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ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
前章:勇者進撃
6/131

西での激闘

突如強襲してきた、モンスター達。

それを撃退したと思ったら、今度は首無し巨人のデュラハーンが現れた。

激戦の末、なんとかデュラハーンを真っ二つにしたジェットだった。

「……はぁっ。」

息を吐き、ポケットに手を突っ込む。

「おーい、終わったぜー。」

そう言いながら、歩き回った。

「お、終わったのか……!?」

「なんだ、ありゃ……!?」

兵士達が安全を確認し、市民も兵士達の指示で動く。

だが、その半数近くは真っ二つになったデュラハーンに集まっていた。

「うわぁ……でかいな……」

「15mはあるぞ……」

「いったい、誰が……?」

「鎧、どうやって用意したんだろう……」

好奇と不安の目が、デュラハーンの死体に集中しているのだった。

「少年。」

兵士が、話しかけてきた。

「まずは、礼を言うべきだな……ありがとう。」

「どうも……でも、どうせそんな用でもねぇんだろ?」

「ああ……君は、いったい何者なんだ?なんで、あんなバケモノを相手に戦える?」

「さぁ?筋トレしてたし……」

「そんなものだけで、どうにかなるものではないと思うのだが……」

「知らねぇよ。事実何とかなってんだから。」

ジェットは息を吐き、デュラハーンの死体に向かい直った。

「こないだの魔物達の強襲といい、ここら辺にも魔物が攻めてくるご時世か。地球征服までのカウントダウンが、刻一刻と迫っているな。」

「ああ……今回は何とかなったからいいものの、次またこんなのが出てきたらこの村も終わるだろうな……それに、魔物の脅威だって完全に去った訳ではないし……」

兵士は、そこで顔を曇らせた。

それを察したジェットは、あえて口を開いた。

「……連れ去られた、若い男も気になるか。」

そう言えば、何故か知らないが魔物達は若い男は拉致しているらしい。

連れ去るにしても何故若い男なのか、その意図すら訳が分からないままである。

「……ここら辺の魔物って、何処から来るんだ?」

「ああ……」

兵士は何やら紙を取り出して、目を通し始めた。

ジェットは、それを覗き込む。

紙には、ここら辺の簡単な地図と、バツ印が記されていた。

「ここから少し西に行ったところに、山があるんだ。連中はそこを根城にしているらしい。」

「ああ〜……」

バツ印は、本丸の位置と考えても良さそうだ。

なるほど、ここを叩けばまずはここら辺の脅威は無くなると。

連れ去られた男達を助ける事も出来て、俺も楽しくて、WinWinだな。

「そこには、魔王軍直属の精鋭の一人が居るって噂を聞いた……行ったら、流石の君も危ないだろう。」

「何でそんな奴がこんな序盤の所に居るんだよ。普通、何か中辺あたりの敵が出てくるんじゃねーのかよ。」

「し、知らん……おそらくは地球征服までひと踏ん張りだから、確実に、慎重に行こうという算段なのだろう……」

とりあえず、本丸の場所は分かった。

ついでに、そこにめちゃくちゃ強そうな奴が居ることも判明した。

「行くつもりか?」

「どうせ、誰かが行かなきゃならねぇんだ。行くっきゃねぇだろ。」

ジェットはそう言って、西の方角へ向いた。

兵士は、ジェットと同じ方向へ向く。

「……一応、忠告しておこうと思う。先程言った通り、あそこには魔王軍直属の精鋭がいる。ローゼの小隊が定期的に向かってはいるが、帰ってきた奴は少ない……それでも、行くのか?」

「ああ……」

ジェットは歩き出し、チイ村から出ようとする。

「……気をつけるんだぞ!!」

「……」

兵士の声を聞いて、バイバイと手を振る。

ジェットはそのまんま村を出て、西へ向かった……


兵士に言われた通り、ジェットは西の山へ進んでいた。

「……」

先程の戦いで、向こうも消耗している筈だ。

叩くならば、今しかない。

しばらく進んでいると、ゴブリンが歩いているのが見えた。

すかさず、ジェットは物陰に身を隠す。

「……」

状況確認、開始。

今、コンテナの両端にゴブリン二体がこっちに向いてる。

まだ気付かれては居ないようだが、身を乗り出したら気付かれるのは間違いなしだ。

俺は、でかめの木の陰に隠れている。

仕掛けるならば、ここしかない。

いや、ここはあえて派手に乗り出すか……

いやいや、ここには精鋭がいるとか聞いている。

その精鋭がどれぐらいで、どの程度まで強いのか分からないから、どうとも言えない。

ここは、穏便に行こう。

今はなるべく気付かれずに、すり抜けよう。

「……」

ジェットは足元の石を広い、ゴブリン達の後方へと投げた。

「?」

ゴブリン達は、音のした方へ振り返る。

そして、石の方へと歩き出した……

今だ。

ジェットは高速移動で走り、音もないままにゴブリンの一体の首を切り落とした。

次に別のゴブリンに飛びつき、腕で首を絞める。

「ギッ!!?」

「よっ」

ジェットが力を入れると、ゴブリンの首から鈍い音が鳴る。

そしてゴブリンは白眼を剥き、倒れた……

「……ふぅっ。」

ジェットは息を吐き、先へと進む。

さっきのゴブリンの見張りからして、本丸は近いはずだ。

ジェットは剣を納めて、進む。

そして、すぐに本丸へと到着した。

「……」

ジェットは、それを見上げていた。

それは大きめの廃墟で、モンスターの隠れ家にはちょうど良さそうな所だった。

「……」

魔物の気配を察して、ジェットは隠れた。

今度は、ハーピーが飛んできたのだ。

「……異常無しね。」

どうやら、ここら辺を飛び回って監視しているらしい。

一通り眼下を見下ろしたあと、飛んでいってしまった……

「……」

廃墟周辺にはハーピー達の見張り、もちろんこの中では大量のゴブリンとかが居るだろう。

「……もう、隠密行動にはなれないか……?」

流石にこの警備の中を潜り抜けようとしたら、日が暮れてしまう。

あと、絵面が地味になると思う。

それにここまで来たら、もう懐に入ったも同然だろう。

よし、もう派手に動こう。

「すぅーっ……」

ジェットは大きく息を吸い、笑う。

「馬鹿がぁっ!!!もう侵入成功してんだよっ!!!」

「!!?」

「えっ!!?」

飛び回っていたハーピーはびっくりして、声の方向へ向く。

次の瞬間、廃墟の入り口が派手に破壊された。

「なっ!?て、敵襲!!?」

「そ、そんな、さっき見た時は誰も……!!」

焦るハーピー達を横目に、ジェットは廃墟の中に立つ。

「ギ……?」

「ギヒヒヒ……」

「ガァアッ!!」

廃墟では、ゴブリン達がたむろしていた。

ゴブリン達は武器を抜き、ジェットに迫る。

「おらぁあっ!!」

ジェットはそのゴブリン達を、頭突きとダブルラリアットで壁に叩きつけた。

ものすごい威力で、壁が粉砕する。

砂煙が舞い、周囲で地震が起きた。

「ギィッ!!?」

別の所に居たゴブリンが、ジェットの方を見て腰を抜かす。

ジェットは砂煙から出てきて、そのゴブリンの首を切り落とした。

「く、くそっ!あの少年か!やれっ!」

「スライムも出ろっ!!」

ハーピーの一体がそう言うと、ジェットの背後から何かが迫った。

「!?」

大きく広がり、ジェットを飲み込もうとする。

しかしジェットは避けて、構え直した。

「あ〜、惜っしいな〜!」

それは女性の形へと変貌し、クスクスと笑った。

なるほど、これが俗に言うスライムとか言うやつか。

しかも粘液質な体で、物理的な攻撃は受け付けなさそうだが……

しかし、俺の前に立ったのが失敗だった。

「だっ!」

ジェットは高速移動でスライムに迫り、胸に手を添えた。

「あっ!えっち」

次の瞬間、ジェットの魔力が爆発し、スライム娘は完全に凍りついた。

「らぁっ!!」

その凍ったスライムを蹴り飛ばし、粉砕した。

スライムは絶命したらしく、もう動かなかった……

「な、なんだと!!?」

「……」

おそらく、ローゼ兵がここを攻め落とせなかったのは奴が原因だろう。

氷魔法ってのは特殊な魔法で、本来ならば長い修行で水の魔法を極めた者にしか使えないのだ。

しかし、俺は生まれつき才能があったのか、氷魔法は使えた。

ただ、才能がそれに全振りされてたらしく、他の魔法はてんでダメだったが。

とにかく、普通に魔法兵士やってて氷魔法を使える者など居ないのだろう。

「く、くそっ!」

「ガァアッ!!」

ハーピーとゴブリンが、波のように襲ってくる。

ジェットはそれらを切っては投げ、切っては蹴りを繰り返して、どんどん押していった。

「あは〜!」

背後から、スライムが迫る。

そのスライムは、両手でジェットをホールドしにかかった。

「あまい。」

ジェットは既にスライムの背後に移動しており、その背中に手をつけた。

「えっ!?」

スライムは一瞬で凍りつき、凍結してしまう。

「スノウダストストーム!!」

魔力を足に纏い、凍ったスライムを蹴り飛ばす。

スライムは粉砕し、その氷破片が刃となって、魔物達に降り掛かった。

「ギャァアッ!!?」

「うわぁっ!?翼が……ぐはっ!」

氷の刃が嵐のように舞って、魔物達を次々に倒していった。

「くそっ!」

ハーピーの一体が、ジェットに風魔法を撃つ。

しかしジェットはそれを避け、壁に向かって走る。

「だっ!よぉおっ!!」

ジャンプして、壁を蹴って、ハーピーの目線が合うところまで跳んだ。

「な……!!?」

そのハーピーの後頭部を掴み、振り上げる。

「どりゃあああああっ!!!」

そして、床へと勢い良く叩きつけた。

「ーーーっ!!!?」

「あっ……!!?」

「ギィッ!?」

「わわわっ!?」

その場に居た全員が、ふらついた。

なんと、今のジェットの攻撃で床が崩れ始めたのだ。

「や、やっべぇ……!!?」

次の瞬間、床が崩れた。

「うわぁあああっ!!?」

「ギャァアッ!!」

「うわ〜!」

魔物達もジェットも、下の階に叩きつけられる。

「いでででで……!!」

ジェットは立ち上がり、周囲を見る。

「ギィッ!!」

「うぉっ!?」

飛びかかってきたゴブリンを切り、蹴り飛ばす。

「んっ!?」

足を動かそうとしたら、動かない。

見てみると、スライムが足にまとわりついていた。

「つかまえた〜!」

「離せぇいっ!!」

ジェットは魔力を纏った足でスライムを踏んづけ、凍結させた。

余計に動けなくなってしまった。

「アホか俺はっ!!」

そんな状況でも、ゴブリン達は襲いかかってくる。

四方から迫るゴブリンを、次々と剣で切り裂いていく。

そして猛攻が落ち着いた途端に、足を力ませた。

「だっ!!」

足の氷が砕け、自由に動けるようになった。

「はぁあっ!!」

「上かっ!!」

ハーピーが、ジェットの真上から蹴りを放つ。

しかしジェットはそれを避け、ハーピーの体を横一文字に両断した。

「ふんっ、はっ!」

バク転し、剣を構える。

「ギィ!!」

「シャハァッ!!」

「ガァアッ!!」

ゴブリン達が、ジェットに襲いかかってくる。

ジェットは真正面から突っ込み、ゴブリン達を次々に切り裂いていった。

「オラオラオラオラオラオラっ!!」

ジェットによって何が何だか分からないままに倒される魔物達。

そのジェットに気迫と強さによって、怖気付き始めた。

「ギ、ギィ……!!」

「な、なんなのよ、こいつ……!!」

「だっしゃあーっ!!」

ゴブリンの一体を蹴り飛ばし、扉を破る。

そして、ジェットは進んだ。

「……こっちで合ってんのか?」

つーか、俺はそもそも何してんだ。

そうだ、ここの魔物達を殲滅するんだった。

しかし雑魚共はあの様子だし、やっぱり精鋭とやらを潰すしかないようだ。

ジェットは、本能が赴くままに進んだ……


「……あ?」

走ってたら、変な部屋に出た。

ジェットは部屋の外を確認する。

敵は、追ってこなさそうだ。

それを確認し、改めてこの部屋を見回す。

薄暗い、牢屋部屋みたいな所だった。

「な、なんだ……?」

牢屋を、覗き込んでみる。

そこには、上半身裸の若い男達が捕えられていた。

「……うぅ……」

「く、くそ……」

「おなかすいたよぉ……パパ……」

子供や、俺と同い年ぐらいの奴まで捕えられている。

「おい、あんたらチイ村の人間か?」

「!!」

牢屋の中が、ざわめく。

どうやら、今になってジェットの存在に気付いたらしい。

「……そうだ。助けに来てくれたのか?」

牢屋の中の一人が、そう言う。

ジェットは頷き、改めて男達を見る……

どの男も完全に消耗しきっており、無気力な様子だった。

「……何があった?」

「ああ……俺達はここの代表みたいな奴に変な魔法をかけられて……それで、力を奪われてしまったんだ……」

「力を……?」

「ああ……力を奪われたと言っても、状態としては全力で走った後に近い……休憩すれば、戻ってくる……だけど、その度にまた魔法をかけられて……そんな事の繰り返しで、死んだ男だって居た……子供が母親を呼びながら気絶した所だって、飽きる程見た……」

「なんて事を……」

どうやら、魔物達の手によってひどい事が行われているらしい。

なるほど、来て正解だったようだ。

「それで、そんな事をして何になるんだ?」

「分からない……それは、奴に直接聞くしか……」

「そいつの居場所は?」

「ああ……ここの地下三階……すぐそこの筈だ。」

何だかんだで進んでいたら、いつの間にか目的地にまで近づいていたらしい。

成り行きでここまで進んでしまって、いいのだろうか。

しかし、そいつさえ倒せばチイ村の安全はとりあえず確保出来るという訳だ。

「分かった、ありがとう。」

「ああ、無理だけはするなよ……もう、ここの犠牲者なんて出したくない……」

ジェットは頷き、親指を上げる。

そして、牢屋室から出ていった……

「……おい、あいつが奴に勝てるのか?」

ジェットが出ていったのを確認した別の男が、男に話しかけた。

ジェットと話していた男は、少し黙り……口を開いた。

「……分からない。ただ……」

「ただ……?」

「あの人の顔は、『絶対勝つ』って時の顔だった……」

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