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ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
中章:激震魔大陸
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不死身の怪物

「ッッしゃあぁああッッッ!!!」

剣からこの手に伝わる、確かな手応え。不意打ちとはいえ、会心の一撃を叩き込めた達成感。それらを感じながら、勢い余ったジェットは床に投げ出され、ゴロゴロと転がる。体勢を整え、ハルピュイアに向いた。

「な……な……!!」

右翼を切り落とされたハルピュイアは、わなわなしながら傷口を見ている。ブシューッと血を噴き出しながら、立ち尽くしているのだ。

「おぉっ……!?」

「あ、あいつ……!?」

「は、ハルピュイア様の右翼が……!!」

ローレンスもジョーも、ハーピー達もそこに注目していた。

「とりあえずは、あの時の借り……返させて貰ったぜ。」

「ーーーッッッ!!!」

ニヤケ気味の顔で、のうのうとそう言われ、無い右翼に駆け巡る激痛を超える屈辱が、胸の内から湧き上がる。

「この……クソガキめ……!!もう、生きて帰れると思うな……!!」

そう言いながらぷるぷると震え、力を込める。すると、右翼が再生した。

「んなッッ!?」

「こ、殺してやる……殺してやるぞジェット!!」

気を全開放して、全力で蹴りを放つ。それは見事に直撃した。

「ガハッ……ッ!!?」

壁に叩きつけられ、吐血する。

「しゃあああーーーッッッ!!」

壁に叩きつけられた彼に、無数の蹴りが乱打される。最後にとてつもない威力で蹴り据えられ、壁を突き破ってぶっ飛ばされてしまった。

「ッッ……!!!」

し……死ぬッつーのッッ!!

大ダメージを叩き込まれ、吐血しながら立ち上がる。しかし、既に奴は眼前に来ていた。

「オラァアッ!!」

「ッッ!!?」

しかし奴は、背後から来たジョーに足を捕まれ、無造作に床に叩きつけられた。

そこにギュルルルッと回転しながら飛び上がる影があった。ローレンスだ。

「フンッ!!」

「!!!」

後頭部に蹴りを叩き込み、顔面を床に埋めさせた。その威力で床に亀裂が走り、壁にまで伝わる。

三人は並び、ハルピュイアを見た。

「ど、どうだ……!!?」

「……」

「ヘッ……」

ジョーは何かを察し、笑った。

「……」

ハルピュイアはむくりと起き上がり、ゴキゴキと首を鳴らす。

「やっぱりな……!!」

「どういう事だ……!!我は、全力で蹴ったぞ……!!」

「……」

ジョーは手に魔力を込めて、拳を握る。

「死に晒せェエエッ!!!」

走って、その拳で顔面をぶん殴る。すると、頭が爆発し、吹っ飛んだ。もくもくと、爆煙に包まれる。

「おおっ!?」

「やったか!?」

驚愕する二人を横目に、ジョーの額には嫌な汗が流れていた。体はこんなにも熱いのに、その汗だけが氷水のように冷たい。

「……今、何かしたか?」

爆煙が晴れると、奴は無傷だった。何事も無かったかのように、ジョーを見下している。

「う、ウッソだろお前……!!?」

「何だと……ッッ!!?」

「ぐ……!!」

「フンッ!!」

ハルピュイアは翼を薙ぎ払い、ジョーをぶっ飛ばす。すんでの所で腕をクロスしてガードしたようで、靴を地面に擦らせながら後退した。

腕の交差を解きながら、奴の方へ向いた。

「テメェ、その体……何か、仕掛けがありやがるな……?」

「フフン……仕掛けも何も、私は不死身だ。」

「ンだと……!!?」

「そんなバカな……!!?」

「やべぇ、盗賊王さん呼んでくるしかねぇ……!!」

もちろん、今の状況でそんな事は不可能だ。

この事実で、ハッキリとした事がいくつかある。初めて会った時に嫌に攻撃を当てさせてくれたり、リース街の時の早すぎる撤退……そして、さっきの右翼への斬撃。不死身の体が招くがゆえの慢心に、不死存在の命をも盗む盗賊王に対する本能的な恐怖……考えれば、全て合点した。

しかし……ジェットには、疑問があった。

「ハーピーが不死身なんて話、滅多に聞かねぇな……やっぱり、仕掛けがあるんじゃねぇの?」

その言葉に、ハルピュイアは笑う。

「人間では理解出来ぬ理が、我にはあるのだ……このまま考えても答えなど出まい、悩んだまま死ぬがよい!!」

そう言いながら、竜巻を巻き起こしてきた。全てを切り刻みながら吹き飛ばすような竜巻が、三人に迫る。

「任せよッッ!!」

ローレンスは手刀でその場を薙ぎ払い、竜巻を切り飛ばした。

「はぁあっ!!!」

ジョーが跳び上がりながら拳に全力を込める。奴はそこに注目した。

「馬鹿め!!空中では身動きが……」

「はいよォオッ!!!」

ジョーに気を取られてた彼女の胸に、剣が突き刺さった。厚い胸の鎧を貫き、背中にまで貫通している。

「ッグハァアッ……!!?」

大量に吐血しながら、ジェットを見る。

「何処見てんだァアッ!!!」

ジョーが彼女の頬をぶん殴り、ぶっ飛ばした。とてつもない威力でぶん殴られ、水平にぶっ飛んで壁に叩きつけられる。その壁が崩落し、彼女の体は瓦礫に覆われる。

「ッフンッッ!!!」

瓦礫が暴風で吹き飛び、三人の顔に小石やら何やらがビシビシと当たる。姿を現した彼女の体は、無傷だった。

「調子に乗るなよ……!!」

床を蹴って飛び駆け、ジェットに頭突きする。猛スピードの頭突きを見切れずに、ぶっ飛ばされてしまった。

「うわぁああっ!!」

「チッ!!」

入れ替わるようにジョーが跳び、足を天に向けながら彼女に迫る。

「くたばれ!!」

渾身の踵落としを放つが、それは見切られてしまった。目標を逃した踵が、床を粉砕する。

「そこっ!!」

脇腹に蹴りを叩き込まれてしまう。重い蹴りが脇腹から内臓を揺るがす。

「うぐ……!?」

「ギガストームッッ!!」

とてつもない竜巻がジョーを包み、無数の斬撃を叩き込みながら吹き飛ばした。なす術なく、壁に叩きつけられる。

「ぐぅうっ……!!」

「フンッ!!」

その胸に、重い蹴りを叩き込んだ。体が壁にめり込み、大ダメージを負ってしまう。

「っぐはぁあ……!!」

「斬ッッ!!」

不意に、ハルピュイアの背中に斬撃が叩き込まれた。

「ッぐ……!!」

振り向くと、ローレンスが居た。その姿を確認した瞬間に、顔面に足刀が入る。

「っぐ……!!」

「はぁあああああっ!!!」

魔力を纏った手刀を、振り下ろす。地に手刀がついた途端に、彼女の体の節々がキラキラと、僅かに光った。

「……ッッッ!!!」

両目、喉、首筋、胸、鳩尾、水月の順に、斬撃が走った。何れも深く斬られており、大量の出血と絶命に至らせる程のダメージを与える事には成功した。しかし……

「……」

「ぐ……!?」

傷口から煙が出て、傷が塞がる。完全回復した彼女はローレンスを見下し、笑った。

「やはり、その程度か……くだらん魔法だ!」

そう言いながら、彼を蹴り飛ばした。蹴り飛ばした標的に追いつき、翼を振りかぶる。

「デストラクションウィング!!」

翼に渾身の力を込めて、ぶん殴るように打った。猛スピードでぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられてから、床に倒れ込む。

「うっぐ……ガハッ!」

「こんちくしょうが……!!」

「ぶっ飛ばしてやる……!!」

ジェットとジョーが持ち直し、ハルピュイアに猛攻した。凄まじいスピードで、攻防が繰り広げられる。

「あだだだだだだだだだッッッ!!」

「オラオラオラオラオラァッッ!!」

「ふん、軽い軽い……!!」

二人の猛攻を、涼しい顔で対応し続ける。そして、フッと姿を消した。

「ッッそこだァアッッッ!!!」

ジョーの野生の勘が、次に姿を現す所を察知していた。背後に、渾身の肘打ちを放つ。

「っごふぅうッッ!!?」

案の定、ハルピュイアはそこに現れ、ジョーの肘打ちに直撃した。腹筋を貫き、肉の潰れる音が鳴る。そして、その背中が僅かに盛り上がった。

「くらえぇッッ!!!」

ジェットの拳が、彼女の胸に迫る。厚手の鎧を破壊し、胸筋を貫通し、肋骨を突き破り、心臓を破壊した。

「ーーーッッッ!!!!」

大量に吐血しながら、よろよろと後退する。二人は目を輝かせ、拳を振りかぶり、息を合わせ……

「オラァアアアーーーッッ!!!」

顔面を、ぶん殴った。ぶっ飛んだハルピュイアに、手を向ける。

「はぁああああああ……!!」

「ずぁああああああ……!!」

そこに手を向け、無数のエネルギー弾を放ってダメ押しする。爆発が何度も巻き起こり、しばらく続いた……

「ハァッ……ハァッ……!!」

「ま、魔力を振り絞ってやったぜ……さぁ、どうだ……!!?」

衝撃が収まり、爆煙も晴れる。

「……」

ハルピュイアは立ち上がり、首を鳴らす。

「マジかよ……冗談キツいぜオイ……!!」

「……クソが……なんて事だ、不死身な上に強いんじゃ話にならねぇ……!!」

「……き、貴様ら……!!」

彼女の様子がおかしい。無傷で余裕のはずなのに、何故だか怒りが増している。

……胸の鎧が壊れて、何も隠されずに露出してしまっているのだ。その胸は控えめだが、決して小さくはない美乳……

「……乳だけはキレーだな。」

「〜〜〜!!!!」

ジェットがそう言うと、彼女は高速で熟れていくトマトのように顔を赤らめた。

「死ねッッッ!!!!」

とてつもない竜巻を巻き起こし、ジェット達にぶつける。

「ぎゃああああああッッ!!?」

「ぐぁあああああッッッ!!!」

ジェットもジョーもそれに直撃し、全身にカマイタチを叩き込まれながら、なす術なく暴風にこねられる。

怒りのままに風魔法を連打するハルピュイアの背後に、ローレンスが気配を消しながら立った。

「ハァッ……ハァッ……!!」

無限に再生するのならば……再生出来ぬ程に、バラバラにしてしまえばいい……!!

魔力を全開放し、込められる限りの魔力を両手に込めた。そして、尚も体から魔力を振り絞って両手に集合させる。

「はぁあああああ……!!!」

奴が油断しきっている、今しかチャンスはない……!!

「……なんだっ!?」

ハルピュイアは異常に気付いて、背後を振り向いた。

「ッッ!!!?」

気付かれた……が、間に合った。

腕をクロスして、ニヤリと笑う。

「消し飛べ……!!斬空獄刃波ーーーッッッ!!!」

両手を突き出して、とてつもない威力のエネルギー波を撃ち出した。

「!!!!」

ハルピュイアはそれに飲まれ、全身をバラバラに切り刻まれるような斬撃と全てを焼き焦がすような熱量のエネルギーに融ける。エネルギー波は天を貫いて、この星から出ていった……

「ハァッ……ハァッ……!!こ、これで……どうだ……!!!」

もくもくと、爆煙が舞い上がる。

これで死ななかったら、もう一度体勢を立て直すしか他はないだろう……

そう思っていたら、突如として爆煙が吹き飛んだ。

「……!!」

気付いたら、目の前でハルピュイアが翼を向けていた。その翼に、膨大な魔力を込めて……

「……凄まじい技ね。この私じゃなきゃ、死んでいた所よ……だけど……」

声が、だんだんドスの効いた声になってくる。威圧感と重圧も増して、それに比例するように翼に纏っていた魔力も充実していく。

そして……その表情が、僅かな怒りと大きな嘲笑が混ざったものになった。

「これが、人間の限界よ。」

次の瞬間……大規模な竜巻が、この魔物の砦を包み込む。この場にあった全てが切り刻まれ、跡形もなく吹き飛んでいった……

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