三日目・・・世界の異変
世界は残り四日
異変がもう目に見えるほどに...
いつもより早く目が覚めた
母はもう起きていた
「おはよう、お母さん...」
「おはよう、あら、昨日と違って早いわね...」
昨日のこともあって母の元気がない
私はニュースを見ようとテレビの電源をつけた
「本日、政府及び専門家が『世界が終わる』と公式に宣言しました」
え...?
「世界的にも証明されており混乱が続いてます」
どういうこと...?
「なお、本日より情報機関・公共機関及び政府機関は完全に停止します」
「皆さんは残りの四日間自分のためにお過ごしください」
何を言ってるの...?
それ以降テレビは同じ画面が繰り返し流れ続ける
「おはよう、早いじゃないか、未来、何が起こってるんだ?」
「そんな...本当に終わるの...?」
母はそのまま床に崩れ落ちる
父はテレビの画面を見つめながら小さな声でつぶやいた
「本当に...終わるのか...」
外から叫び声と悲鳴が聞こえた
「未来!紗織!今日はここに居ろ!外には絶対出るんじゃないぞ!」
父の顔は恐怖の色で染まっていた
「嫌ぁぁぁっ!」
母が悲鳴をあげる
怖い...怖い怖い怖い...
手足の、体の震えが激しくなる
「未来、母さんと一緒に居てやるんだ。私は外を見てくる」
父はそう言って玄関へ向かう
「嫌!待って!お父さん!」
こんな時に外に出たら死んでしまうかもしれない
「あなた...行かないで...」
母は泣きながら小さな声でそう言った
「家の前だけだ、少し見たらすぐ戻ってくる」
そう残して行ってしまった
私と母はリビングの真ん中で固まっていた
まだ外から悲鳴が聞こえる
何が起きているのだろうか
外を見なければ分からない
リビングの窓から外を覗いてみた
よく見えないが恐らく男性だろう
何かから逃げてるのか、それとも追ってるのか
道を走っていた
「絶望的だ...」
玄関の方向から父の声が聞こえた
「あなた...外では何が起こってるの...?」
震えた声で母は訊く
「未来、紗織、二人ともよく聞いてくれ」
父が顔を青く染めながら語る
「外は酷いありさまだ、家の前は血で染まっている。死体もいくつか転がっていた。今まで理性を保っていた人間、世界の終末を信じようとしなかった人間が恐らく殺人や強盗、強姦、様々な蛮行を始めているのだろう...外は文字通り『地獄』だった...」
外でそんなことが起きているなんて
学校の友達は大丈夫だろうか
「凜...?」
凜は大丈夫だろうか、両親は海外旅行中で彼女は家で一人だ
こうなった世界では飛行機も飛ぶはずがない
「凜に会いに行かなきゃ!」
そう言って立ち上がり玄関へ向かおうとした
「待て!行くな!」
父に腕をつかまれ止められる
「何で?何でダメなの?凜は家で一人なんだよ?怖い思いをしてるんだよ?」
「確かに凜は心配だ、だが、自分の命を第一にするべきだ。自分の命がなかったら他人の命は助けられない」
正論だ、だが...
「そんなの知らない!自分の命なんて!」
「馬鹿か!」
父は私の胸倉をつかむ
「やめてっ!」
母の声で部屋は静まる
「凜ちゃんに...会わせてあげて...」
震える声でそう言った
「何故だ!娘の命を何だと思ってる!死ぬかもしれないんだぞ!」
「分かってるわよ!でも...でももう世界は残り四日、好きにしてあげたら?」
「...」
母の言葉で父は沈黙した
「私も...一緒に行こう...やはり一人にはできない。最後の四日間私は家族と過ごしたい。誰一人殺させない、傷つけさせない」
父は静かに言う
「紗織...一緒に来てくれるか?それとも、ここに残るか?私は一緒に来てほしい。だが、自分の気持ちを優先するんだ。無理やり連れてくつもりは無い」
母はうつむく
「私...」
聞き取れるかどうかの声で言う
「行く...」
「決まりだな」
父は母に手を差し出しその手を取って立ち上がる
「早く行こ!」
家族三人で出かけるのは久しぶりだ
しかし、こんな形でなんて...望んでいなかった
こんな状況だ、車なんて乗れない。歩いて行った方が安全だ
道には死体が転がっていた
悲鳴と叫び声、怒号、父の言う通り『地獄』だ
分かれ道で凜の家の方向へ向かう
家の前まで来た
入ってみるとかなり荒らされていた
「金なんか今となっては無意味なのに、なぜ荒らされてるんだ?」
不思議そうに父は言う
「通帳はそこに落ちてるわよ...お金目当てではなさそうね...凜ちゃんは大丈夫なの?」
現金などは部屋にばらまかれたままだった
いったい何のために?
とりあえず凜を探そう
「凜!どこにいるの?」
家族三人で読んでも見当たらない
家の中をくまなく探してみる
よくない予想が頭をよぎる
「凜ちゃん!大丈夫?ケガは?」
母の声が浴室から聞こえた
私と父はドタドタと足音をならしながら浴室へ向かう
「凜!大丈夫?何があったの?こんなになって...」
「安心しろ、もう大丈夫だ」
凜は浴槽の中で震えていた
私たちを見て混乱しているようだ
「ふ...み...な...」
何か言葉を発しているようだが何を言っているか分からない
「落ち着いて、凜ちゃん。とりあえずリビングに行きましょ」
母に手伝ってもらいながら凜は立ち上がり震える足でリビングへ向かう
「凜...心配だった...よかったぁ」
心がとても軽くなった
「うん...」
元気のない返事だった
いつもの凜ではこんなことは無い
「凜、学校の調子じゃないな。こんな世の中になって家で一人だなんて」
「凜ちゃん...」
心配そうに父と母は言う
「先生、おばさん、未来...私...もう無理かも...」
凜は静かにそう言った
「最後の日まで生きていける気がしない...」
それに対して誰も答えどころか慰めの言葉も出なかった
私も含めて心の奥底ではそう思っていたのだ
「いっしょに...帰ろ?」
私はそう言った
ここに居るより安全だろう。
「そうね...一緒にいきましょ」
「残りの四日、一日でも多く生きなければな」
父と母も同調する
凜はしばらくの間固まっていた
そして、小さくうなずいた
帰り道、また、あの道を歩く
来た時よりも増えたな...
家について電気をつけようとした
「あれ?つかない」
何度も繰り返しスイッチを押す
「電気も水道ももう通ってないだろ...紗織、何かあるか?」
「あるわよ、こうなる前に準備しておいた」
そういえばそうだった。母は最初の報道があったときすでにこの日に備えるための食糧と水を買ってきていた。母の心配性に感謝するばかりだ
その日はご飯を食べて寝ることにした
ご飯の時、父と母が勧めるも凜はあまりご飯に手を付けなかった
その日の夜私たちは四人で一つの部屋で寝た
「父さんと母さんどうしてるだろうな...」
凜が横になりながらつぶやく
「最後にもう一度会いたかった」
とても悲しいその訴えに私は何も言えなかった
ただ、凜の手を強く握りしめることしかできなかった
なかなかの急展開
これから先どうなっていくのだろうか
書いているときは先のことを考えるのに苦労しました
大丈夫かな...?
楽しんで読んでくれたなら幸いです




