死んだ
2016年3月1日日本某所。
「…。」
『No.15戦闘訓練クリア。部屋に戻れ。』
広くどこまでも白い部屋に嫌な電子音が響く。その電子音に従い、自室へと歩みを進めた。
部屋、というにはあまりにも淡泊だ。むしろ独房のよう。それでも物心つく頃にはここで過ごすのが当たり前な俺にはなんの違和感もなかった。
自分以外の人間はモニターや本でしか知らない。知識や体力などはモニター越しから指示されたことをこなし身に付けた。その際にー
『No.15、今日の訓練は終わりだ。自由に過ごせ。』
No.15。恐らく僕にとっての名前はこれの事だ。
自由時間と言ってもモニターに本や食事を注文するか寝る以外のことはできない。
ここで何が行われているか、それは僕にも分からない。本筋が分からないだけでやらされているとこは、一般教養から戦闘訓練。そして謎の力、超能力と言われる力を磨くことをしている。
いつからこんな力が使えるようになったかもう覚えていないが、多分こんな力があるからここで生活しているのだろう。
「もう、死ぬまでここで生活するのかな。」
ヴィーヴィー!!ヴィーヴィー!!
やたら煩い音が部屋を包む。
こんな事はここで生活していて初めての出来事だ。
《折角のチャンスだぜ?その扉を開けてみろよ。》
「…なに?」
頭の中から声が聞こえた。どうすればいいか分からない僕はその声に従い扉を開けた。
言葉を失った。
決して発言の自由を縛られたわけではない。むしろその逆だろう。
僕の目の前には文字通り、何も無くなっていた。
「…。」
先刻まで束縛されていた僕の狭い世界は焼け野原となり、綺麗に僕の部屋だけが取り残されていた。
何が起きたかはどうでもよかった。やっと…。
「やっと…死んだぁ。」
心の底から思った。初めての感情を乗せその言葉を発した。
No.15の僕が齢6歳で初めて自由を手に入れた瞬間だった。