↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
終章前半:勇者じゃない
95/131

流星一閃

「だぁあああーっ!!!」

 ジェットは光の勇者としての力を存分に解放し、リリムに突進する。拳を振りかぶり、渾身の力に乗せて打ち出す。

「ふんっ!」

 しかし、それは掌で受け止められた。二人を中心に衝撃波が発生し、彼女の方が少し後退りする。

「……む、流石は勇者。」

「どぁだぁああーーーっ!!!」

 回し蹴りを放つ。とてつもない威力で放たれたソレは、またしても悪魔の掌により受け止められた。

 遅れて、蹴りの圧がとてつもない衝撃となり、周囲を爆破した。

「な……!!?」

「それでは、少しばかり……!」

 彼女はジェットの目の前に手を出す。それで、デコピンが飛んできた。

「!!!」

 刹那、それの威力が炸裂する。デコピンに当たった光の勇者は、とてつもない威力で殴り飛ばされたかのように吹き飛ぶ。猛スピードで水平に飛び、民家を何棟も薙ぎ倒した。

「なんだと……!!?」

 ローレンスは、ジェットの方を向いて唖然とする。しかし、ジョーは笑って突撃した。

「それが、どうしたぁあああッッッ!!!」

 走りの踏み込みの度に、地雷でも踏んだかのように爆発が巻き起こる。その爆炎から、燃え盛るような紅蓮の変異を果たした彼が飛び出した。

「へぇ。」

「オラオラオラァ!!!」

 眼前まで来るなり、超連続で攻撃を繰り出した。力任せながら、とてつもない速さで繰り出される攻撃の乱舞。喩えるならば、黒鉄(くろがね)混じりの炎の旋風。

「遅いぞ、餓鬼。」

 しかしその両腕をリリムはアッサリと捉え、掴む。旋風は電源を切られたかのように止んだ。

「にっ!?」

「それっ!」

 そのまま彼を引き寄せ、腹に膝蹴りした。

「ぐはぁあっ……!!」

 吐血し、目を見開く。しかし歯を食いしばって意識を保ち、頭を振り上げる。

「そぉら!」

 その顔面に、蹴りを入れた。為す術なく、彼は蹴り飛ばされた。しかしそれと入れ替わるように、ローレンスが来た。

「はぁああっ!」

 青い神力を、両手の手刀に集中させる。それで、リリムに斬りかかった。

「少し遊んでやろうか。」

 彼女は指にエネルギーを纏い、ローレンスに突撃する。

「せいやぁあっ!」

 彼は手刀を振るい、猛攻した。

 青い風が奔る。風は光となって、邪悪を断ちにかかった。

「くす……」

 しかし、指がローレンスの猛攻を防いだ。

 邪悪は逆に、光を切り落とした。

「ふんっ!はぁっ!だぁあっ!せぇいっ!」

「よっ、ほっ、おっと、ほれほれ。」

 斬撃を何度も放つ。それは放たれる度にリリムの指に切り落とされ、代わりに反撃となって返ってくる。それを受け流し、また攻め込む。

「しゃあっ!!」

 ローレンスが真っ直ぐに、貫手する。しかしそれは避けられ、リリムは背後に回り込んだ。

「そこだ。」

 エネルギーを纏った指を振り下ろす。しかし、彼はそちらは見ずにガードした。

「せぇいっ!」

 振り向きざまに手刀を薙ぎ払う。

「むぅ、二刀の心得があるか。」

 そんな事を言いながらスウェイバックし、軽々しくそれを避ける。

「こっちだ!!」

 その先に、ジェットが居た。

「っ!?」

「くらえーーーッッッ!!!」

 ゼロ距離で渾身のブレイブキャノンを放ち、全エネルギーをぶつける。技は直撃し、リリムはエネルギー波に飲まれた。

「ほぉらっ!」

 しかし、彼女はそこから飛び出して来た。

「なにっ!?」

「ふんっ!」

 呆気に取られるジェットの顔面に、肘打ちする。それで彼は鼻血を噴きながらぶっ飛んだ。

「ぐはぁあっ……!?」

 壁に叩きつけられ、地に落ちてしまう。

「そ、そりゃあねぇだろ……!!」

 今出せる限りの自分の最高の技が、全く通用しなかった。当たった本人は、パンパンとホコリを払いながら余裕の表情でこちらを見ている。

「何かと思ったら、生暖かいだけの技か……その程度じゃ、私は倒せんぞ?」

「く……!」

「こいつを受けて、そう言えるか……!!?」

 ジョーが、拳を振りかぶって力を込める。その拳にとてつもない熱が纏われた。

「吹っ飛べェエッ!!!」

 拳を突き出す。そこから一本の光線が伸び、リリムに直撃した。そこを中心にドーム状に爆炎が巻き起こり、大爆発が巻き起こる。

「どうだ……!!?」

 濃い爆煙が、立ち込める。しかし、その中に立っている影が一つ。

「……そんなアホな。」

 ジョーがそう言いながら、苦笑いする。立っていたのは、無傷のリリムだ。

「今度は、ホコリを巻き起こすだけか。大差ないではないか。」

 ケホケホと咳き込みながら、彼女は爆煙から出る。姿を確認出来た瞬間、既にそれは残像になった。

「なっ!?」

「ちょいちょい。」

 ジョーの背中が、指で鋭打される。遅れて衝撃が巻き起こり、彼はぶっ飛ばされた。

「ぐぁああああーーーッッ!!!」

「はぁあっ!!」

 彼女は間髪入れず、その場で回し蹴りを放つ。

「!!?」

 それは背後から迫っていたローレンスを捉え、蹴り飛ばした。

「ずぁあっ!!」

 ジェットが、彼女の頭上から踵落とししにかかってくる。

「あまい。」

 悪魔的な反応速度で彼は捉えられ、踵落としが形になる前にその体が抱え込まれた。

「ちょっ!?」

「そりゃ。」

 そのまま足を掴まれ、力任せに地面に叩きつけられた。ジェットを叩きつけられた地面は穿たれ、小さいクレーターを刻む。

「ぐっはぁあ……!!」

「ふん。」

 ダメージに揺らいでる最中のその顔面を、真っ直ぐに蹴った。彼はぶっ飛んで、地に伏してしまう。

「く、ぐぅうう……!!」

 ジェットは立ち上がり、息を切らしながら構え直す。

「な、なんという強さだ……!!」

 ジョーはそう言いながらも、しっかりと立ってリリムを見据える。

「しかし、我らは負けられん……!!」

 ローレンスは口から血を吐きながら、構えた。

「ほほう、これだけ圧倒的な差を見せつけられてまだ立ち上がるというのか……くくく、面白いなぁ、人間よ……!」

「ほざけぇええっ!!!」

 三人は突進し、リリムに猛攻した……

「……ぐ……!!」

 サルバは陰に隠れて、好機を伺っていた。その足に、魔力を込めながら。

「……」

 今から放つ技は、この命につき一回きりの大技。外せば、世界は終わるが……こんなクソみたいな命一つと世界が救われるなら、安いものだ。

 彼の体から、とてつもない魔力が噴き上げる。神の力にも等しいそれは際限なく強大になり、辺りにとてつもない力の奔流が流れ出た。

「……!」

「なんだっ!?」

 これには、戦っていた皆が気付いた。そして、彼の溢れ出るエネルギーの大きさに気付いた。

「……む、アレは不味いか。」

 リリムはそこに手を向け、衝撃波を放つ。しかしその前にジェットが立ち、衝撃波を弾き飛ばした。

「ぐぁああ……!!!」

 腕が、千切れ飛びそうになる。そんな激痛を、歯を食いしばって我慢した。

「ジェット!!」

 サルバは動揺し、気の膨張を止めてしまう。そんな彼に、ジェットは親指を立てた。

「……ッ……!」

 それを見て、再び気の膨張を始める。

「あの盗賊、何を……!!」

「何か、大きな事をしようとはしている……!!ならば、それに応えるだけ!!」

 ジョーとローレンスの猛攻が、鋭くなる。リリムはそれを次々に捌いた。

「無駄だ無駄だ……!そんなもの私の力の前では無意味だ……!」

「だまれぇえええッッッ!!!」

「せぇえええいっ!!」

 ジョーは、全力でパンチを放つ。ローレンスは、本気で蹴りを放つ。赤と青の一撃は、彼女の親指と小指によって止められた。

「んな……!!?」

「くっ!?」

「小賢しい……!」

 彼女の目が、紅く光る。次の瞬間、とてつもない速さで二人に攻撃が連打された。

「ぐぁああああっ!!?」

「ぐはぁあっ……!!」

 何をされたのかすら理解出来ない程の超連続攻撃。二人はぶっ飛ばされ、地に倒れた。

「消えろ……!!」

 リリムは、二人に手を向ける。まさに必殺のエネルギーが放たれる寸前に、ジェットが目の前に現れた。

「ブレイブキャノンッッッ!!」

 現れるなり、渾身の技を放つ。

「無駄な事──」

 それを弾き飛ばそうと、腕を振るう。次の瞬間、ブレイブキャノンはスピードを跳ね上げてリリムに直撃した。

「ッッ!!?」

 爆発し、ぶっ飛ばされる。何とか足を地に踏ん張り彼の方を見直した。

「……何だ、今のは……!?」

 明らかに、先程のジェットとは何かが違う一撃。確かに与えられたダメージと、その証拠の僅かな吐血──

「……ッ!!」

「いくぞ。」

 彼はそう言いながら拳を構え、リリムの懐に入った。その拳は、既に残像。今までの旅で、あらゆる相手の反射神経を凌駕した神速の拳を放った。

「ちぃいっ!」

 それを払い落とし、反撃する。しかしジェットもその一撃を払い、攻撃する。そして、互角の攻防を繰り広げた。

「こ、こいつ……!」

「ぐ……!!」

 彼は自身の体に奔る魔力の回路に、限界以上の神力を流し込んでいた。額には青筋が浮かび、体は悲鳴を上げる。

「そこまでして……!!」

「ずぁあああっ!!」

 一歩を踏み込み、彼女の腹にパンチする。その一撃は、確かに手応えのあるものだった。

「……っぐはぁあっ……!!?」

「ぐっぁああ……!!」

 しかし、同時にそのパンチで終わりだった。腕の先からヒビが入り、身体中に広がるような感覚。そのダメージは彼の気力を砕き、聖なる鎧は光となって消えた。

「かはっ……!!」

 彼は倒れ、地に伏せる。しかし、その表情はしたり顔でリリムを見ていた。

「ーっ!!!ーーーッッッ!!!!」

 彼女は腹を押さえ、悶絶している。想定外の威力のダメージが、腹筋を貫通してきたのだ。

「こ、このガキ……!!このまま、踏み潰して──」

「せいやぁあっ!!」

 彼女の背中に、ローレンスの無寸勁が入る。衝撃と魔力が、彼女の体で炸裂した。

「小賢しい……!」

 しかし、彼女は大して効いた様子は無く、振り向きざまに彼を殴り掛かる。

「そんな事──」

 その拳を間一髪で避け、距離をとる。そして、手を向けた。

「分かっていたァ!!」

 その手を握った、次の瞬間だった。何かの術式が発動し、リリムの半径1m辺りがドーム状の結界に囲まれた。それは次第に小さくなり、彼女の全身に余すことなくピッチリとくっつく。

「こ、これ……は……!!?」

「ぐぅうっ!!この結界に包まれても、自我を保ちながら動くか!!」

 ローレンスの腕から、血が噴き出す。

「き……さま……何を……し……た……!!?」

「一度決まった技だ。二度目は無いからよく聞いておけ!陰陽式・時間固定……!!空間を時間ごと固定し、対象を封印する最強の封印結界だ!それを、先の拳に込めた術式と掛け合わせ、これ以上とない程の結界を作った……!!完全に封印することは叶わなかったが、貴様にはこれで充分だ!」

「そん……な……だ、だ……が…….!!」

 彼女はぎこちなく震えながら、動く。その度にローレンスの腕が悲鳴を上げ、血が噴き出した。

「き、きさ……ま……も、ただで……は……済む……まい……わたし……も……動ける……!!」

「フッ……貴様は、話を聞いていなかったのか?"これで充分だ"と、伝えたつもりなのだがな……!!」

「……!!?」

 ジョーがジェットを抱え、その場を離れる。ローレンスも依然として腕に力を込めたまま、ジョーの横に来た。

「頼むぞ……!!」

「我の腕は黄金宝石で何とかなるからいいが、この結界はそう長くは保たない……!!故に、この腕が弾け飛ぶまで奴を封印しよう!頼んだぞ、盗賊!!」

 ここで、サルバの気がとてつもない大きさに膨れ上がった。その気は天を衝き、地を揺らす。この星が、彼の気で震えているかのようだった。

「な……!!?あ、あん……な……ちか……ら……!!受け……た……ら……!!」

 リリムは、逃げようとする。しかし、ローレンスの結界が全力で、その動きを邪魔した。

 サルバは、静かに目を閉じて詠唱を始めた……

「遍く星々の聖なる主よ、我に力を貸し与えたまえ!この命を威力に、邪悪を穿つ一筋の流星を生み出すが良い!」

 そう言い終わると、あの馬鹿でかいエネルギーが更に倍に膨れ上がった。そのとんでもないエネルギーが、彼の体にまるごと圧縮される。

「ありがとう、盗賊王(とうさん)。」

 そんな事を呟いてから、目を見開く。圧縮していたエネルギーが全て解放された。

「うぉおおおおーーーッッッ!!!」

 解放されるエネルギーのままに、飛び蹴りを放った。それは初速の時点で既に人智を超えており、尚も加速した。

「ああああああああーーーッッッ!!!!」

 彼の体が崩壊する。腕が千切れ、空気による摩擦熱で体が炎に包まれる。それが光となって、彼は一筋の流星と化す。命と引き換えに星となった奇跡が今、ここに為された──

「!!!!!!」

 それは、リリムの胸を貫いた。捨て身の代償の流星は、見事に邪悪を穿ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。