殴り込み
強襲した、魔物盗賊団。
ジェットは激しい妨害を受けながらも、なんとかその本丸へ到着した。
裏口から派手に侵入して、走った。
「……」
やはり、中もそこそこ豪勢だった。
壁には盗品と思われる絵画が並び、物置台には見事な壺がある。
そう思いながら走っていると……
「敵襲だっ!!守りを固めろっ!!」
「兵士を集めろっ!!絶対にここで捕らえるのよっ!!」
「やはり無人じゃねぇか。」
ジェットはそう言い、走りながら拳を構える。
その目の前には、メスゴブリンが数体構えていた。
「だぁあっ!!」
「!!」
一気に加速し、メスゴブリンの一体の顔面に両足蹴りする。
「うわぁあっ!?」
「なにっ!?」
ボーリングのピンのように、集団が倒れた。
「よしっ!」
「調子に乗るなクソガキっ!!」
背後から、一体が強襲してくる。
ジェットはそこら辺の絵画に目をつけ、それを持った。
それをおもむろに振り上げ、背後に向く。
「なっ!?」
「おっらぁあああっ!!」
そして、額縁で脳天を叩き下ろした。
敵は頭から血を噴き出して、倒れた。
額縁と絵画も、粉砕してしまう。
「あ、あいつっ!!絵画を……!!」
「ふっ!」
声を出したメスゴブリンの髪を、ジェットが掴む。
「いっ!?」
「でやぁあっ!!」
そのまんま、思いっきり扉に叩きつけた。
「ぐはぁあっ……!!」
「おりゃあああっ!!!」
そして、その顔面に両足蹴りして、メスゴブリンもろとも扉を吹っ飛ばした。
「よしっ!!」
「うぁああああっ!!」
背後から、斧を持ったメスゴブリンが襲いかかる。
ジェットは素早く足払いして、メスゴブリンをすっ転ばせた。
「っ!!?」
「くらぇえっ!!」
そこら辺の壺を持って、倒れたメスゴブリンに思いっきりぶん投げる。
壺はその顔面に激突して、陶器が割れる音と共に粉砕した。
メスゴブリンも、鼻から血を出して失神したようだ。
「びっくりしたぁ。」
ジェットはそう言いながら、先に進む。
今進んでいるのは、酒やタバコの貯蔵庫のようだ。
使えそうなものをあらかじめ回収して、進む。
次に出たフロアは、大きな居間だった。
そこでは、盗賊のナリのメスゴブリンやデーモンが酒を飲んでいた。
「あァ?」
「なんだいボウヤ?騒がしいと思ったわ……」
「まさか、こんなボウヤがねぇ……」
「シュッ!!!」
ジェットは酒瓶の一つを取り出し、デーモンの顔面にぶん投げた。
それは直撃し、そのデーモンは失神してしまう。
「っ!!?」
「このガキっ!!」
魔物盗賊達は、次々に武器を構える。
ジェットはそれを前にして、酒瓶をもう一個構えた。
その酒瓶を凍らせて、宙に投げる。
そして、足に魔力を纏った。
「くらえっ!!スノウダストストーム!!」
凍った酒瓶を、魔力を纏った足で蹴る。
すると、酒瓶の破片が氷の刃となり、魔物盗賊達に襲いかかった。
「きゃあああっ!!?」
「小癪なっ!!」
デーモンの一体が前に出て、火の魔力でバリヤーを張った。
スノウダストストームが溶けてしまい、無力化される……
「チッ……!」
「くらえぇえっ!!」
メスゴブリンが、大きいテーブルをその手に持ってジェットに襲いかかった。
「だぁあっ!!」
ジェットは、メスゴブリンの胸の真ん中を蹴り据えた。
「ぐっはぁあ……!!?」
その体が後退すると共に、テーブルも手から離れて宙を舞う。
すかさずジェットは走って跳んで、テーブルを掴んだ。
「だっしゃあああっ!!」
そのテーブルで、メスゴブリンを叩き潰した!
「ヒャオッ!!」
また、メスゴブリンがジェットに襲いかかる。
「よっ。」
ジェットはそいつの顔面に、酒をぶちまけた。
「っ!!?」
「この酒、度強いんだってな……ホラよ。」
マッチを擦り、メスゴブリンに投げた。
すると、メスゴブリンは炎上した。
「うわぁあああっ!!あ、あついぃいいっ!!」
「くそっ!!」
デーモンは、魔法で水を作ってそのメスゴブリンに叩きつける。
消化は成功したが、メスゴブリンの顔面は完全に焼き焦げていた……
「くそっ!!この鬼畜少年!!」
「今すぐ、私達がぶっ殺してやる!」
魔物盗賊達は、一斉にジェットに襲いかかった。
ジェットは集団による猛攻に対応しながら、一体一体を順調に叩き伏せていく。
「よく言うぜ!今までさんざん罪のねぇ人間を襲ってこんな贅沢してる癖によ!」
そう言いながら、一体のメスゴブリンの手を蹴り上げた。
「っ!?」
「もらいっ!」
ジェットが取った武器……ナイフだった。
「しゃあっ!!」
そのナイフを、メスゴブリンの腹に突き刺した。
「おぅうぅぅっ!!?」
「ハチの巣にしてやるっ!!」
背後から、物騒な声が聞こえた。
振り向いて、なんとなくメスゴブリンを盾にする。
銃声が響いて、メスゴブリンの背中が何回も撃ち抜かれた。
「な……!!?」
「うぉおおっ!!」
メスゴブリンを盾にしながら、銃撃してきた魔物に突進した。
「せぇえいっ!!」
ある程度近づいてから、メスゴブリンを蹴り飛ばす。
銃撃してきた魔物はメスゴブリンと共に、壁に叩きつけられた。
「がは……!!」
「ふんっ!!」
ジェットはそこに椅子をぶん投げて、二体の頭を潰した。
「このぉおっ!!」
素早く、魔物の一体がナイフで切り込んでくる。
ジェットは、回し蹴りでナイフを蹴り飛ばした。
「なっ!?」
「だおっ!!」
そのまんま、顔面に正拳突きしてぶっ飛ばした。
「ひ、怯むなっ!!ナイフがダメなら銃だっ!!」
魔物盗賊達は銃を構えて、ジェットに撃った。
「うぉおおっ!?」
ジェットは走り回って逃げ、銃撃の雨から逃げる。
「っ!」
そして、高速移動で消えた。
「なにっ!?」
「こっちだ。」
ジェットは、声を漏らした魔物の背後に回る。
「!!」
魔物達は、ジェットを囲んで銃を向けた。
「ぐ……!!」
「う、うつなっ!!私に当たるっ!!」
「囲んでいるんだぞっ!?」
「囲まされているんだっ!!」
「……」
ジェットは笑い、魔物のうちの二体の手を蹴り上げて、銃を奪った。
「いっ!?」
「……」
持ったのは、銃の持ち手ではなく銃身の方だ。
その状態で構え、ジェットはエネルギーを解放した。
「だぁあっ!!だだだだぁっ!!おらぁあっ!!」
ジェットは、なんと銃をハンマーのように扱って魔物達に乱打した。
「ぐぁあっ!?」
「ひぃいっ!?」
「おぐぅっ!!」
ジェットに打たれ続ける魔物達の円が緩み、大きくなる。
「く、く……!!わ、私達が、こんなガキ相手に……!!」
「え、ええいっ!銃がダメならこうだっ!!」
魔物のうちの一体が、斧を取り出す。
そして、ジェットに向かった。
「よっ。」
ジェットは銃を手の内で回して持ち、その魔物の頭を銃撃した。
「な……!!?」
絶句する魔物達の頭を、次々に撃ち抜いていった。
「こ、こんなの、聞いてなっ……」
「嫌ぁあ…っ!!」
「ひ、ひぃいっ!!」
最後の一体が、逃げようとする。
ジェットは、そいつの両膝に銃撃した。
「ぁっ……!!?」
「だぁあっ!!」
そいつの顔面を蹴り飛ばして、先のフロアへの扉へ叩きつける。
「ぐはぁあっ……!!」
「どっせぇえいっ!!!」
そのまんま両足蹴りして、扉ごと魔物を蹴り飛ばした。
扉は吹っ飛んで、ジェットは着地する。
先は廊下で、その奥にはガタイのいい魔物が居た。
鎧を着込んで、角が生えた女形のモンスター。
女性とは思えない程の筋肉と、それに見合ったパワー……
オークだ。
「ひひひ……」
その手にはトゲのついた鉄球を持っており、それを振り回しながら構えた。
「モーニングスターか……!!」
ジェットは銃を回して構え、オークに連射した。
「……」
オークは無言のまんま、扇風機のように鉄球を回す。
高速回転で、銃弾が弾かれてしまった。
「死ねぇえっ!!」
そのまんま、鉄球がジェットに迫ってきた。
ジェットは寸前で避けるが、鉄球のトゲが頬にかする。
「ちっ……!!」
ジェットは銃をしまって、ようやく剣を取り出した。
「ぉおおっ!!」
そして構えて、特攻する。
「えへ……!」
オークは鎖の部分で、ジェットの剣をガードした。
「ふんっ!!」
そして、思いっきり押して見せた。
「うぐぐぐぐぐ……!!!」
ジェットは靴を擦らせ後退しながら、腕にも額にも青筋が立つ程に力を込める。
そして、なんとオークの超パワーを止めた。
「な……!?」
「おらぁあっ!!」
そして、膝蹴りでその腹を打ち抜いた。
その威力は、まさに貫通するが如くだった。
オークの押し出しを止めたジェットの全パワーを、その膝に込めた一撃だったのだ。
「がっはぁあ……!!」
「ラァッ!!」
苦悶するオークに、思いっきり頭突きする。
その額から、血が噴き出した。
「がっ……!!?」
「あだだだだだっ!!はぁあっ!!どりゃああっ!!」
何度も顔面を蹴り、回し蹴りで顔を打ち抜く。
そして、腹に思いっきり正拳突きした。
凄まじい威力で、オークの背中が盛り上がる。
「おっ……ぐ……!!?」
「くらえ……!!」
ジェットは剣をバットのように持ち、峰の方でオークの顔面にフルスイングした。
その凄まじい威力でオークはぶっ飛んで、倒れ込んだ。
「う……ぐっ!」
「ふぅ、行こう。」
剣をしまい、先に進む。
扉を開け放ち、出たのは中庭のようだった。
庭の向こう側に、上へ上がる階段を見つけた。
「……」
ゆっくり進み、辺りを警戒する。
気配は感じないが、警戒しておいた方がいいだろう。
敵は、あくまで隠密行動のスペシャリストだ。
あんな派手は奴は、そういないはず……
「……」
ジェットはいきなり銃を抜いて、そこら辺の木を撃ち抜いた。
「がはっ……!!?」
木の中から、デーモンが出て倒れる。
「隠れ身の術か……」
僅かな殺気で、敵を探知する事が出来た。
「……」
次にジェットは、草の茂みに銃撃した。
「ッ!!」
ナイフを構えた魔物が、頭を撃ち抜かれたようだ。
「……あと一体って所か。」
ジェットは銃を構えながら、先へと進む。
ふと、足を止めた。
「……」
よーく目を凝らさないと見えないような、糸が張っていた。
そっと足を引き、何歩か下がって、目を瞑る。
「……」
「そこ……!!」
背後から、魔物が迫る。
ジェットは瞬時に振り向き、そいつの一撃を止めた。
「な!?」
「よっ、こいっ……!!」
股に手を回し、その体を持ち上げる。
「せぇいっ!!」
そして、糸の方へとぶん投げた。
「!!!」
次の瞬間、爆発が起こって魔物の体は爆発四散した。
辺りに血や肉が飛び散って、ジェットはそれを避ける。
「……これで最後か。」
そう言って、遠慮なく先へと進んだ……
扉を開け放ち、正面を見る。
「ぐぁあっ!!」
「っ!!」
ぶっ飛んできた人影を受け止めて、その顔を見る。
「サルバ!」
サルバだった。
「ぐぐぐ……少年か。」
「同年代だろって……」
サルバは、そこまで酷いダメージを受けてる訳でも無さそうだ。
「ほぉ……また一匹ムシケラが来たのか……」
声のする方に、目を向ける。
そこには、大きな一本角を生やした細マッチョの女が立っていた。
格好は際どく、その手には刃の大きな斧を持っている。
「てめぇはっ!?」
「ふふ……私はセレスト。この魔物盗賊の棟梁だ。」
遂に、魔物盗賊のボスと対面したジェット。
ついでに、サルバとも合流出来た。
「カッカッカ……さぁて、まだ戦いは始まったばっかだぜ……」
「ああ……」
二人は立ち上がり、武器を構える。
そして目を鋭くして、完全に戦闘態勢をとった。
今ここに、盗賊のボスとジェット達が激突しようとしたのだった……




