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縫-STITCHED  作者: 保科豊
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3



参田が非常階段から館に逃げ込んだとき、美容師デストは、奇妙なスーツの男に肉弾戦へと持ち込まれ、白い手袋をつけた相手の右腕を完璧に避け切らないといけない。

下手に攻撃を仕掛ければ、チンピラどものように触れられ、殺されるかもしれない。

当然その事がハンデとなり、状況は美容師デストに不利な状況に傾いていた。


「あんた、私はその右手に触れたら何されるんだい。」


美容師デストは少し余裕のない息遣いで声を出す。

スーツの男は表情を変えず、何も喋らないまま美容師デストに打撃を食らわせ続ける。


「無口な男は、面白くないわね」


美容師デストも目が慣れ始める。

スーツの男が、右拳を空振りすると左脚の中段より下の攻撃が来る可能性が高いなど、短い闘いの中で相手の動きを冷静に判断する。


突然、先程までチンピラにやられていた臆病者チャン美容師デストの足に背後からしがみつく。

救世主を救うんだという気持ちには先程までチンピラにやられていた、気の弱い彼はもういなかった。


ーーーー!?。


突然、片足を固定された美容師デストは体制を少し崩す。

それを見逃さないスーツの男、右拳で胸の筋繊維と肋骨あばらを粉砕し美容師デストを河の方へ殴り飛ばす。

河の浅瀬に身を投げられ、美容師デストは体を起き上がらせる。

しかし、美容師デストは起き上がるときに自身の体の異変に気づく。

違和感のある方を見たとき、自身の両手がないのだ。


(まずいわね、体に水も濡れちゃったし。両手が無いまま私、生き残れるかしら)


この闘いで、美容師デストは初めて心中で弱音を吐く。

そんなことは、スーツ男にとっては関係ない。一瞬の隙も作らせまいと、

スーツの男は吹き飛ばした後に、距離を縮めはじめ、下を向いた美容師デストに右腕で強打でとどめを刺しにくる。




「Just now!!!!!」

「OK」 BAAAAAAAAAAAAN!





美容師デストの後ろから、物凄い速さで光る銃弾が飛んでくる。

銃弾が美容師デストの耳元を通り過ぎると、大きな爆音は後から襲いかかり、その銃弾が音速を超える速さで飛んできたことを物語ものがたる。

銃弾がスーツの男と美容師デストの間に割り込むと、突然、強い光を放ち1人の白い軍服を着た少年が2人の目の前に現れ、スーツ男の右手を勢いよく高く蹴り上げる。


美容師デストは、その光に見覚えがあった。


「ヴィオン様」


R(ローズブレイド )家主人あるじ【ヴィオン・Rローズブレイド】。

銃を身にまとい、自らが銃弾になり、音速を超え夜空を流れる流星のようにこの場所に飛んで来た。



家族デスト、あんたやられ過ぎじゃない。」


スーツの男は蹴り上げられた右腕を引き、当主ヴィオンと距離をとる。


主人ヴィオン様、気をつけてください。奴の白いグローブは危険です。」


主人ヴィオンは下から舐めるようにスーツの男を見る。

男の素肌から漏れ出る邪悪な気配を感じるが、主人ヴィオンは何も恐る気配も見せずにスーツの男に肉弾戦を仕掛ける。

2人の闘いは攻撃、受け身、避けを繰り返し、荒れ狂う大シケの波の様に、またコンクリートを打ち続ける五月雨の様に闘いが繰り広げられる。

スーツの男が力量を測り終わったのか、突如防御に身を徹し、隙ができたときに主人ヴィオンと距離をとる。

そして、男は重い口を開けて告げる。


「ふん、私は人見知りでね。君達の仲間もここに向かっているかもしれないから、武が悪いから失礼するよ。」


スーツの男は主人ヴィオンが飛んで来た方向にまだ仲間がいると考え、この場から立ち去ろうとする

スーツの男と手下チャンは、河原の堤防を登り、都市の方に消えていった。

その姿を見て、主人ヴィオンは彼等を追うことはなかった。

そして、当主ヴィオン家族デストのところに向かい、落ちている家族デストの両手を拾う。


「追わなくて、よかったんですか」


美容師デストから、自分が失態をしてしまったことに負い目を感じ、力のない言葉が出てしまう。


「手負いの家族を治療なおすのも、負い目を気にしている家族を心配させないのも、主人わたしの務め。」


主人ヴィオンは、美容師デスト両手首から出る血を自分の軍服の袖を破り止血の応急処置を済ませる。



その後、主人ヴィオンとバディを組んでいた乗送迎人ボリスを始め、参田以外の家族ファミリーが集まる。

皆、両手のない美容師デストの姿を見て、今回の依頼の仕事の危険さ、突如現れた敵の残酷さを予知せざる終えなかった。

主人ヴィオンが事の詳細は館に戻ったら談話室で報告し合うことにする。

そして、主人ヴィオンが解散を告げる。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





R(ローズブレイド )館

参田が館に逃げ込み 数時間後、館に皆が帰って来る。

二階から皆を見下ろすと、少し暗い顔浮かべているだけで参田には、美容師デストに何かあったと察する。

そして、美容師デストが外の黒いセダンの中から出て来るのを見ると、参田は少し安堵な気持ちになり窓の側で足を崩しその場で座り込む。


その後、参田の部屋に柔らかいノックの音が聞こえる。

「仕事の報告会するから、30分後に談話室に来なさい。」

機械ペネロペが連絡を入れると参田の細く弱い返事を聴くと、部屋を後にする。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺は20分後くらいに向かう。

主人ヴィオン以外の家族ファミリーが談話室に先に集まっていた。

仕事前の談話室の時と座り位置が変わっていることから、決められた位置はないらしい。

美容師デストも扉に近い赤いソファーに座って、こちらに手を振り微笑みかける。

俺はそのときに美容師デストの両手が布が包まれていることに気がつき、美容師デストに話し掛ける。


美容師デストさん、大丈夫ですか。」

「いやいや、平気平気。このくらいのことじゃ私たちは死なないから」

美容師デストは俺を励ますつもりなのか、少し優しいトーンで答えてくれる。

美容師デストをこんな形にするなんて相当のやり手だったんだな」


乗送迎人ボリスが参田と美容師デストの会話を終わらせようと口をはさむ。

庭師ライナーが心配をする俺に、俺等【魂を縫われた者ーSTITCHED】の性質をいい俺の不要な心配を取り払おうとした。



「いいか、参田サンタ君。私等わしら、魂を縫われた者達のことを裏の社会では【STITCHEDスティッチド】と呼ばれる。【STITCHED】には、改造された肉体に魂を縫い付けることで普通の人間以上の力を手に入れたんだ。」


ライナーの説明は丁寧で孫に大切な話をするお爺ちゃんのように落ち着いた雰囲気で話してくれた。


「ライナー様の言う通り、人形達わたしたちは改造された体により、

・何倍もの動体視力、

・体の部位が破壊されても魂を縫い付けられるほどのからだに容量があれば死なない体があるわ。」

「つまり、体が粉々になりすぎなければ無事ってことね。両手は主人ヴィオン様が【肉体を縫う者】を探すから平気よ。」

使用人セラ庭師ライナーの後に説明をしてそれを機械ペネロペが要約してくれた。


その後廊下に続く扉がガチャンと開く。主人ヴィオンが談話室にやって来ると開口一番に仕事の報告会の宣言をする。


「各自、今回の任務でそれぞれのポイントで起きたことを報告。順番は計算機ジャッキー使用人セラ乗送迎人ボリス美容師デストの順番で報告。計算機ジャッキーが話す準備ができたら、報告を開始。」


計算機ジャッキーは、自分のパソコンを取り出し、直ぐに計算機ジャッキー機械ペネロペのポイントで起きたことを淡々と報告し始める。


「僕達が担当した地区は、人通りの少ないサイフォジオの公園を中心に見張りを続けました。通行人は男性1132人女性730人、うち子供83名。監視を続けましたが特に怪しい人物は居らず、交通事故も事件も何も起こらなかった。22時03分に美容師デストからの緊急信号を察知。直ちに現場へ急行。」


「次。」


計算機ジャッキーはパソコンにメモをしていた事柄を皆に見せ、報告をスマートに終わらせる。主人ヴィオンの合図で次の報告、使用人セラが立ったまま報告をする。


「私達の担当地区では、交通事故の起きやすそうな交差点を中心に見張りを続けました。怪しい人物はいませんでしたが、交通事故が4件。1つは車線変更での車通しの事故。残りの3つは、接触事故でガードレールなどでこすり傷を作る車が3台です。いずれの事故で死者は出ていません。4つ目の事故の記録あと、美容師デスト様の緊急信号が鳴り、直ちに向かいました。」


「次。」


合図で、乗送迎人ボリスがソファーに足を専用の台に乗せながら報告をする。


「俺は主人ヴィオン様と俺のセダンでビルの立ち並ぶオフィス街のポイントに到着。車の中で通行人、通行車を見張るが怪しい事故や事件は起きなかった。そのあと、美容師デストの緊急信号で近くまで、移動するが、軽度の渋滞で直ぐに駆けつけられないと判断。主人ヴィオン様専用のライフルで、特殊な服の詰まった弾と主人ヴィオン様が一体化し、信号ポイントから700mの向かい、河岸近くのビルから主人ヴィオン様を発砲、主人様の無事を確認し車でポイントに急行。」


「次。美容師デスト、話す内容はまとまったかしら。」


美容師デストは直ぐに返事を返すと今回起きたことを詳細に話す。

今回の件の中心スーツの男のこと、気弱な男、殺されたチンピラの死に方、謎の白いグローブ、彼の戦闘スタイルや推察される性格まで。


参田サンタ、あなたからは何かないかい。」


俺に話が振られると、スーツの男の言っていたことを思い出す。


「暴行罪………侮辱罪……などと男が言っていました。」


俺は口に出した言葉から、チンピラの死に方と奴の言葉の関連性を見つける。


「そういえば、奴が白い手袋で触れる前は、気弱な男が蹴ったり殴られたりしていました。そして、蹴った奴だけ、足が溶け始めていた。」


俺が言い終わる前に、計算機ジャッキーが相手の能力の特徴に気がつく。


「ハンムラビ法典だな」

「なに、そのハンムラビ法典って」

機械ペネロペ計算機ジャッキーに聞いたことの無いような名詞に疑問を投げかける。それに続けて、料理人タロウが口を開ける。

機械ペネロペ、目には目を歯には歯をって言葉を知っているか。」

「あ、なんか聞いたことがある」

「昔、ハムラビ王が出した法典で、他人に障害や傷害を与えたらその加害者も被害者と同じ目にあわせるって法律です。」


「違うのは、奴の能力は加害者に被害者以上の罰を与える能力ってわけね。ほぼ瀕死状態にさせるほど罰だなんて。」






そして、30分ほどの報告会は終わり、もっと詳しいことがわかるまで、それぞれこの事件に関わらないことを主人ヴィオンは約束させ、長い夜が終わる。

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