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とりあえず普通に暮らしたい。  作者: 輝木吉人
西の少年
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第2話

凌真はため息を漏らす。


今、白崎と部活見学に来ているのだが、

部活勧誘が激しく、とても疲れていた。



「この学校、生徒数と部活数の割合がちょっとおかしいな。部活数が多すぎる。」


部員確保のための先輩方の熱意に感心する。



当の白崎はというと、多大な量の

勧誘のチラシを手に目を回していた。


「あのさ、早く決めてくれないかなぁ」


凌真は気だるげに言う。


「え?あ、でも。私運動ができるわけじゃないし、、、えっと、音楽にも疎くて。」


「じゃあ何がしたいんだよ…ふぁぁ…眠いから帰っていいか?」


凌真は目をこする。


「ちょっとまってよ〜〜」


ひとまず、部活勧誘の波から抜ける。


今は春だが流石にこの人混みの中は暑かったので、少し汗をかいていた。


朝遅刻しかけたので、水筒を持ってきておらず、喉が渇いてきた。



近くに冷水機が見えたので、白崎を誘おうとして、

彼女の方を見ると、膝に足をつき、かなり疲れている様子だった。


「おい、、大丈夫か?」


近づいたその時、さなが顔をあげた。



女の子特有の膨らみの部分が強調されていて、しかも汗で少し濡れていた。


凌真はびっくりしてパッと目をそらす。

良く考えて見れば、女子と2人きりでいるなんて状態は妹を除けば、小学生以来ではなかろうか。


さなは凌真の様子に気づいていないらしい。


「どうしたの?」


さなが余計に近づいてきた。


「ん?あ、いや、あそこにある冷水機の水でも飲みに行かないか?」


うん、と、さなは頷き二人で水を飲みに行くため、ゆっくりと歩き出した。


「どうしよう、、私人見知りだから、やっぱり部活とか無理なのかなぁ、、」


さなは深く思いため息をつかながら言う。



「言っとくが、、人との関わりなしで部活はできないぞ。例えば、お前の友達はどこに入るんだ?」



「この学校にいる友達は、まだ1人しかいないもん。」


むすっとした顔で応える。


凌真は水を飲み終えて、一様聞いてみた。



「そいつは今何してるんだ?一緒に部活を見に行かないのか?」


「行ってる、、じゃん、、、四条くんと。」


凌真はわかっていて聞いたのだが、こう予想通りに返してくるとは思わなかった。


「わかったわかった友達いないんだな。人に話しかけるのにあんだけ勇気がいるんだから。」


瞬間、視界がぐらっと揺らいだ。


その日凌真は、初めて女の子にビンタされた。

思ってるより痛い普通に痛い。


「いてぇ!俺が悪かったから、その追撃準備をしている拳を下げて!拳はダメです!」


さなは強く固めた拳の力を抜くと。かなりしょぼくれた。



「同じ中学の子がいないだけだから!隕石が落ちて来た関係でここに引っ越して来たの!」


凌真は、赤く腫れた頰を撫でながら、


「痛てて、心配するな。俺もいないからさ。でも、まぁ部活に入るのは絶望的じゃないか?そもそも俺はしんどいから運動したくないし、楽器は扱えないし、絵だって下手くそだぞ。」


凌真は時間を確認しようと携帯を見る。


「もうこんな時間か、今日は俺が妹にご飯作ってやらないといけないから。そろそろ帰るわ。」



「あ、うん。付き合ってくれてありがと。」


「じゃあな。また明日。」


凌真は手を振った。



凌真と別れた後、、さなは水を飲みながら部活に入ることをやめようかと考えていた。

遠くから、野球部の掛け声や、軽音楽部のギターの音が聞こえてくる。


蛇口を閉めて、その眩しい人達に視線を向ける。


(憧れるなぁ)


中学生のときには、1人だけ友達がいた。

今はイーストにいる女の子。


その子は、野球もできたし楽器も扱えたし、絵もうまかった。でも、その子は部活に所属していなかった。

サッカー部をすぐにやめてしまった。出来てしまうことが嫌だったらしい。



「なら、作ればいいんだ!アビリティーについて調べたりしてみたいんだよね。あれでも、まみちゃんは能力者ではないらしいから気になるし。」



そうと決まれば、こんなところはおさらばだ。

早く家に帰って、計画を立てるべく、さなは早々に帰宅した。







さなは、次の日、遅刻ギリギリで教室へ飛び込んだ。

自分の後ろの席で凌真が寝ていた。素晴らしい提案を聞かせるべく、体を揺する。


「ねーねー起きてよ。」



「ん?あー白崎か。」



「実は、部活のことなんだけど、、」


「あー!!まてまて、それより次の時間体育だぜ。早く更衣室に行かないと、授業に遅れる。起こしてくれてありがとうよ。」


気づけば、教室には2人しかいなかった。

だがしかし朝のホームルームも終わっていないのに、なぜもうみんなはいないのか。



その時、校内放送が流れた。


(学校に侵入者が入りました。先生の指示に従ってください。そのままグラウンドで待機するように。)


「は?嘘だろ?訓練では、よく侵入者が校内に入ってきた場合の訓練をすることはあるけど、実際に侵入者がでるなんて、、入学早々ついてなさすぎやしないか?」


「グラウンドを見て!四条くん!」


グラウンドには、全校生徒が集まっている。

パトカーのサイレンの音も聞こえる。しかも、何台も。


「おいおい、ただ事じゃないな。ていうか、あの様子だと、、まだ俺たち2人が残ってることに気づいてないぞ。」


「どうしよう、四条くん!」


「今教室の扉を開けるのはまずい。侵入者と鉢合わせになれば、相手が飛び道具を持っている場合、確実に殺される。いや、まぁそんなことはないと思うけどな。どうせ、酔っ払っておっさんが塀を乗り越えたとか、そんなところだろ。」


だが、一人校内に人が入っただけで、あんなにパトカーが来るものなのだろうか。


考えている間にガーン!!と扉を蹴り破る音が聞こえ、大柄の男が現れた。かなり長身だ2メートルくらいはあるだらう。昨日の朝のニュースを思い出した。


「あ、あいつは指名手配犯だ…。」



凌真が見たところ、、威嚇するような笑みを浮かべている表情の裏にどこか安心したような感じがある。


かなり大柄な男だった。全身黒いスーツに身を包み、手でポキポキと音を立てている。


「おいおい、騒ぐなよ。無駄な抵抗はよせ。お前達には黙ってついてきてもらうぞ。」



白崎は怯えきって凌真の背中に隠れている。机を無視して、押しのけながらゆっくりと近づいてくる大男。


机と椅子のギギィという音と男の足音だけが、響いて来る。



凌真はさなに耳打ちする。


「奴は銃もナイフも持ってない。丸腰だ。このまま俺たちを人質にする気だろう。俺がなんとか時間を稼ぐから逃げろ。」


一対一の丸腰の戦いなら負ける気はあまりしない。

それよりも、さなを逃がすことが最優先だ。


「でもっ、、ていうかなんで相手が何にも持っていないって、そんなことわかるの?」



瞬間、凌真が飛び出す。不意のことで避けられなかった大男の顎にパンチが入る。


男は少しよろける。



「いいからいけ!!」


さなは反対側の扉から走って出て行った。


「このガキがぁ!」



大男は殴りかかるが、簡単に凌真に避けられる。

もう一撃、もう一撃と何度やっても避けられる。



攻撃を避けるというより、攻撃の前に既に、避けているような感じだ。


「こいつ俺たちの目的の少年なのか、、やっぱりっ!?でも、ここまでとはっ!」


凌真は隙だらけの大男に頭突きを入れる。流石に自分も頭が痛かったが、ぐずぐずしてる場合ではない。

勢い任せに放った頭突きだ。自分も額から血が少し流れる。



すかさず凌真は完全に相手の懐へ潜り込んだ。


「悪いな、、少し寝ててもらうぞ。」


瞬間、凌真の蹴りが腹に直撃し、机を蹴散らしながら倒れこむ。


ドスン!と重い音が響く。





気絶したのを確認すると、凌真はさなのところへ向かう。もうグラウンドまで出ただろうか。


階段を降りてもやはり人はいなかった。


「きゃーっ!!」


叫び声が聞こえた。


「まさか!くそっ!」


凌真は廊下を走りぬけ、階段を飛んで降りる。


曲がり角を曲がると、本館の玄関に2人の人影があった。


ロープを使って縛り上げられたさなと、細身で長身の男。


見ると、男はさなに銃口を向けていた。


「四条くん!」


外には警察がいるが、人質がいるため、手が出せないのだ。影がたくさん見えるが、中に入ってきてくれる様子はない。


「くそっ、白崎!」


2人いることは想定していなかった。いや、していたが、考えたくなかったのだろう。あの状況では、逃がすしかなかったのだから。


凌真は拳を握る。


男は余裕の表情で銃口をこちらに向ける。


「あいつを倒したことは褒めてやる。頑張ったな少年。でも、まぁこれで終わりだ。おとなしく同行願いたい。別に生きたままとは言われちゃいねぇ。抵抗するのなら、、」


カチャリと金属の音が聞こえる。


「死んでくれ、四条凌真くん。」


(くる、、、、)

凌真は、自分の冷や汗でシャツが冷たくなっていくのを感じる。


見つめる、銃口をただ見つめる。


引き金を引く指がハッキリと見えた。



『バン!』


かなりの速度で銃弾がはなたれ、あたりに血が飛び散る。



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