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ミスティックエクスプローラー  作者: K2R
第一章 ミスティックエクスプローラー
9/20

勝手知ったる仲

 打ち合わせも何も無く二人は左右に展開すると、ジャンプを伴う術技で一気に敵陣に突撃する。一匹ずつ犬形を仕留め。その後はすぐに移動、フットワークを最大限に生かし、予定通りに犬型だけを狙っていく。


 盗賊は敏捷が重要な技能であるし、健太は生命術士ではあるが補助の格闘家用に敏捷を高めている。

その分、二人とも少々打たれ弱いが、攻撃を回避することを祈っていたゲーム時代と違い。今は自らの目で見切り、足を持って避けることが出来る。


 敵のど真ん中にあっては、四方から攻撃を仕掛けられ、回避がままならず受けてしまう事も多々あったが。

そこは久蓮の見立て通りに、低レベルの蟻やサソリの攻撃は二人の防御力を上回ることは無く。傷をつけられることは無かった。

だから二人は、集中する相手を犬だけに定めておき、その攻撃を避け続ければいい。


 すぐに目に見える犬型異形を倒しきり、二人は敵の只中から離れて周囲を見渡す。


「よっしゃぁ。次は丸いのだな。流星キーーック!」


「おい、考えも無くしかけるなよ!」


 久蓮の忠告は間に合わず、健太は球体に向かって跳躍し蹴りを放つ。

健太の蹴りがあたると、その外観に似合わぬ金属音を響かせて、攻撃をはじき返した。


「かてぇなおい」


「いや、お前今の技出てないぜ、通常攻撃だし」


 格闘家だからといって素手攻撃の威力が高いわけではない。設定上、術技使用時に四肢に闘気を宿すということになっている。

それは、マジックポイントを消費することで発生する格闘家の武器といえた。

格闘家は。武器を待たない分、軽量化されているが。ただの攻撃では最弱の火力であり、攻撃時に常にマジックポイントを消費する必要がある、些か燃費の悪い技能となっている。


「ケンはそのまま攻撃。ダメージはほとんど無いし、回復分の魔力はあまり気にするな。俺は、雑魚を倒しておく」


 球体の反撃が無いことを確認し、久蓮は攻撃を健太だけにまかせた。

周囲の雑魚は数が多い上に術技を使うまでも無い。剣を振るえる久蓮だけで倒すことが得策と考える。


「それじゃあ改めて。……《流星脚》!」


 今度も金属音と共に弾かれはしたが、その表面が大きく凹んだのが見えた。


 健太の動きを確認して、久蓮は雑魚の掃討を開始する。

走りながら草を刈るように剣を振っていく。レベル差に高い武器威力が相俟って、力を込めずとも適当に当てるだけで倒せるので、それはすぐに終わりそうだ。


 不意にポケットからエンゲージ警告音が発せられる。

敵陣から少し距離をとって画面を見ると、光点がいくつもこちらに近づいてきていた。


「あの玉を守ろうとしているのか……? ケン、エンゲージ! まずは校舎から一体だ!」


「校舎ってどっちだっつの!」


「お前の真後ろ!」


 そう叫びはしたが、今回の異形は想像以上に素早かった。霧の中から突然飛び出し、そのまま20メートルを跳躍して健太の背中を斬りつけた。


「こなクソっ!」 振り返りながら回し蹴りを放つ。


 異形は大きく後ろに飛びのき、そのまま霧の中へと消えた。


「ケン! 傷は?」 久蓮は素早く健太のフォローに入る。


「ちょっと食らった。鎧がないとこ狙いやがって」


 手早く回復を行う健太を庇うように位置して、久蓮は地図で敵の位置を確認する。

敵は霧の中をこちらを窺うように高速で動いていた。


 レベルは47、姿かたちは人型だ。全体的に細身のシルエットで、影のように黒い皮膚をしている。腰まである針金のような髪を生やし。細く長い足に、両腕は肘から先が鋭い剣になっている。


「ヒットアンドウェーって感じだな。他にも敵が近づいてる、さっさと倒すぞ」


 見えやしないが100メートル以内にまだ敵が多数いるのだ。接近される前に厄介な相手は倒していきたい。


「《虎挟み》」 久蓮が囁くように術技を発動させる。


 《虎挟み》は猟師の術技。自分や仲間ひとりに対し使用し、その対象が近接攻撃を受けた際に発動して相手に小ダメージと敏捷低下、移動不能を与える技だ。


 健太もその術技のことは分かっている。久蓮の意図を察し、敵が潜む方向に背を向け、球体に向かって拳を構えた。久蓮も健太を無防備にするために、すぐさまその場を離れ、雑魚の掃討を再開する。


 久蓮の作戦通り、人型は久蓮のフォローが間に合わない状況になると背中を向ける健太に襲い掛かった。

健太の背中に切りかかろうとした瞬間、地中から鋼鉄の顎が飛び出し、異形の足に食らい付く。


「単純なんだよ、おめぇらは!」 待ってましたと、健太は振り返り、拳を握り締める。 「《四肢連牙》ぁ!」


 身動きの取れない異形は四発全部をモロに浴びてよろめく。


「流石に47は残っちまうか」


 健太がそう言いきるかどうかという頃合に、飛んできた微塵が異形を絡め取る。

倒しきれないと読んだ久蓮が投げた《縛鎖微塵》だ。


「流石のナイスフォローだキュウ。そんじゃ、止めといくぜぇ」 健太は揚々と動けぬ敵に再度術技を繰り出した。



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