四魔姫・アルトリウス
10分前……
「あっ。」
「ん?」
レシアは、モルドレッドとすれ違った。瞬間、お互いは臨戦態勢を取る。
「君はジョーが片付けた筈よ……何で、居るのかしら?」
「さぁな……ただ、アタシはソイツに会いたいんだ。」
「へぇ……って事は、一回敗北済みなのね。」
「悪いか!」
モルドレッドは剣に雷鳴を纏わせ、構えた。レシアも邪神の力をその身に宿し、吐息する。
「うふふ……丁度休憩も取れたし、動きたかった所よ……!覚悟なさい……!!」
「あァ……!!?パルジファルを倒した所で、いい気になってんじゃねぇぞ!!」
二人がぶつかり合おうとする、その寸前……遠くで、膨大な光が現れた。
「きゃっ!?」
「ッッ!!?」
凄まじい熱量と衝撃が波動し、周囲のものが吹き飛ぶ。二人は吹き飛ばされまいと足を踏ん張り、耐えた。やがて光は止み、今度は地響きが来る。
「な、何が起きてるのよ……!」
「……嫌な予感がする!!」
モルドレッドとレシアは同じ方向を向き、目を凝らす。例の三人がアルトリウスに猛烈なラッシュを仕掛けていたのが、わずかに見えた。
「ちっくしょう!!アイツにだけは死なれてたまるか!!一時休戦だ、サキュバス!!」
「私も、死なれちゃ困る人間が居るわ……私の名前はレシアよ!!行きましょう!!」
二人は揃って、そこへ猛ダッシュした……
そして、今……
「どうだ……!!?」
アルトリウスに奥義を叩き込み、様子を伺うモルドレッド。
不意打ちの触手での拘束に、思い切り叩き込んだ光輝く我が反逆の剣……
彼女がそう考えてると、エネルギー波から拳が飛んできて、顔面を殴りつけた。
「!!?」
モルドレッドは吹っ飛び、地に投げ出される。
「うぉああああッッッ!!!」
アルトリウスは咆哮し、自身を拘束する触手を引きちぎった。そして、レシアにエネルギー波を放つ。
「なにっ!?」
それは直撃し、爆発した。彼女もぶっ飛んで、倒れ伏してしまう。
「ハァーッ……ハァーッ……!!」
アルトリウスは肩で息をしながら、二人の方を見る。その姿は顔や腕の皮膚が剥がれ、機械部分が露出していた。しかも、腹には風穴が空いており、よく分からないコードが垂れ、そこから電流が漏れ出てる。
「……ヒャハハハッ!無様だなァ、アルトリウス!!」
ボロボロだったハズのジョーが起き上がり、笑う。
「ぐ……!!」
「戦いッてのは、案外自分の思い通りにならねェモンなんだよ。後一歩の所で、予想外の事が起きるなんて、よくある事だぜ?ンでもって、それが命取りになる事もなァ!」
「何を偉そうに──」
アルトリウスの言葉の最中、ジョーは突進し、彼女の顔面をぶん殴った。それは、確かに有効なダメージを与えていた。
「ぐはっ……ッ!」
「ヒャハハハハハハ!!」
そのまま二人は、殴り合う。ノーガードでの拳のぶつかり合いは、互角に行われた。
「ぉおおっ!!」
「オラァアッ!!」
拳がぶつかり合い、衝撃が波動する。それで二人は離れ、睨み合った。
「ハァッ……ハァッ……!!」
「ハァーッ……ハァーッ……!!」
肩で息をする二人……ジョーだけが、愉快そうに嗤っていた。
「瀕死状態ッてのは、フルパワーが出せなくてつれぇなァ?今から、この俺が楽にしてやるよ!!」
「黙れ……!!」
アルトリウスは踏み出し、ジョーの足を踏んだ。
「ッッ!!?」
突然の激痛に、顔を歪めて硬直してしまう。
「その言葉、そっくりに返してやろう!!とりあえず、死ぬがいい!!」
そのまま、乱暴にジョーを殴り続ける。一発一発に殺意が篭ったソレは、確実にジョーの体力を奪った。
「ずぁあああッッッ!!!」
ジェットが急に飛んできて、アルトリウスのこめかみに飛び蹴りした。それは直撃し、彼女はゴロゴロと転がりながらキャメロットをぶっ飛んだ。
「ぐぬ……!!はぁぁあああーーーッッッ!!!」
咆哮して力を解放し、周囲の瓦礫を吹き飛ばす。そして両手を向け、巨大なエネルギー波を放った。
「氷の防壁……!!」
ジェット達を守るように、分厚い氷の壁が立つ。しかしそれはしばらく押し止めたものの、粉砕してしまった。
「なにっ!?」
「くっ!!」
ジョーが目を見開き、拳圧を放つ。すると、エネルギー波の軌道が逸れ、二人の頬に掠った。
「ふはははははっ!!」
アルトリウスは、その調子でエネルギー波を連射し続ける。そのエネルギー波の雨を縫うように、影が走った。
「む……!!?」
ローレンスだ。ローレンスが、アルトリウスに猛接近したのだ。
「はぁあっ!!」
そのまま、彼女の腹に拳を付ける。
「今度はただでは済まさぬ──」
「ふん。二度まで同じ手を食らうなど……!!」
次の瞬間、ローレンスはアルトリウスに抱きつくような形をとった。その腕には込められる限りのフルパワーが込められており、流石の彼女も瞬時に引き剥がすのは不可能だった。
「──俺ごと、な。」
次の瞬間、とてつもない斬撃の竜巻が二人を中心に巻き起こり、その中から別の斬竜巻が噴射した。神力を纏ったローレンスの強烈な技は光り、大爆発を巻き起こした。
「ぐはぁああッッ!!」
ローレンスが、全身を血塗れにして爆煙から吹っ飛んでくる。そして、ドザッと倒れた。
「ローレンスッ!!」
ジョーが真っ先に、彼の元へ駆け寄る。既にローレンスは瀕死の状態からの、あの無理な技で完全に戦闘不能になっていた。
「チッ……!!」
「よくやった、ローレンス……!」
二人は、アルトリウスの方へ向く。既に爆煙は晴れ、彼女が現れた。
「ガハァアアア……!!」
口から血を吐き散らし、悶絶している。しかし闘志の炎は未だに潰えず。瀕死状態ながら、ジェットを見ていた。
「あんだけ痛めつけりゃ、充分だ……!レシアさんっ!ローレンスを頼むっ!!」
「ええっ……!」
レシアの触手腕がローレンスを巻き上げ、安全な所に引っ張る。そしてジョーとジェットが構え、アルトリウスに向いた。
「ハァーッ……ハァーッ……!!負けるものか……私は、魔王様の剣……!!絶対に折れぬ、勝利の剣なり!!私が倒れる訳にはいかぬっ!!」
アルトリウスはそう言って拳を握り込み、エネルギーを解放した。瀕死にも関わらず、とてつもない気が波動する。
ジェットは臆することなく、拳を握る。
「ならば俺は、人間全ての希望を背負った勇者だ!!人間を害するてめぇらに、負けてたまるかァアア!!!」
両陣はフルパワーを解放し、激突した。
「あだだだだだだだ!!」
「オラオラオラオラ!!」
ジェットの格闘技とジョーの暴力が、瀕死のアルトリウスに容赦なく拳を振るう。
「ぉおおおっ!!」
彼女は猛攻を振り払うように拳を薙ぎ払い、二人の顔面を打った。
「ぐあっ!」
「っ!!?」
二人は鼻血が噴き出す鼻を押さえて、揺らいでしまう。
「はぁああっ!!」
ジョーの腹に拳を叩き込み、一回転してジェットの腹に後ろ回し蹴りした。生体部分が剥がれた彼女の四肢は、まさに鉄であった。
「ぐはぁあっ……!!」
「こなくそぉおッッ!!」
ジョーは吐血しながら、アルトリウスの顔面をぶん殴った。威力に全てをかけた一撃は、彼女の鼻を潰した。
「〜〜〜ッッッ!!!」
血の噴き出す鼻を押さえ、目を白黒させる。しかし頭を振ってジョーの方を見直し、首を掴んだ。
「ぐぬっ!?」
「はぁあああッッッ!!!」
そのまま、腹に一撃する。それは彼の内臓を揺るがし、大量に吐血させた。
「ゴパァアッ……!!」
「はぁあっ!!」
手を離して、蹴り飛ばす。ジョーは転がりながら吹っ飛び、倒れ付した。
「次は貴様だ──」
「シュウッ!!!」
ジェットのあの神速の拳が、アルトリウスの正中線に乱打される。見切ることもかなわなかった彼女は、何が起きたか分からないままに、ダメージに揺らぐ。
「がはぁあ……!!」
「おらぁああッッッ!!」
腹に、一撃決めようと拳を振りかぶる。しかし、拳に肘をぶつけられてしまった。彼女の強烈な肘鉄は、ジェットの拳を砕いた。手がひしゃげ、全ての指がおかしな方向を向く。
「痛ッッッ……てぇなァ!!!」
手の痛みより、アルトリウスの往生際の悪さへの苛立ちが勝った。怒りのままに振るわれた足刀はクリーンヒットし、その脳を震わせた。
「あぐぅうっ……!!」
アルトリウスは後退し、頭を押さえて悶絶した。
彼女にも、脳はあるのだ。機械で出来たものではあるが、同じ役割をする器官。人間とほぼ同じ作りをしている以上、衝撃を与えられると揺らいでしまうのだ。
「ぉおおおっ!!」
そんな彼女に、ジェットは容赦なく拳を振りかぶる。
「これで、終わりだ──」
次の瞬間、ジェットの腹に何か刺さり、背から貫通した。それで彼は止まり、吐血する。
「……ぐはぁあっ……!!」
「驕ったな、勇者よ……!!」
アルトリウスの貫手が、ジェットを貫いていたのだ。その腕は伸び切っており、指の先から血が滴り落ちる。
「所詮、人間ごときが私に勝つなど不可能なのだ……!さぁ、このまま吹き飛ばしてやろう……!」
「……それで、勝ったつもりか?」
ジェットは血を吐きながら、アルトリウスに一歩詰め寄った。彼女の腕が、腹の臓を擦る。
「なにっ……!!?」
「がはっ……!ごふっ……!!」
そのまま、一歩一歩と詰め寄る。その異様な光景に、アルトリウスは恐怖を覚え始めた。
「く、くるな……!!くるなぁああっ!!」
「お前の……負けだ……!!」
ジェットはそう言いながら、手刀を構える。それに渾身の神力を込め、アルトリウスの頭へ振り下ろした。
「!!!!!」
そこで爆発が起こり、彼女の頭の半分が消し飛んだ。頭を叩き割られたアルトリウスは力なくジェットに寄りかかった。
「ッ!!!」
ジェットは腹から腕を引き抜く。そしてアルトリウスを突き飛ばし、仰向けに倒した。
「ハァーッ……ハァーッ……!!」
遂に、遂にあのアルトリウスが地に伏せた。
「や、やった……!」
「やりやがった……!あの勇者……!」
レシアとモルドレッドが、ジェットを見る。彼女達の視線の先の後ろから、ジョーとローレンスも来た。みんな、ボロボロだ。
「一番ダメージが深いテメェが、トドメ刺しちまうとはな。」
「ふむ、見事だった。」
「あァ……」
三人が話し合う中、アルトリウスはそこへ目を向ける。
「……何故だ……何故、私が……」
「あァ?まだ死んでねぇのか。」
ジョーが、彼女の胸に足を置く。そして、顔を覗き込んだ。
「ぐ……何故……私がこのような……屈辱……!」
いつの間にか仮面を着けてるローレンスが、息を吐いた。
「……諦めて、自分の運命を受け入れるのだな。貴方は我らに戦いを仕掛け、そして今回がたまたまそういう結果だっただけだ。」
「……ッッッ……」
アルトリウスは歯ぎしりをして、三人を睨んだ。
「わ、私を倒せたからと言って、いい気になるな……!言っておくが、魔王様は私より遥かに強い……!貴様らは、もう終わりだ……!」
「ふんッッッ!!!」
ジョーの踏み足に、力が入る。それは彼女の胸を踏み抜き、胸部を完全に破壊した。
「ッ!!?」
「せぇいッ!!」
更に、ローレンスが頭を踏み砕いた。アルトリウスは完全に沈黙し、動作を停止させた……
「……ふむ。」
「これで満足かァ?聞いてもねェ事ベラベラ話しやがって。」
「はぁっ……はぁっ……」
ジェットが一人、城の方へ向かう。それに気付いた皆は、彼を追いかけた。
「どうした、ジェット?」
「ほら、姫様が待ってると思うんだ。」
「あ、そう言えばそんな奴居たなぁ……」
三人は並び、城へ向かう。その後ろで、レシアとモルドレッドが話していた。
「……モルドレッド、あなたはこれで良かったの?アルトリウスは、あなたの母親同然の存在だったんじゃないの?」
「アタシは前々から、母上の事は気に入らなかったんだ。でも、それが正義だって思ってたから渋々従ってただけさ。だけど、ようやく自分の生き方って奴が分かった……アタシも、あんな風になりてぇな……」
そう言う彼女の視線の先には、ジェットと会話するジョーの後ろ姿が映っていた。
「……そう。それなら、良かったわね。」
一同は、城へ向かった……




