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ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
中章:激震魔大陸
79/131

四魔姫・アルトリウス

 10分前……

「あっ。」

「ん?」

 レシアは、モルドレッドとすれ違った。瞬間、お互いは臨戦態勢を取る。

「君はジョーが片付けた筈よ……何で、居るのかしら?」

「さぁな……ただ、アタシはソイツに会いたいんだ。」

「へぇ……って事は、一回敗北済みなのね。」

「悪いか!」

 モルドレッドは剣に雷鳴を纏わせ、構えた。レシアも邪神の力をその身に宿し、吐息する。

「うふふ……丁度休憩も取れたし、動きたかった所よ……!覚悟なさい……!!」

「あァ……!!?パルジファルを倒した所で、いい気になってんじゃねぇぞ!!」

 二人がぶつかり合おうとする、その寸前……遠くで、膨大な光が現れた。

「きゃっ!?」

「ッッ!!?」

 凄まじい熱量と衝撃が波動し、周囲のものが吹き飛ぶ。二人は吹き飛ばされまいと足を踏ん張り、耐えた。やがて光は止み、今度は地響きが来る。

「な、何が起きてるのよ……!」

「……嫌な予感がする!!」

 モルドレッドとレシアは同じ方向を向き、目を凝らす。例の三人がアルトリウスに猛烈なラッシュを仕掛けていたのが、わずかに見えた。

「ちっくしょう!!アイツにだけは死なれてたまるか!!一時休戦だ、サキュバス!!」

「私も、死なれちゃ困る人間が居るわ……私の名前はレシアよ!!行きましょう!!」

 二人は揃って、そこへ猛ダッシュした……


 そして、今……

「どうだ……!!?」

 アルトリウスに奥義を叩き込み、様子を伺うモルドレッド。

 不意打ちの触手での拘束に、思い切り叩き込んだ光輝く我が反逆の剣クラレント・ライジングボルト……

 彼女がそう考えてると、エネルギー波から拳が飛んできて、顔面を殴りつけた。

「!!?」

 モルドレッドは吹っ飛び、地に投げ出される。

「うぉああああッッッ!!!」

 アルトリウスは咆哮し、自身を拘束する触手を引きちぎった。そして、レシアにエネルギー波を放つ。

「なにっ!?」

 それは直撃し、爆発した。彼女もぶっ飛んで、倒れ伏してしまう。

「ハァーッ……ハァーッ……!!」

 アルトリウスは肩で息をしながら、二人の方を見る。その姿は顔や腕の皮膚が剥がれ、機械部分が露出していた。しかも、腹には風穴が空いており、よく分からないコードが垂れ、そこから電流が漏れ出てる。

「……ヒャハハハッ!無様だなァ、アルトリウス!!」

 ボロボロだったハズのジョーが起き上がり、笑う。

「ぐ……!!」

「戦いッてのは、案外自分の思い通りにならねェモンなんだよ。後一歩の所で、予想外の事が起きるなんて、よくある事だぜ?ンでもって、それが命取りになる事もなァ!」

「何を偉そうに──」

 アルトリウスの言葉の最中、ジョーは突進し、彼女の顔面をぶん殴った。それは、確かに有効なダメージを与えていた。

「ぐはっ……ッ!」

「ヒャハハハハハハ!!」

 そのまま二人は、殴り合う。ノーガードでの拳のぶつかり合いは、互角に行われた。

「ぉおおっ!!」

「オラァアッ!!」

 拳がぶつかり合い、衝撃が波動する。それで二人は離れ、睨み合った。

「ハァッ……ハァッ……!!」

「ハァーッ……ハァーッ……!!」

 肩で息をする二人……ジョーだけが、愉快そうに嗤っていた。

瀕死(グロッキー)状態ッてのは、フルパワーが出せなくてつれぇなァ?今から、この俺が楽にしてやるよ!!」

「黙れ……!!」

 アルトリウスは踏み出し、ジョーの足を踏んだ。

「ッッ!!?」

 突然の激痛に、顔を歪めて硬直してしまう。

「その言葉、そっくりに返してやろう!!とりあえず、死ぬがいい!!」

 そのまま、乱暴にジョーを殴り続ける。一発一発に殺意が篭ったソレは、確実にジョーの体力を奪った。

「ずぁあああッッッ!!!」

 ジェットが急に飛んできて、アルトリウスのこめかみに飛び蹴りした。それは直撃し、彼女はゴロゴロと転がりながらキャメロットをぶっ飛んだ。

「ぐぬ……!!はぁぁあああーーーッッッ!!!」

 咆哮して力を解放し、周囲の瓦礫を吹き飛ばす。そして両手を向け、巨大なエネルギー波を放った。

氷の防壁(アイスバリヤー)……!!」

 ジェット達を守るように、分厚い氷の壁が立つ。しかしそれはしばらく押し止めたものの、粉砕してしまった。

「なにっ!?」

「くっ!!」

 ジョーが目を見開き、拳圧を放つ。すると、エネルギー波の軌道が逸れ、二人の頬に掠った。

「ふはははははっ!!」

 アルトリウスは、その調子でエネルギー波を連射し続ける。そのエネルギー波の雨を縫うように、影が走った。

「む……!!?」

 ローレンスだ。ローレンスが、アルトリウスに猛接近したのだ。

「はぁあっ!!」

 そのまま、彼女の腹に拳を付ける。

「今度はただでは済まさぬ──」

「ふん。二度まで同じ手を食らうなど……!!」

 次の瞬間、ローレンスはアルトリウスに抱きつくような形をとった。その腕には込められる限りのフルパワーが込められており、流石の彼女も瞬時に引き剥がすのは不可能だった。

「──俺ごと、な。」

 次の瞬間、とてつもない斬撃の竜巻が二人を中心に巻き起こり、その中から別の斬竜巻が噴射した。神力を纏ったローレンスの強烈な技は光り、大爆発を巻き起こした。

「ぐはぁああッッ!!」

 ローレンスが、全身を血塗れにして爆煙から吹っ飛んでくる。そして、ドザッと倒れた。

「ローレンスッ!!」

 ジョーが真っ先に、彼の元へ駆け寄る。既にローレンスは瀕死の状態からの、あの無理な技で完全に戦闘不能になっていた。

「チッ……!!」

「よくやった、ローレンス……!」

 二人は、アルトリウスの方へ向く。既に爆煙は晴れ、彼女が現れた。

「ガハァアアア……!!」

 口から血を吐き散らし、悶絶している。しかし闘志の炎は未だに潰えず。瀕死状態ながら、ジェットを見ていた。

「あんだけ痛めつけりゃ、充分だ……!レシアさんっ!ローレンスを頼むっ!!」

「ええっ……!」

 レシアの触手腕がローレンスを巻き上げ、安全な所に引っ張る。そしてジョーとジェットが構え、アルトリウスに向いた。

「ハァーッ……ハァーッ……!!負けるものか……私は、魔王様の剣……!!絶対に折れぬ、勝利の剣なり!!私が倒れる訳にはいかぬっ!!」

 アルトリウスはそう言って拳を握り込み、エネルギーを解放した。瀕死にも関わらず、とてつもない気が波動する。

 ジェットは臆することなく、拳を握る。

「ならば俺は、人間全ての希望を背負った勇者だ!!人間を害するてめぇらに、負けてたまるかァアア!!!」

 両陣はフルパワーを解放し、激突した。

「あだだだだだだだ!!」

「オラオラオラオラ!!」

 ジェットの格闘技とジョーの暴力が、瀕死のアルトリウスに容赦なく拳を振るう。

「ぉおおおっ!!」

 彼女は猛攻を振り払うように拳を薙ぎ払い、二人の顔面を打った。

「ぐあっ!」

「っ!!?」

 二人は鼻血が噴き出す鼻を押さえて、揺らいでしまう。

「はぁああっ!!」

 ジョーの腹に拳を叩き込み、一回転してジェットの腹に後ろ回し蹴りした。生体部分が剥がれた彼女の四肢は、まさに鉄であった。

「ぐはぁあっ……!!」

「こなくそぉおッッ!!」

 ジョーは吐血しながら、アルトリウスの顔面をぶん殴った。威力に全てをかけた一撃は、彼女の鼻を潰した。

「〜〜〜ッッッ!!!」

 血の噴き出す鼻を押さえ、目を白黒させる。しかし頭を振ってジョーの方を見直し、首を掴んだ。

「ぐぬっ!?」

「はぁあああッッッ!!!」

 そのまま、腹に一撃する。それは彼の内臓を揺るがし、大量に吐血させた。

「ゴパァアッ……!!」

「はぁあっ!!」

 手を離して、蹴り飛ばす。ジョーは転がりながら吹っ飛び、倒れ付した。

「次は貴様だ──」

「シュウッ!!!」

 ジェットのあの神速の拳が、アルトリウスの正中線に乱打される。見切ることもかなわなかった彼女は、何が起きたか分からないままに、ダメージに揺らぐ。

「がはぁあ……!!」

「おらぁああッッッ!!」

 腹に、一撃決めようと拳を振りかぶる。しかし、拳に肘をぶつけられてしまった。彼女の強烈な肘鉄は、ジェットの拳を砕いた。手がひしゃげ、全ての指がおかしな方向を向く。

「痛ッッッ……てぇなァ!!!」

 手の痛みより、アルトリウスの往生際の悪さへの苛立ちが勝った。怒りのままに振るわれた足刀はクリーンヒットし、その脳を震わせた。

「あぐぅうっ……!!」

 アルトリウスは後退し、頭を押さえて悶絶した。

 彼女にも、脳はあるのだ。機械で出来たものではあるが、同じ役割をする器官。人間とほぼ同じ作りをしている以上、衝撃を与えられると揺らいでしまうのだ。

「ぉおおおっ!!」

 そんな彼女に、ジェットは容赦なく拳を振りかぶる。

「これで、終わりだ──」

 次の瞬間、ジェットの腹に何か刺さり、背から貫通した。それで彼は止まり、吐血する。

「……ぐはぁあっ……!!」

(おご)ったな、勇者よ……!!」

 アルトリウスの貫手が、ジェットを貫いていたのだ。その腕は伸び切っており、指の先から血が滴り落ちる。

「所詮、人間ごときが私に勝つなど不可能なのだ……!さぁ、このまま吹き飛ばしてやろう……!」

「……それで、勝ったつもりか?」

 ジェットは血を吐きながら、アルトリウスに一歩詰め寄った。彼女の腕が、腹の臓を擦る。

「なにっ……!!?」

「がはっ……!ごふっ……!!」

 そのまま、一歩一歩と詰め寄る。その異様な光景に、アルトリウスは恐怖を覚え始めた。

「く、くるな……!!くるなぁああっ!!」

「お前の……負けだ……!!」

 ジェットはそう言いながら、手刀を構える。それに渾身の神力を込め、アルトリウスの頭へ振り下ろした。

「!!!!!」

 そこで爆発が起こり、彼女の頭の半分が消し飛んだ。頭を叩き割られたアルトリウスは力なくジェットに寄りかかった。

「ッ!!!」

 ジェットは腹から腕を引き抜く。そしてアルトリウスを突き飛ばし、仰向けに倒した。

「ハァーッ……ハァーッ……!!」

 遂に、遂にあのアルトリウスが地に伏せた。

「や、やった……!」

「やりやがった……!あの勇者……!」

 レシアとモルドレッドが、ジェットを見る。彼女達の視線の先の後ろから、ジョーとローレンスも来た。みんな、ボロボロだ。

「一番ダメージが深いテメェが、トドメ刺しちまうとはな。」

「ふむ、見事だった。」

「あァ……」

 三人が話し合う中、アルトリウスはそこへ目を向ける。

「……何故だ……何故、私が……」

「あァ?まだ死んでねぇのか。」

 ジョーが、彼女の胸に足を置く。そして、顔を覗き込んだ。

「ぐ……何故……私がこのような……屈辱……!」

 いつの間にか仮面を着けてるローレンスが、息を吐いた。

「……諦めて、自分の運命を受け入れるのだな。貴方は我らに戦いを仕掛け、そして今回がたまたまそういう結果だっただけだ。」

「……ッッッ……」

 アルトリウスは歯ぎしりをして、三人を睨んだ。

「わ、私を倒せたからと言って、いい気になるな……!言っておくが、魔王様は私より遥かに強い……!貴様らは、もう終わりだ……!」

「ふんッッッ!!!」

 ジョーの踏み足に、力が入る。それは彼女の胸を踏み抜き、胸部を完全に破壊した。

「ッ!!?」

「せぇいッ!!」

 更に、ローレンスが頭を踏み砕いた。アルトリウスは完全に沈黙し、動作を停止させた……

「……ふむ。」

「これで満足かァ?聞いてもねェ事ベラベラ話しやがって。」

「はぁっ……はぁっ……」

 ジェットが一人、城の方へ向かう。それに気付いた皆は、彼を追いかけた。

「どうした、ジェット?」

「ほら、姫様が待ってると思うんだ。」

「あ、そう言えばそんな奴居たなぁ……」

 三人は並び、城へ向かう。その後ろで、レシアとモルドレッドが話していた。

「……モルドレッド、あなたはこれで良かったの?アルトリウスは、あなたの母親同然の存在だったんじゃないの?」

「アタシは前々から、母上の事は気に入らなかったんだ。でも、それが正義だって思ってたから渋々従ってただけさ。だけど、ようやく自分の生き方って奴が分かった……アタシも、あんな風になりてぇな……」

 そう言う彼女の視線の先には、ジェットと会話するジョーの後ろ姿が映っていた。

「……そう。それなら、良かったわね。」

 一同は、城へ向かった……

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