表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
前章:勇者進撃
8/131

四魔姫、参上

チイ村を脅かす、西の魔物達。

その棟梁である、アデリアというサキュバスを倒した。

しかし、そこに現れたのは……

「……誰だ、お前?」

「……」

緑色の髪、悪魔のような角、胸に着けてる分厚いヨロイ、何より両腕になっている翼……

そして、見るからに凶悪なハーピーという感じの女だった。

「……また女かよ。」

「私達魔物の社会は、女が台頭に立っているのだ……貴様ら人間の男社会とは、訳が違う。」

アデリアは脇腹を押さえながらそう言ってから、そいつに向き直した。

「い、何時から見ていらっしゃったのですか……ハルピュイア様……!」

「ハルピュイア?」

どうやら、そこの緑髪のハーピーの事らしい。

「……!」

こいつ、ただのハーピーでも無さそうだ。

恐らく、そこらの上級モンスターより強い。

「何時から……?そこの少年が、この部屋に着いて辺りから見ていた。」

「……っ!!」

ハルピュイアはジェットに向き、優しく微笑んだ。

「すまないな、紹介が遅れてしまった。私はハルピュイア。四魔姫の一人だ。」

「……四魔姫……!?」

さっき、アデリアが言ってた奴か。

「それにしても、ただの人間がこいつ相手に打ち勝つとはなぁ。私も驚いているぞ。」

「そりゃあどうも……」

ハルピュイアは、アデリアの方に向いた。

「所で……お前程度のサキュバスが、「四魔姫より強い」というのも少し心外だなぁ……」

「……!!お、お許しください!!わ、私は……」

「いや、いいのだ……それが、事実ならばの話だがな。」

ハルピュイアは、エネルギーを解放した。

「!!?」

「!!!」

アデリアとは比べ物にならないほどのエネルギーが発生し、衝撃のような旋風が巻き起こる。

ジェットもアデリアも吹っ飛びそうになるが、踏ん張った。

「ひ……!!」

「つ……強ぇ……!!」

「さぁ、問答無用だ。」

ハルピュイアは羽を羽ばたかせ、戦闘態勢を取る。

「くっ……!!くそぉオオッ!!!」

アデリアは脇腹から手を離し、拳を振りかぶる。

どうやら、ヤケクソになって奴と戦うつもりらしい。

「だぁあっ!!」

アデリアの一撃がすり抜け、ハルピュイアは消える。

「な……!!?」

「……」

ジェットの目線の先……

アデリアの背後に、ハルピュイアが現れる。

「な……!!?」

「エアロ。」

次の瞬間、アデリアの体中に凄まじい凄まじいカマイタチが駆け巡った。

「!!!?」

カマイタチによって体中が切り刻まれ、アデリアはボロボロになる。

そして白眼を剥いて、倒れた……

「な……!!?」

あれだけ苦戦したアデリアを、手負いとは言え一瞬で片付けてしまった……

これが、四魔姫の実力だってのか……!?

「たわいもないなぁ……くっくっく……」

ハルピュイアは、ジェットの方へ向いた。

「さぁ、勇者よ。どうする?倒すべき相手は、目の前にいるぞ……」

「……冗談じゃねぇ、殺される……!!」

ジェットは背を向けて、逃げようとする。

しかし、既に目の前にハルピュイアが立っていた。

「うわっ!?」

「スピードならば、自信がある……」

どうやら、問答無用のようだ。

「……くそっ!」

……スピードに自信があるのは、あっちだけじゃない。

俺も逃げ足と姑息な小細工ならば、自信がある。

それに、格上との戦いも心得ているつもりだ。

「……」

とにかく、やるしかない。

「脅威の芽は早めに摘まないとな……可愛そうだが少年、死んでもら」

「だぁあっ!!」

「!?」

ジェットは、砂埃をハルピュイアの顔面に蹴りかけた。

「っ……!!」

埃が目に入り、一瞬だが揺らぐハルピュイア。

「よしっ!!」

ジェットは走り、まずはこの部屋から出た。

「男達も助けに行かねぇとなんねぇのに……!!」

とりあえず、雑魚モンスターは完全にここから撤退したようだ。

心置き無く逃げれるのはいいのだが……

「逃がさん!」

ハルピュイアは、高速移動で正面に回り込んできた。

「もうかよっ!」

「はぁあっ!」

翼をラリアットのようにして、ジェットに打ちかかる。

ジェットは、スライディングでそれを避けた。

「ふんっ!」

ハルピュイアはジェットの方を振り向き、床を蹴る。

「っ!!?」

が、思いっきりすっ転んでしまい、顔面から床に激突した。

見ると、床が凍りついていた。

「こしゃくな……!!」

ハルピュイアは飛び、ジェットを追う。

「もう追ってきやがった!」

「ふ……エアロっ!!」

あの斬空撃が、ジェットに襲いかかる。

ジェットはジャンプして、それを避けた。

「ふっ!」

ハルピュイアは、猛禽類の爪でジェットの後頭部を掴んだ。

「っ!!?」

「がぁあっ!!」

そして、思いっきり床に叩きつける。

「っぐはぁあっ……!!」

「この距離では逃げられんぞ……!!」

ハルピュイアはそう言いながら、口を開ける。

「エア」

「しゃっ!!」

ジェットは、ハルピュイアの顎に肘打ちした。

「ろっ!!?」

斬空撃が、あらぬ方向へ飛ぶ。

「よっ!」

ジェットは、ハルピュイアの羽を掴む。

そして羽に足を絡ませ、十字固めしようと、体重をかける。

「うぉおっ!!」

「ぐぅううっ……!!?」

ハルピュイアは、極まる寸前で何とか耐えていた。

「ぐっぐぐぐ……!!」

額に青筋まで浮かばせて、なんとジェットを持ち上げた。

「な……!!?」

「はぁあっ!!」

そして、ジェットを思いっきりぶん投げた。

「うわぁあっ!」

ジェットはぶん投げられ、壁に叩きつけられる。

「くそっ!」

すぐに立ち上がり、走った。

「待てっ!」

ハルピュイアは、ジェットの後を追う。

「しつこいな……!!」

ハルピュイアを見てから、目線を前に戻す。

資材やら棚やらが陳列した廊下だった。

ここで、人間の研究とかをしていたらしい……

「……いやっ!」

今は観察する暇は無い。

むしろ、これを利用しよう。

「だっ!」

ジェットは剣を抜き、棚の足元を切った。

すると棚が倒れ、障害物となった。

「なっ!?」

「はぁあっ!」

目に付く棚を全て切り、障害物にした。

「よしっ!」

「くっ!」

ハルピュイアは一つ一つを壊しながら、迫ってくる。

僅かにだが、足止めにはなっていた。

「っ!」

ジェットの目の前に、上へ上がる階段が見えた。

「はぁあっ!」

ジェットは跳んで、階段の十段近くを飛び越える。

「ふっ!」

そしてまた跳んで、壁に足をつける。

そのまんま三角跳びして、階段を上りきった。

そして走り、出来るだけ牢屋室から離れるように逃げた。

「……」

男達を助けるために、まずはあいつをどうにかして封じ込めねば。

何でもいい、何か方法があれば……

「はぁあっ!!」

「うぉわぁあっ!!?」

いきなり、ジェットの前の床から、ハルピュイアが出てきた。

凄まじい風魔法で、天井……もとい、床を突き破ったらしい。

「逃がさんと言った筈だ……」

「くそっ!」

ジェットは後ずさり、唾を飲む。

流石にこうなってしまうと、どうしようもない。

戦うしかないと思う。

より姑息で、卑怯な手を使ってでも。

「さぁ、覚悟っ!!」

ハルピュイアは突進して、ジェットを蹴り飛ばした。

「ッッがはぁあっ!!?」

とてつもない威力の蹴りをモロにくらい、ぶっ飛んでしまった。

ズサッと床に倒れ、血を吐く。

「が、がはっ……!!」

今の一撃だけで、もう死にそうになってしまった。

あと数発受けたら、完全に死ぬと考えて良さそうだ。

「こ、これが……四魔姫って奴の実力かよ……!!」

「ふっふっふっふ……」

……まぁ、その称号が指す通り、こんなのがあと三体も居るのだろう。

今になって、勇者になった事を少し後悔したジェットであった。

「……!」

ジェットは、手元に何かを発見した。

出来るだけ、怪しまれない挙動で、それを持つ。

「さぁ、最後に、何か言い残す事はあるか……?」

ハルピュイアは羽を向け、魔力を集中させる。

「……か……」

「……ん?」

「……バーカ!!」

ジェットは、消火器をハルピュイアの顔に向けて、思いっきりトリガーを押す。

消火粉末が、思いっきりハルピュイアに吹きかけられた。

「っぶっ!!?」

「おらぁああっ!!くらえっ!!」

消火器を放ちながら、ジェットはハルピュイアを蹴り飛ばした。

「ぐぁあっ……!このっ!」

「よっ。」

ハルピュイアがこちらを向いた瞬間に、消火器を顔面に吹きかける。

「っ!!」

消火器の威力が、ハルピュイアを仰け反らせた。

「調子に……乗るなっ!!」

ハルピュイアは羽を振り、消化粉末を吹き飛ばす。

そして、ジェットに蹴りを放った。

「っ!!」

寸前に避け、ジェットは消火器を片手に持ち替える。

「だぁあっ!!」

そして、脳天に思いっきり叩きつけた。

「……」

ハルピュイアは、顔色一つ変えずに、首を鳴らした。

「に、人間だったら死んでるぜ……!」

「ああ、私は人間ではないからな。」

ハルピュイアはそう言いながら、ジェットを蹴り飛ばした。

「っ!!」

「エアロっ!!」

斬空撃がジェットに放たれ、更に吹っ飛ぶ。

「ぐぁあっ……!!」

ジェットは壁に叩きつけられ、床に倒れた。

先程の風魔法が全身を切り裂いており、大ダメージを受けている。

「く、くそ……!!」

明らかに、状況はマズイ。

早くどうにかしなければ……

ふと見ると、ドアノブが映った。

ドアを見てみると、そこには掠れた文字で「倉庫室」と書かれている。

自分がちょうど叩きつけられた場所が、倉庫室のドアだったらしい。

なるほど、背後は倉庫室か。

「……よし!」

すぐさま転がって立ち上がり、剣を抜く。

「はぁあっ!」

そして振り回してから、構えた。

「観念したか!?」

「……」

ハルピュイアは飛んで、ジェットに迫ってくる。

そして猛禽類の足を向けて、ジェットに飛び蹴りしようとしていた。

「……っ!!」

飛び蹴りが当たる寸前、ジェットは倒れるようにハルピュイアを避けた。

「なっ!?」

ハルピュイアは壁を突き破り、部屋に出てしまった。

「なんだとっ!?」

何故だか知らないが、壁が脆くなっていたのだ。

足元に、壁の破片が転がってくる。

それは、ハルピュイアの蹴りで砕かれた痕跡と、綺麗に斬られた痕跡があった。

「……まさかっ!」

剣を構える前の、あの振り回し……

アレで、壁を切り裂いたというのか?

「くっ!」

「閉店ガラガラ!」

ジェットは、すぐさま壁の穴を氷で塞ぐ。

「オラオラオラオラ!!」

両手に魔力を溜め、連続で打ち出す。

氷の壁が大きく、頑強になっていく。

「うぉおっ……!!?こ、この……!!」

ハルピュイアはエアロを放つが、効果は薄いようだ。

「だらぁああああああっ!!!」

一方彼は、魔力の連射にスパートをかけ、完全に凍結させた。

「……っふぅ。」

これだけやれば、倒せないにしても、数十分は動きを封じられる筈だ。

「……さぁ、急ごう!」

ジェットは、走った……


「っふぅ!」

なんとか、チイ村の男達を外に連れ出す事は成功した。

「うぅ……寒い……」

「ずびーっ……」

どうやら、俺の氷魔法が相当にこたえたらしい。

しかし、そうでもしなければ封印出来ぬ相手だったのだ。

「よし、早く早く!走るんだ!走れば、体もあったまる!」

「おおっ!」

ジェットは、男達を連れて逃走した……

「……がぁあああっ!!!」

暴風が、廃墟の一室を吹き飛ばす。

ハルピュイアが、ようやく外に出たのだ。

しかし、既にジェットは居なかった……

「……ちっ、逃がしたようだな……まぁいいわ。いずれ、戦うことになる……その時が、君の最期だ……」

ハルピュイアはそう言ってため息を吐き、飛び去った……


「……と、まぁこういう訳で……」

ジェットは今までの経緯を、ローゼ王国兵士の隊長に報告した。

隊長の隣には、村長もいる。

「ふむ、そうか。ご苦労だった……それにしても、まさか上級モンスターの中の上級モンスターまでこんな所に居るとはな……」

「うぅむ、確実に世界侵食は進んでおる……ジェットが居なかったら、ここも危なかったであろう。」

隊長も村長も顔を見合わせて、考え込む。

「でも、とりあえずここはもう安全っぽいですね。良かった良かった。」

「ああ……何か礼をしたいのだが……これぐらいしか出来ん。」

隊長はそう言って、ジェットに袋を渡す。

ジェットは袋を受け取って、中身を見てみる。

2万G入っていた。

「うぉおっ、すげぇっ!これだけありゃ、足りる足りる!」

「ふむ、そうか……すまない、命まで掛けたのに、渡せるのがこれだけで……」

「いや、充分すぎるほどだ!ありがとう!」

ジェットは隊長と握手して、村長に振り返った。

「村長、礼は要らないから、次に俺は何処に向かったらいいか教えてくれません?」

「お、おう……」

ジェットはメモを取り出して、村長の話を聞き込んだ……


侵食される世界に、まだまだ謎に包まれた魔物達。

脅威の四魔姫に、その上に立つ魔王……

果たして、この冒険はどうなるのか……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ