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ミスティックエクスプローラー  作者: K2R
第二章 話す
16/20

合流

 バスが入り口側に停まるとバリケードを押しのけて少年と少女が姿を現した。


「リゼットさん!」 少年がバスに駆け寄ってくる。


「よかった。弘樹君も芹香ちゃんも無事でよかったわ」


 まだ小学生ぐらいだろうか。この二人がヒロキとリリのプレイヤーだ。

本当に初心者のようで、装備品も未だ初期装備のミスティックスーツという服を着ている。


「リゼットさんが引き付けてくれたから私たちは大丈夫でした」


「話は後にしましょう。他に避難してきた人を連れてきたの。バリケードをどかして頂戴、皆さんがはいれないわ」


 リゼットに言われ二人はいそいそとバリケードを撤去する。

その間、久蓮たちはバスに積み込んである荷物を運び出す準備をした。


「バスはそのまま壁代わりにするぞ」 虎二が運転席から声を上げる。


 車内がからっぽになるとバスをスロープの終わりまで運び、道をふさぐように止めた。

すでにもう辺りは暗く、目測を誤ったのか、車体が壁にぶつかったような音がしたが、車の傷など気にする必要も無い。虎二は小走りに久蓮たちの待つ店舗入り口に戻ってきた。


「さぁ、中に行きましょう。みんなに挨拶しないと」


 店内に通じる階段は真っ暗だったが、店舗内にはちらほらと明かりが見えた。

ホームセンターだけあって、照明器具、防災グッズと揃っていて、それなりの環境は整えられる。

食料品に関しては心もとなかったが、そこは久蓮たちが持ってきた物資でまかなえそうだった。


「ウェバーさん達はどこにいるの?」


「店の奥の方だ思うんだけど」


 言われたとおりに店舗の奥へと歩いていく。途中、避難してきた人々の側を通ったが、皆、一様に疲れきった顔をしている。

それは久蓮も同じであった。霧が発生してからというもの、休むことなく動き続けているのだ。


「市民を守るのがあんたらの役目だろうが!」


 不意に、向かう先から怒号が響いてきた。

制服姿の警察官が二人、恰幅の良いオジサンに詰め寄られていて。その中心には、弓を背負った男と、筋肉質で長身の男とが、困り顔で様子を眺めている。


 久蓮は内心係わりあいたくなかったが。弓を背負っているのがウェバーであろうし、無視を決め込もうにも、リゼットと健太が足早にそちらに向かえば、これはもう諦めるしかない。

同じ気持ちらしい虎二と並んで、嫌々ながらも後に続く。


「ですから、状況が待ったくつかめていないのです。少し前から電話も通じなくなっておりますし……」


「ふざけるな、それでも貴様ら公僕か」


「いやもう、それは意味わかんないですから。とりあえず今分かっていることを説明するんで、皆さんを集めてください。皆さんを代表して文句を言いに来たんだから、あなたが説明があるって声をかければすぐでしょう」 リゼットがすごい顔で近づいている事に気付いたのか、ウェバーが早口で切り上げた。


 男はなにやらもごもごと言っていたが、ミスティックの力で背中を押されては、抗う事などできず。そのまま呟きながら皆のほうに歩いていった。


「お帰りリゼットさん。囮とはまた無茶をしてくれて、武芸者じゃ多数相手はまずいでしょ」


「あの時はあれしか思いつかなくて。30レベルに三体出られたら、守りきるのは無理でした」


「近接物理系なら弘樹君が……ってまぁいいか」 久蓮たちに目が行って、さっさと打ち切る。


「また新しいミスティックかい。これは頼もしいね」


 警官の一人が片手を差し出す。


「月代久蓮です」


「東健太っス」


「俺はミスティックとやらじゃないんですが。まぁ、宮瀬虎二です」


 久蓮たちが名乗ると今度は警察官二人が自己紹介をする。残る一人は店内を巡回中とのことで名前だけはきいた。


「んで、おれはウェバー、見ての通りの弓使いだ。よろしく」


 短いポニーテールの20代後半に見える男で。

背中の弓は90レベル以上で装備できる、星命弓という武器だ。稀少度を現すランクでは最上級のレジェンダリーに位置する代物だ。


「御堂英冶、格闘家だ。なんか見たことはあるな。グレンとケンタは」


「そうですか? パーティー組んだ事はないですよね」


 それでも同じ町に住めば、何度かすれ違いもするだろう。


 英冶は実際に格闘技でもやっていそうな体系をしている。肌も浅黒く体育会系を地で行く雰囲気だ。

年のころは20代に見えるが、絶対にそうだとは言いきれない。


「さっきのおっさんに言ってましたけど、みんな集めてなんか説明するんスか」


「しなきゃ駄目だよねぇ、やっぱり」 ウェバーが心底面倒臭そうに言った。


「君が言い出したのだろう」 警官が呆れたように言う。


「あまりに面倒くさくて。リゼットちゃんの顔、やばかったし。あのおっさん《一閃》食らってたよ」


「そんなことはしません! ただ、あの方の口ぶりが許せなくて。現状を少しでも見れていれば、あんなことしても無駄だと分かるはずです。……それと、《一閃》は抜刀術なので、大太刀では使えません」


 最後の一言でウェバーは噴出した。


「まぁなんですよ。なんも分かってないって事を分かってもらいましょう。無知の知って奴です、たぶんね」

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