一章:暁風 その五
お雑煮おいしい…。
「物音か…泥棒?」
伶は廊下を歩きながら考え込んでいた。
「ってか、受け付けも物音に気がついたなら兵士でも呼んでおけよ。何でそこを放置するんだ。絶対おかしいだろ。ホント何でクビにならないの?」
そんな本題からそれたことを考えているうちに自分の部屋に着いた。
「よし、ご対面といくか」
こわばった手がドアノブをつかむ。そしてその手を前に動かしドアを開けた…と思っていた。
「え」
前に動いたドアが弧を描かずに文字通り前に傾いて倒れていった。
「な、何でドアが-」
「はっ!」
その瞬間、何者かが声をあげると同時に素早く小さな短刀が伶の目の前に突き付けられた。
「………っ!!」
短刀の主は白い修道服を着ていた。ウィンプルの中で赤い目と黒に近い焦げ茶色の髪をのぞかせて無邪気な笑みをうかべている。
「お帰り。ねぇ、びっくりした?びっくりしたでしょ?」
「なっ…何故来たんだ。美鈴」
「さあね~。何ででしょうね~」
美鈴はいたずらに短刀をゆらつかせながら、ニコニコと笑っている。
「早く短刀をどかして説明しろ。ついでにドアの説明もしてもらおうか」
「いいよ。でもここだと聞こえちゃうから中で話そう」
「ドアが開いていりゃどっちみち丸聞こえだよ。そして、自分の部屋みたいに言うな」
伶は文句を言いながら美鈴と部屋に入っていった。
おしるこも食べたい…。




