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ミスティックエクスプローラー  作者: K2R
第二章 話す
15/20

避難所

 虎二が目星を付けたというバスというものに、久蓮は心当たりがあった。

嫌な予感を引きずって、虎二の後に続くと、予想通り、ガードレールにぶつかって停まっているバスへと近づいていく。


「本当にそれを使うんですか?」


「まあ、なんか嫌な気持ちは分かるけどよ、今は贅沢も言ってらんねぇだろ」


 虎二は車内に入ると、ハンドルに突っ伏して動かない運転手を引きずり出す。近くの民家の庭にそっと寝かせて、戻って運転席に着いた。


「車内に他にいなくてよかったな。血みどろだと、流石に誰も乗りたがらねぇだろ」


「どちらにしろ良い話ではないです」 リゼットが虎二を諌めた。


「すまない、確かにそうだな。だけどよ、いま日本じゃどれだけの人間が生きてるか分からねぇ。ひょっとしたら死んだ数のほうが生きてる奴より多いかも知れねぇ。そんな中、生きてる奴にプラスな事なら結構重要だと思うぜ」


「ですが……」 リゼットの声は、車のエンジン音によってかき消された。


「大丈夫、虎二さんもリゼットさんが正しいって分かってますよ」 久蓮は不満げなコレットに言った。


「そうでしょうか」


「大人としての責任感見たいなのを感じてるみたいなんです」


「考えは分かります」 リゼットはぼそりとつぶやきバスに乗った。


 久蓮たちはそのままバスに乗って仁科低まで戻った。

道中、コンビニエンスストアに立ち寄り、食料品と、スマートフォンの充電器を貰っていく。もちろん代金は払わなかったが、先程のこともあり、リゼットが怒ることは無かった。


「それでは、そちらの方が安全だというのですね?」 虎二の説明をうけ未だ不安が残るのか、仁科さんは聞きそう返した。


「恐らくは、ですが。なんか停電でここも明かりも使えませんし、空調も止まっているでしょう」


「避難者の中に警察官が三名います。店舗は十分に広く、木材を使ってバリケードも設置中のはずです」

安心させるためにリゼットが付け足す。


「わかりました。では、今すぐ?」


「そうですね。もう日が落ちます。急ぎましょう」


 話が決まると同時に、久蓮とリゼットは地下にある荷物を運び始めた。筋力に関しても常人の数倍以上。健太も加えれば運搬はすぐに終わる。


「なんかすまないが三人は屋根の上に乗っててくれ。久蓮は俺の真上、敵の情報を頼む」


 ミスティックを車外に出すのは対応速度を速めるためだけではない。ミスティックの霧を払う効果、これは車内にあっては効果が薄いということが分かったからだ。


 夕暮れで赤く色づく霧の中をのろのろと進んでいく。

車内は一様に緊張の面持ちで、張り詰めた空気が流れていた。誰もが物音を立てれば異形が寄ってくると言わんばかりに黙り込んでいる。

それに比べ、久蓮たちは少々気楽だ。道順としては、ほぼ来た道を帰るだけ。道中の異形は殲滅しているし、危険は無いと思われる。

警戒えうるに越したことは無いという理由で三人屋根に上げたが実際は久蓮だけでもいいだろうと全員が思っているぐらいだ。


 目的地まで三百メートル程になれば、久蓮たちも本格的に緊張うを解く。この距離で異形がいる可能性はかなり低いと思われる。


「バスの屋根を歩くなんて初めてです」 リゼットと健太も同感のようで、微笑みながら久蓮の傍に歩いてきた。


 距離が二百メートルになれば中にいるミスティックが見れる。


 ウェバー 100レベル 主技能 弓使い  補助技能 錬金術師


 ヒロキ 18レベル 主技能 戦士  補助技能 槍使い


 リリ 12レベル 主技能 生命術士 補助技能 賢者


 エイジ 56レベル 主技能 格闘家 補助技能 盗賊


「すげ、レベ100だ」 と、健太。


 ミスティックの最大レベルは100。この弓使いは現状で最強ということになる。

大して18、12レベルといえば初心者だ。ミスティックの初期レベルは5で始まるので、始めて一週間も経っていない可能性がある。


「はい、ウェバーさんは頼りになります。 ……来てないか」


「どうかしたんですか?」


「はい、私には妹がいるのですが。この場所をメールしたのだけれど」


「そうですか」 久蓮にはそれ以上の言葉は見つからなかった。


「おい、このまま入ってっていいのか?」 運転席かた虎二のこえが聞こえる。


「屋上に向かってください、他の入り口は全部封鎖されているはずです。あそこのシャッターは丈夫そうだったので、そこを使用する手はずでした」


 バスは大きく駐車場を回っていく。

駐車場に面した資材売り場の木材は、そのほとんどが無くなっており。それらはガラス張りの箇所を補強するよう打ち付けられていた。

バスのような大型車が登ることを想定されていないスロープを無理矢理登り、屋上へ。広い建物の上が全て駐車場となっており、店内への入り口はその隅にひとつだけ。

そこにも店内の金属棚などで簡素な防壁が築かれていた。

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