アイリス
ふわふわのベッドから勢いよくとびだす。その後、天気を確認するために必ず外を見る。
「晴れてる。」
ベッドに入る前とはうってかわって、草花はピカピカ光るし、太陽は笑ってるし、変な日だ。なんて思いながら、そこらへんにあったパンを食べる。何故こんなところにパンがあるのだろう。全くわからない。
パンにかぶりつきながら窓の外一面に広がる草原を見る。
「ん?!」
何やら四角い物体が落ちているではないか。
これは取りに行くしかない。パンをくわえたまま家を飛び出す。
「本…かな?」
古ぼけていて文字が霞んでいるが、面白そうだったので持ち帰ることにした。
「ドキドキする!」
…独りでいると独り言しか話せなくなるのである。
本の表紙をめくった瞬間。
「私」はきっと消えたのだと思う。
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おかしい。確かに本を開いたところまでは思い出せるのに、私は家とは全く違う場所にいた。ここは…どこ?
頭が混乱して独り言も出てこない。
グイッ
「?!」
何者かに急に腕を強めに引っ張られ、その手の主に思わず体を委ねてしまった。そのまま、あたりにちらばる陽気な音楽にのせられ、見知らぬ男性とダンスを踊っている状況になった。
私は切り替えが早い方だったので、これをチャンスにしようと考えた。震える声で男性に声をかけてみる。
「ここはどこなの?あなたはだれ?」
「ここ?ここはスケッチ広場さ。」
男性はさぞ楽しそうに踊りながら答えてくれた。
どうやら、そんなに怖い人ではなさそうだ。
「そして僕は君を楽しませるために必死さ♪」
大笑いしながらダンスをリードしてくれている。
結構、良い人なのかもしれない。
「スケッチ広場?きいたことないわ。」
ここにきて、混乱が落ち着き始め、探究心に火がついた。
「じゃあ、私の名前は?」
男性は驚いている。そりゃ普通そうなるに決まっている。
私は自分の名前など知らない。どうせならこの人に決めてもらおうと思ったのだ。
「君の名前は…そうだね。アイリス!!」
「アイリス?私はアイリス!」
どうせ本当の名などわからないのだから、私はこれから「アイリス」として生きていこう!と決めたのであった。