思い出
ーー宇宙人は存在した。
空想の産物。子供の妄想。SF上の生物。ただそれだけの宇宙人は実在してしまった。
子供の頃の宇宙人がどんなやつらなのかを考えるワクワクした時間は俺たちから永久に失われてしまったのだ。
なぜなら人類は出会ってしまったから。いや、出会いとも呼べない。
出会いとも呼べないその邂逅は俺たち人類にとって最悪な形で訪れたのだ。
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「やっぱかっけーなー!白金銀次大将!俺もあんなふーに宇宙人をみんなやっつけて地球を平和にしたいなー」
「響はテレビに白金大将が出てるといつもその話だよね」
「せんちゃんもきいもばあちゃんもみーんな俺が守ってやるよ!」
「じゃあ守ってもらおうかねえ」
「どんとこい!俺絶対白金大将みたいになる!白金大将はすげーんだぞ!」
「確か白金大将が宇宙人から僕たちを守ってくれてるんだよね、響のおばあちゃん」
「そうか、今は宇宙人がいるんだねえ。ばあちゃんはいまだに信じられないよ。それにばあちゃんはあんまりあの人が好きじゃないねえ」
「なんでだよー!宇宙人から俺たちを守ってくれるなんてかっけーしすげーだろ!なあ、きいもそう思うよな?」
「…う、うん」
「ほら!きいもうんって言ってるだろ!」
「そうだけどねえ」
「きい、なんかばあちゃんに言ってやれよ」
「…そ、そうだね。えーっと…」
「せんちゃんもばあちゃんになんか言ってやれよ」
「うーん。じゃあなんで響のおばあちゃんは白金大将のことが好きじゃないんですか?」
「勘、かねえ」
「勘?なんだよそれ。ただのあてずっぽーじゃん」
「そう、当てずっぽうさ。ばあちゃんはねえ、なんかあの人の目は人間のそれじゃない気がするんだよねえ。冷たすぎるというか、なんかあの人は好きになれないんだよ」
「あてずっぽーなんてデタラメだ!証拠がないじゃん、ショーコが!なあきい?」
「…た、たしかにそうだね」
「世界を守ってるのは事実でそれが素晴らしいことなのも事実なんだけどねえ。なーんか完璧すぎるんだよねえ。突然現れた宇宙人に人間が慌てふためいて、さらに突然現れた白金大将がそれを撃退するなんて、出来すぎてないかい?」
「…そんなんどうでもいいだろ!!世界が平和になれば!!」