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劇場と三匹の猫

 ガタン、ガタン。

 いつの間に眠ってしまったんだろう。

急にうるさくなったバスの音にかよは目を覚ました。

ゆっくりとまぶたを開けた後、自分は寝ぼけているのかもしれないと頭をふってみる。だけどかよに見える景色は変わらなかった。

 ガタン、ガタン。

大きな音をたてるこの乗り物は、バスではなく白く円形の卵だ。

かよが乗っているのは昼間乗ったドリームランドの乗り物だった。

「私まだ寝ぼけているのかな?」

あたりをきょろきょろ見回してみるも、自分以外の人は見あたらない。

抱いていたはずのぬいぐるみもいつの間にか消えてしまっていた。

 薄暗いあたりにはすんだ空気と星のまたたきしかなかった。

卵はかよを乗せ進む。


 トトン、ガタン。


かよは昼間のことを思い出してみた。

昼間、かよはこの卵にお母さんと一緒に乗ったことを覚えている。

この乗り物で猫たちの暮らす街を見て回ったのだ。

 街は緑でおおわれ、その中を中世のような街並みが見わたすかぎり続いていた。

街は猫たちで活気づき、誰もが幸せそうに暮らしていたのだ。

日が暮れれば猫たちは酒場に集まり、飲めや歌えやの大騒ぎ。

 星のまたたきが一等強くなるその時まで、お祭りさわぎは終わらない。

 かよは一目で猫の街を気に入ってしまっていた。

今日だけで三回も卵に乗り込み、そんなかよにお母さんはにっこりと笑いかけてくれたのだ。

そんなかよがお気に入りを間違えるはずがない。

今は間違いなく猫の街を旅している。

 だけれど、まわりの星のまたたきはずいぶん強い。

自分が眠っている間に猫たちの楽しい宴は終わってしまったのだろうか。

 ガタン、ゴトンっと卵はゆれる。


どうやら旅も終盤らしい。最後は猫の妖精がお別れのあいさつにおとずれる。

魔法の呪文とともに元の世界に帰る魔法の粉をふりかけてくれるのだ。これがかかれば猫の街ともお別れすることになる。


 「……あれ?」

しかしいくら待っても魔法の粉はふってこない。

出口はぐんぐん近づき、光が見えてきてしまった。

「おかしいな。前乗ったときは粉がふってきたのに」

首をくるくるひねっている間に卵は門をぬけ、光の中に飛び出した。

 まぶしくて目をこするかよに誰かが話かけてきたのだ。

「そんなにこすると痛くなるよ」

幼い男の子の声だ。さっきは誰も居なかったのに。

回りを見ると、となりに猫のぬいぐるみがちょこんと座っている。

 ぴんっととんがった耳と長いしっぽ。

ふわふわの胸の毛に青い目。

ひとなですると白いふわふわが手を包み、とても幸せな気分にしてくれる。

居なくなってしまったと思っていた、かよのぬいぐるみがいつの間にか座っていた。


 

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