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ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
前章:勇者進撃
4/131

チイの村にて

町を出て、ジェットは旅を始めた。

「そんじゃ、こないだ魔物が襲ってきたっていうチイ村に向かうか。」

ここから、そう遠くない位置にある村だ。

ジェットは、とりあえずそこに向かって歩を進めた……


チイ村……

ローゼ王国よりそう遠くない所にある、片田舎の村である。

片田舎とはいえ物産の方は相当に発達しており、片田舎ならではの物が多数ある。

ローゼ王国と連携したりしながら、静かで平和な村である。

だが……

「うぐぐ……!」

「はぁ、はぁ……!」

ローゼ王国の兵士達が、村人達の治療を受けている。

どいつもこいつも相当なダメージを受けており、ただ魔物が襲ってきただけではないようだ。

「オーライ!オーライ!」

「そこの資材を頼むっ!」

また、別のローゼ王国兵が村人達と協力して、復興運動をしている。

コンテナが高く積まれ、重機があちこちを行き交っている。

見回してみると、村自体も相当の被害を被っているようだ。

まるで、巨大なモンスターにやられたような……

「何があったんだ……」

確かに、こりゃ何か変だ。

ローゼ王国の兵士は優秀で、これだけ居りゃモンスターの大軍なんて押し返せるはず。

なのに怪我人は多く、死者まで出ている。

何か、凄まじい事があったに違いない。

「……あ、物資整えねぇと。」

そう、ここで道具袋でも買おうと思っていたのだ。

安いのだと、200Gで買えるはずだ。

そのあと残金ほとんど無くなるけど。

薬草類は、道中で手に入ると思う。

ジェットは、道具屋へと向かった……


道具袋は、予想通り200Gだった。

いや、そんな事はどうだっていい。

「……いったい、ここで何があった?」

客も居ないし、道具屋のおっちゃんに聞いてみた。

「ああ、あれはこの間の出来事だった……」

おっちゃんは、真剣な顔になって語り出した……

「いつも通りここで静かに商売していたら、急に村の連中が騒ぎ始めてな。何だと思って見に行ったんだ。」

「すると、魔物が押し寄せてきたって所か?」

「……」

道具屋のおっちゃんは頷く。

しかし、まだ何かありそうだ。

「……それだけだったら、ここの専属のローゼ兵が守ってくれる筈だ。わざわざ本国から兵士を派遣する必要も無い筈……なのに、重傷者多数と死傷者数名……冗談にしちゃ、笑えねぇぜ。」

「俺も、それだけだったら珍しくない事だし、兵士さんが何とかしてくれると思った……だけど……」

「だけど……?」

「……魔物達が、首無し巨人を連れてきたんだ。」

「……は?」

首無し巨人……

聞いたことも無いような特徴のモンスター……

そんな奴が、ここを襲った……?

「いやいや、もう終盤……よくて中盤の敵じゃん。もうそこまで世界侵食進んでんの?ヤバくね?」

「俺だって、あんなバケモノがこんな辺境の村に襲いかかってくるなんて思わなかった……死者は兵士達だけじゃねぇ、村人だって死んでるし、若い男の大半は連れ去られた……」

「若い男が?何で?」

「そんなん、出来れば俺が聞きてぇよ……」

おっちゃんは作業を終え、ジェットの方を見る。

「兄ちゃんも、とっととここから離れた方が良い。またいつ魔物が襲ってくるか分からんし……そんなモン腰にぶら下げても、あいつ相手にはどうしようもねぇべよ……」

「やだっ、おっちゃんっ、何言ってんすか!」

「剣の事だバカヤロー。」

股間を押さえて顔を赤くするジェットに、おっちゃんは冷静なツッコミを刺した。

……と、次の瞬間だった。

「魔物だーっ!!」

外から、騒がしい声が聞こえた。

「なにっ!?く、くそっ!こんな時に!」

「お、ジャストタイミング。」

ジェットは指をボキボキ鳴らし、店の外へ出ようとする。

「お、おい!兄ちゃん!まさか、戦う気か!?やめとけっ!兵士達に任せておくんだっ!」

おっちゃんの声を聞いて、ジェットは止まる。

そしてニヤリと笑い、おっちゃんの方を振り返った。

「安心してくれ。俺は勇者だ。」

そう言って手を振り、ジェットは店の外へ出てしまった……

「お、おいっ!?い、今、勇者って……!!」


外……

既に兵士達は魔物と戦闘しており、何とか食い止めている様子だった。

「おお、こえぇ……!」

しかし、戦況はあまり良いとは言えないようだ。

負傷した兵士達から倒れ、万全の兵士達も数の差によって傷ついていく……

「く、くそっ……!!増援はまだかっ!!」

「今呼んでいるようだ……あっ!」

兵士達の間をすり抜け、魔物達がこっちに来た。

「ガァアッ!」

「ガルァッ!」

「ガラァッ!」

ゴブリン……

斧を持った、人型の下級モンスターである。。

頭には角が生えており、筋肉も相当に発達しているようだ。

しかしパワー重視のザコであり、知性は低く、会話の余地も無さそうだ。

そんなモンスターが三体、ジェットに立ちはだかった。

「ま、まずいっ!!逃げろ少年ーっ!!」

「……」

兵士の声を聞き流し、ジェットは剣を抜く。

「……はぁあっ!!」

そして、その場で剣を振り回した。

連鎖するように、背後に積んであるコンテナに斬撃が走る。

するとコンテナは崩れて、ジェットの逃げ場は完全に無くなった。

「っ!!?」

「なにっ!?」

ゴブリン達も兵士達もそれを見て、驚愕の表情を浮かべた。

「おお、すげぇ威力っ!」

ジェットはそう言いながら、剣を構える。

そして、しっかりと魔物を見た。

「さぁ、始めようぜ!」

そのまんま、魔力を解放する。

「シャアアッ!!」

ゴブリンの内の一体が、襲いかかってきた。

ジェットの脳天に、斧が振り下ろされる。

「よっ。」

斧を剣で防御し、勢いよく股を蹴り上げた。

「ギィイッ!!?」

「だぁあっ!!」

更に、その体を横一文字にぶった斬る。

ゴブリンの体は両断され、上半身が地面に落ちた。

「ギャッ……!!?」

「だらぁっ!!」

ジェットは残った下半身をもう一体のゴブリンの方へと蹴り飛ばす。

「ギィッ!!」

ゴブリンは、それを切り払う。

ジェットはそこから飛び出し、ゴブリンの目の眼前に掌を広げる。

「ッッ……!!!」

ゴブリンの本能的なモノが働き、動こうとする。

しかしそれより速く、ジェットの手に魔力が集中し……

「はっ!!」

魔力が爆発し、ゴブリンは氷漬けになった。

「〜っ!!」

背後から、最後のゴブリンが斬りかかってくる。

ジェットは、見ずにその一撃を受け止めた。

「ギッ!?」

「ふっ!」

ジェットの廻し斬りを、何とか受け止めるゴブリン。

「ガァッ!!」

斧を構え、再びジェットに切りかかる。

しかし、ジェットは廻し蹴りで斧の刃を蹴り、すっ飛ばした。

「ギィッ!?」

「しゃあっ!!」

そのまんま、ゴブリンの両腕を切り落とす。

「ガッ……!!?」

「しゃおらぁっ!!」

そして、縦に幹竹割りにした。

真っ二つになったゴブリンが、ドザッと倒れる。

「よっしゃ、今そっちに行く!」

ジェットは剣を持ったまんま、前線へと走る。

そして跳び上がり、回転して剣を振った。

その斬撃で、ゴブリン三体の首がハネられた。

「おおっ!」

「強いな、少年っ!」

兵士達の士気も上がり、モンスターの集団を押し返し始めた。

「グギギ……!!」

「せぇいっ!!」

ジェットの剣が、ゴブリンの一体を貫く。

「おぉおおらぁああああっ!!」

そのまんま振り回し、周りのゴブリンをぶっ飛ばしながら暴れ回る。

「せぇいっ!!」

剣に刺さったゴブリンを蹴り飛ばし、集団に叩きつける。

「はっ!」

手を向けて、薙ぐ。

魔力が流れ、ゴブリン達が次々に凍った。

「イェイッ!!」

剣を振り、凍ったゴブリン達を次々に切り裂いていく。

「よ、よし!少年っ!」

「なんだっ!?」

兵士の一人とジェットは同時にゴブリンを切り飛ばし、背中を合わせた。

「ありがとう!ここはもう大丈夫だ!」

「そうか!でもまだまだやらせてもらうぜ!」

「じゃあ君は、西の方を頼む!きっと、ここより苦戦している筈だ!」

「ああ……!行ってくる!」

ジェットは走り、西へと走った。

「さて、ローゼ兵の力を見せてやるっ!うぉおおおっ!!」

後方では、息を吹き返した兵士達がゴブリン達を圧倒しているのが感じられる。

どうやら、問題は無さそうだ。

「よっしゃ、行くか!」

ジェットは、西へと急いだ……


「くそっ!数が多すぎる……!!」

「うわぁあっ!!」

西では、案の定魔物の大軍が兵士達を襲っていた。

魔物は、ゴブリンだけではなかった。

「あははっ!」

笑いながら飛び回る、両腕が羽になっている女性型モンスターが居た。

このモンスターはハーピーといい、主に風魔法と弓矢で攻撃してくる。

知性はあり、ちゃんと会話も出来るが、説得の余地は無さそうだ。

「うぉおっ!!」

ジェットは、剣をハーピーの胸にぶん投げる。

「!?」

見事に突き刺さり、その胸を貫通した。

「だっ!!」

刺さっている剣を持ち、ハーピーを真っ二つにして、更に滞空する。

「なっ!?」

「だぁっ!!」

もう一体のハーピーを、兜割りで真っ二つにした。

ジェットは地面に着地し、剣の血を払う。

「ガァアッ!!」

その四方から、ゴブリンが迫ってきた。

「しゃっ!!」

ジェットが剣を振るうと、周囲のゴブリン達が静止する。

そして上半身が切り落ちて、ドサドサと落ちていった。

残った下半身から、血が吹き出る。

「うわ、ばっちぃ。」

その血を払い避けながら、ジェットは空に目を向ける。

「な、何者だっ!?」

ハーピーの一体が、ジェットに向かって聞いてきた。

「俺はジェット。まぁごく普通の未成年の餓鬼だ。」

「う、ウソをつけ!!ただの未成年のオトコが、そんな戦闘力を有している筈がない!!」

「いや、筋トレとかしてたし……」

ジェットはそう言いながら、民家の物干し竿を取った。

「所で、竿竹屋って何で潰れないんだと思う?」

「知るかクソガキ!!」

ハーピーがそう言った次の瞬間には、物干し竿がハーピーの胸に打突されていた。

ジェットが竿をぶん投げ、命中させたのだ。

「ーっ!!?」

「せぇいっ!!」

跳び上がって竿を持ち、ハーピーを蹴ってまた跳ぶ。

「おらぁあっ!!」

そのまんまハーピーの群れに突っ込み、数体を一気に薙ぎ払った。

「くそっ!」

ハーピーの一体が、こちらに向けて矢を放つ。

「よっ。」

ジェットは剣で矢を弾き、別のハーピーに当てた。

「ぐぁあっ!」

「このぉっ!!」

ハーピーの一体が、こちらにカマイタチを放ってくる。

ジェットは、カマイタチをキッと睨んだ。

次の瞬間、そのカマイタチが消し飛んでしまった。

「なっ!!?」

「ど、どうなってる……!!?」

「気合。」

ジェットはそう答え、竿をハーピーにぶん投げる。

「ぐはぁあっ!!」

竿が直撃し、ハーピーは壁に叩きつけられる。

「だらぁあっ!!」

ジェットはそのハーピーに、ダメ押しの飛び蹴りを胸に炸裂させた。

「ーーーッッ!!?」

「よっ!」

ジェットは着地し、剣を振るう。

そして、魔物達に向けた。

「さぁどうする!?全滅するまでやるか!?」

そのまんま、じわじわと前進した。

「ぐっ……!!」

「グガ……!!」

ジェットの前身に合わせ、魔物達は後退する。

「ぐぐ……!!こ、ここは……デュラハーンを使うしかない……!!」

「よ、よしっ!やれっ!」

ハーピーの一体がそう言うと、ゴブリン達は何か用意する。

その内の一体が取り出したのは、樽だった。

そして、それに火を付ける。

「……何だそれ?タル爆弾……」

ジェットが、そう言いかけた時だった。

樽の蓋が爆発し、上空で花火が上がった。

「……え?」

何が何だか分からずに、戸惑うジェット。

その前で、魔物達は不敵に笑っていた。

「ふふふ、これで貴様も終わりだ……!!」

魔物達はそう言い捨て、とっとと撤退してしまう。

「く、くそ……またあのバケモノが来るのか……!!」

ローゼ兵の一人が、そんな発言をした。

そして、ジェットの方を向いた。

「強き少年、流石の君でも分が悪いと思う……悪い事は言わない、今の内に逃げるんだ。」

「お、おい……いったい、何が来るってんだよ……?」

撃退した筈の、魔物軍団。

しかし、ローゼ王国兵士達は構え直した。

チイ村を守る兵士達が全員ここに集まり、戦闘態勢をとった。

物々しい雰囲気に包まれる、チイ村。

本当の戦いは、ここからだった……

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