で何が起きているか教えてくれ」
聞かれた青年は少しずつ語り始めた
「外はまさに『地獄』です。僕は都市の中心を通ってここまで来たのですが、その道のりは血に染まっていましたね。殺人現場はもう見飽きるほど見ました。『世界が終わる』と正式に発表されてからこの世から『秩序』というものがなくなり人は当たり前のように人を殺すようになりました。今まで恨んでいたものの命を奪いまたその命を奪ったものを恨み殺すという恨みの連鎖にはまってしまっています。公園には死体の山が築かれています」
私たちはその話を静かに聞いていた
母は手で口を覆い、真っ青になっている
凜は冷たい手で私の手を握り放さない
私も怖いっていうのに...
「それで...どうやってここに来た」
「徒歩です。車には乗れません...」
その後父と青年の一問一答が繰り返された
その最中突然家のどこかで窓の割れる音がした
「嫌ぁ!」
凜が悲鳴をあげる
ここに来る前のこともあったからかかなり怯えてる
「子供たちと安全なところに隠れてろ」
父が母に言う
母は私と怯える凜の手を取り寝室に戻ろうとした
「見つけたぞ...」
声の方を振り向くとそこには恐ろしい顔の男がそこに立っていた
青年は腰からナイフを取り出し
男を刺した
あまりに速い動きに男はなすすべなく倒れた
人が死ぬ瞬間を見たのはこれが初めてだ
男の体から血が滴る
私たちはそれを見て呆然としていた
「危なかったですね、大丈夫でしたか?」
青年は血だらけのナイフを手にこちらを振り向いて訊く
人を殺したことには全く動じていない
「紗織、何してる!早く子供たちを連れてくんだ」
そう言われ母は私たちを寝室へ連れていく
「私たちは大丈夫よ、大丈夫」
私たちを安心させようと何度も何度も震えた声で言う
あの青年を除いてこの家にいる全員はこれまでにない恐怖を覚えただろう
父と青年の話し声がかすかに聞こえるが聞く余裕なんて今は無い
今は体の恐怖を和らげる
いつのまにか時間がたっていたようだ
辺りが暗くなっていた
「今日はもう寝なさい、私はしばらくしてから寝るよ」
あの男は誰だったのだろう
あの青年は何者なのだろう
これから私たちはどうなるのだろう
たくさん疑問はあるが何故か聞く気になれなかった
知らない方がいい気がする
凜はあれ以降一言も話していない
精神的に限界が近づいているようだ
どうすれば前の凜に戻ってくれるのだろう
私なりになんとかしなければ
「他人を愛することは人間にとって重要なことなのよ」
昔母に言い聞かされた言葉だ
凜...
横になったまま寝れずにそんなことを考えていた
いろいろと構成を考えているうちに時間か経ってしまいました
少し無理やりというか雑というか...
そんなところもあったと思いますが最後まで読んでくれてありがとうございました




