手にした栄光
はじまるよっ
まずはテスト代わりにプロローグ的な奴から。
ここは、とある異世界の国立魔導アカデミー。
そこでたった今、卒業試験の順位発表がされていた。
この卒業試験の順位は、この世界の生徒にとって非常に大切なものである。
そのランキングで、冗談抜きで自分の今後が左右されていくのだ。
そして何より、三位以内の人には、国家直々に安定した人生を迎えられるという保証がなされるのだ。
金は溢れるほどに手に入り、程よく働きながら、美味いものを食べて美味い酒に酔う……
そんな夢みたいな生活が、このランキング次第では手に入るのだった。
そして今、校長先生の口からランキングが発表されている。
「2位は、亜門 龍奈さんです!おめでとうございます!!」
「……!!」
亜門 龍奈という生徒に、校長先生が直々に賞状と成績優秀の証を手渡した。
生徒達が拍手をして、その生徒を讃えた。
「おめでとう!」
「おめでとう、龍奈ちゃん!」
「よくやったーっ!」
そして、その生徒は歓声を受けながら壇上で優秀者と並んで、『信じられない』という顔をしていた……
「さぁ、そして一位は……!!」
校長がそう言うと、吹奏楽部達のドラムの音が鳴り始めた。
長いドラム音が続き……そして、止んだ。
一時の静寂が、アカデミーを包む。
校長は息を大きく吸って……口を開いた。
「ジェットさん!!おめでとうございます!!」
「!!!」
ジェットと呼ばれた生徒は顔を上げ、目を擦る。
生徒達からも、拍手と歓声が湧き上がった。
「俺が……一位……!!?」
そう言いながら、ジェットはフラフラと壇上に向かう。
身の丈を越える達成感と、それに伴う高揚感。
感極まって、言葉も出なさそうだ。
「おめでとう、ジェットくん!!よく努力した!!」
ジェットは、派手な賞状と成績優秀の証を貰う。
そして、優秀者と並んだ。
「……おっしゃあああーーーっ!!!」
ガッツポーズを取り、喜びを体で表現した。
校長先生も、生徒もそれを見て笑う。
「なんというドラマ!今年のアカデミーの卒業試験のトップは、なんとジェットさんです!よく頑張りましたね!拍手を!!」
校長先生がそう言うと、いっそう大きい拍手喝采がジェットを包み込んだ。
この魔導アカデミーの新たなヒーローが、ここに誕生した。
……はずだった。