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縫-STITCHED  作者: 保科豊
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「人は外見でしか物を見ない。外見を通さなければ中身なんて見えないのだから。」


「あなただってそうでしょ。自分の外見しか見れない。自分の中身を見るには他者の目が必要なのに…人でないなら…尚」




朝、高校に通学する参田 INサイフォジオ


参田おれはイヤホンで音楽を聴きながらSNSで友人のつまらないつぶやきを上から流して読んでいた。最近の話題は今時にふさわしい5月に上がりそうな話題ばかり。入学から1ヶ月、部活、新しくできた友達との出来事、などなど。参田おれの視界からはどれも同じに見え、携帯を眺めながら目的地の駅に向かう。



ブッチっと、イヤホンの音楽が急に止まる。耳の穴を抑えられた感覚の後に人気女性キャスターの声が耳元に聞こえてくる。

「………近、サイフォジオ都市内でまた自殺者が増えてまいりました。今や」


参田おれの携帯に目を向けると、イヤホンの音楽が止まった原因が分かった。

SNSで知り合いの誰かが、このニュースを広め参田おれのSNSのアプリが動画を強制的に再生をしてしまったようだ。今、この都市の社会問題で自殺者が後を絶たないらしい。この頃になると自殺者の動機は全て、五月病や社会に馴染めないなどの言葉で片ずけられてしまう。参田おれにはもっと他の理由があるのではないのかと内心疑っている。


やれやれ、朝から何考えてんだオレは


参田おれが終点駅まで着くと、至る所の電車の案内掲示板には他の電車の遅延を知らせている。どうやらの乗った電車以外皆、遅延をしているらしい。乗り換えをしない俺には関係ないな。さっさと学校に行っちまおう。

「おーい参田ぁ」

俺の友人Aのトウヤ・ヴェートーベン。ウザい時には「便」と呼ぶ。

「トウヤ、一緒に学校行くか」

俺は朝にトウヤに会うのはラッキーだと思っている。トウヤは駅から学校までは自転車なので後ろに乗せてもらう。

「オッケー任せとけ」


自転車に二人乗りをしながら、歩くと15分はかかるだろう道をかけて行く。後ろの席はトウヤが風避けになってくれるのでなかなか、楽をしながら学校に行ける。流れる景色はパステル色をしていた町や花も春から緑の多い季節へと移る準備をしている。


学校に着き、教室に入るといつもと違う空気を感じる。教室の人数が少なすぎるのだ。

どうやら朝のラッシュと人身事故が遅延をしていて、順調に学校に来られる奴が少ないのだろう。気の毒に。


席に座りカバンの中のものをとりあえず全て机の中や横にしまう。今日は体育があるので、運動着も持ち合わせている俺の今回の楽しみは体育なのだ。

が、朝のホームルームが15分ほど早く始まると残念なお話が始まる。

今日は、多くの生徒や教師が渋滞、遅延、運転の見合わせで来れていないそうなのだ。なので学校側は今日だけ2限まで休講とし、3限から授業を始めることになったのだ。もちろん体育は休講。


適当に3限まで、トウヤの所属するサッカー部で時間を潰し、再び教室に向かう。

3限近くまでなると学校にくる生徒が増え教室の席も数席しか空きが無くなった。

「ふぇー学校普通にあるのかよ」

「体育って夏休みに補修かな」

なんて、声が聞こえてくる。ゆっくり学校に来れたのに、お前ら羨ましい限りだぜ。ファーああ。気が緩んで欠伸なんかしちまったぜ。

「ファー、参田サンタの欠伸移った」

「ん、レイナか」

参田おれに、話しかける瑠璃色の目をした少女。髪はデコを出し、銀の鋏の髪飾り、長く腰あたりまで艶のある暗い茶色い髪。身長150cmは無いであろう、ウエストが細く、見るからにも女子には羨ましがられるだろう体系をしている。胸はない。胸はない。目をこすって欠伸で出た涙を拭くが胸はない。

「レイナ、欠伸なんかすんな。俺に移るだろう」

「あんた、バカねぇ感染源のあんたに私の欠伸が移るわけないじゃない。」

言い忘れていたが、このレイナ・ディーチは今朝SNSで他人が載せたニュース動画を俺に広めた本人である。こいつがなぜ今朝のニュースを広めたのか気になり聞いてみることにする。

「なぁ、レイナお前今朝の動画、ありゃなんだ」

「あぁ、あれね。ネットで噂になってんだけど最近のニュースは嘘ばかりなんですって……」

参田おれの眉間にシワがより始める。レイナの眉は上につりあがり始める。レイナはネットでどうやら1番信用ができないニュースがこの自殺のニュースらしい。

「でね、中には自殺したって言われてた人が家に帰ってきたって報告もあってマスコミと政府の統計が違うって噂もあるくらいよ」

「噂だろう」

しかし、参田おれにはどこか引っかかっていたところがあり、自然とレイナの話に耳を向ける。レイナとこんなに話をするなんて初めてだ。こいつこういうオカルトやミステリーとか好きなのかな。


レイナの髪飾りがキラリと光るその一瞬は、彼女の笑顔の眩しさには到底かなわないものを感じた。


6限が終わり家に帰る。俺は委員会も部活も入っていないので、すんなり帰ることにした。行きとは違い自転車ではないので徒歩で歩く、この道のりは長く感じる。影は延び薄くなり、足を動かすたびに街の風景は駅に近づき建物も大きい物が目立ち始める。街灯は灯り始め、西日は雲に隠れ、すれ違う人の数は増える。レイナの言っていたことを頭でぼんやりと考えながら、足元少し先を見る。



ーーーーーーコロンコロン。


参田おれが駅近くの大通りを通ると脇の細い路地から、小さな石が音を立てながら転がってくることを感じる。おかしい、なんであんな20メートルもの先の小石から音が聞こえてくるんだ。その路地の上をゆっくり見上げる。


参田おれは、急いでその小石の元へ向かった。正確には、小石の落ちたマンションの上に向かった。

なんで、俺はこういうの見捨てられないのかな。自殺の話を聞いた後だと余計に体が動くもんなのか。


参田おれが見たものそれは、小石の落ちたすぐそば、マンションの8階くらいのところで身を乗り出して今にも飛び降りそうな若い男性をみつけた。男性は不思議と死のうとしているのに体に震えは、なかった。


階段を二段飛ばしで駆け上がる。間に合ってくれ。俺のそばで誰か死ぬところは見たくない。俺が迷惑なんだよ。迷惑じゃないところでやってくれ。


参田おれは8階の男性がいたであろうところにたどり着き、目を向けた。

そこには、靴と大きな石、石の下には遺書らしきものしか残っていなかった。

参田おれはそれを確認すると力がスーッと地面に逃げるようにその場に崩れ落ちる。


まじかよ、必死で奴の死んだ音さえ聞こえなかった。本当はマスコミの言っていることが本当のことに近いのかよ。こんな身近で誰かが死なれちゃあぁよ………。


参田おれはそんなに自分が他人の自殺や死に興味ないと感じていたのに、必死になった自分に違和感を感じ涙を堪える。30秒ほどで息を整えると下の階に向かった。


参田おれ)は下の階に戻り、1つの黒いスーツのようなものを着て黒いローブのようなものを被っている大柄な人影をみる。参田おれの感では、死体があるのにピクリともしないこいつからヤバイ危機感を感じていた。

「おい、お前そこで何をしている」

声をかけ、影がこちらを向くと当時に俺は奴の足元を見た。それは先ほどの男の死体だった。高いところから落ちた男の体は血まみれで、内臓らしき臓器も飛び出していてまだ血が体から流れ出している。この男は何をしたんだ。


参田おれは体から酸が喉元まで上がるのを必死にこらえながらゆっくり影に近づく。

影は足元にあったスーツケースを持つと大きい路地の方へ逃げていき、後ろを追いかける。


「待て、どこに行く。」

路地を影の逃げた左に曲がると今朝1番話をした少女がそこに突っ立っていた。

「ん、どうしたのサンタ。」

大通りを見渡してもさっきの奴がいない。

参田おれは冷静にレイナに状況が伝えられなかった。

「お前、さっき大柄で全身黒いやつを見なかったか。」

「いや、そんなやつは私は見てないわよ」

「うそだ、あいつは………」

参田おれがレイナの顔を見るとレイナの左目に涙が溜まっている。参田おれは少し熱くなりすぎてたみたいだ。

「なによ、サンタ急に静かになって」

「怖がらせて悪かったな」

「はぁ、あんたにいつ怖がったっていうのよ」

「ゴメン」


そう言い残し参田おれはレイナの方に背を向けながら駅の方に向かい帰る。




駅で電車に乗り、自宅近くの最寄の駅に着く。帰り道、もう夜になり、星が見え始めていた。参田おれの今日一日はなんなんだ。まるで一日中やりたくない人権作文を考えさせる宿題をやらされている気分になった。


ーーーーーーーサクッ


参田おれの頭からひどい頭痛がするようだ。なんでだろうな、左目の視界が赤いや。帰ったら風呂で洗わねぇと……









参田おれは目が覚める。ここはどこだ、なんでこんなところにいるんだ。

ひどい激痛が体のありとあらゆるところからする。痛すぎるまるで体の末端全ての感覚が押しつぶされて機能しないなか、電気ショックのようなパチパチと不快感を感じる痛みが体の内側から込み上がるようだ。参田おれは痛みを俺自身の叫び声と頭を振って金属音を出すことでこの痛みの感覚を麻痺させようとする。


「うるさいねぇ、痛みなんてあと一眠りすれば解放されるわよ。さっさと寝な」


参田おれは肩に注射を刺されると、痛みより強烈な睡魔に襲われ半ば強制的に眠りにつかされた。




参田おれはゆっくり目を再び覚ます。

「いったい何してんだこんなところで」

参田おれは洋館の中にいるようなところで眠らされていたらしい。正面にはここが医務室か何かなら、につかわない螺旋階段が目の前に建っている。天井は高く洋画が描かれている。まわりは赤い絨毯。どれも西洋の貴族が昔使っていたかのような建物の中にいるのかもしれない。

どうしたんだ、なんだこれは身体中包帯だらけじゃないか。ヤバイ、怪我をした時の記憶がない。そうだ、今何月何日なのか調べないと。

「あ………、7月の27日だと」

「起きたようね。」

螺旋階段の上から、一人の女性が降りてくる。足は長く身長は180くらいあるかもしれない。髪は黒色で肩くらいにまでかかり、白い西洋のドレスを着ている。顔はまつ毛が長く、目がキリッとしていて、見た目からとても真面目そうな印象を受けた。

「誰だ、ここはどこだ」

「ちょっと話は私から一方的に話させなさい、あなたの疑問も大方私の話で察してくれるでしょうから」

女は階段を降りると近くの姿見の鏡を参田おれの前に置く。

「まずはあなたの体のことから話すわ。包帯を取ってあげるからじっとして目を閉じなさい」

女は俺の全身の包帯を腕→足→腹→股間→肩→首→顔の順番に丁寧に包帯を取る。包帯を取ると参田おれの体のありとあらゆるところから少し痛みが蘇ってくる。目をつぶっていると最後に会話した人の顔が浮かんできた。誰だっけお前。

「目を開けていいわ」

参田おれは目をゆっくり開けると自分の体全身に色々なところに糸で縫ったような跡がたくさんあることが目に飛び込んでくる。参田おれはとじていた口が開きっぱなしになった。

「なんだ、これは」

自分の体を見るなりフランケンシュタイン博士の作った怪物を想像した。なんて醜い姿なんだ。



「ふふふ、単刀直入に言うけど。貴方は……」

鏡ごしに女の目を見ると左目が、海の底から見る赤い空に星が散らばっているような深紅の瞳が妖しい光を映す。



「ローズブレイド様の人形ぬいぐるみにされたのよ」


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