一章:暁風 その二
俺、参上!
それでは、お楽しみください。
『コペヤ町に出没した盗賊退治! 』
『モンテート国東の荒野に出るモンスター退治! 』
『珍しいキトン魚求む!釣った魚は依頼主に一部報酬としてもらえます! 』
ギルドの依頼ボードにはところせましと様々な貼り紙が貼ってあった。
「これだけ多いとどれにするか迷うな…。また依頼の内容を整理して選ぶか」
「ねぇ、伶君」
伶の腰ほどの小さい男の子が伶をちょんとつついた。
「キトン魚は売れば高いが、釣りは苦手だから却下」
だが、集中している伶の耳には届かなかった。
「おーい。聞いてるー? 」
「盗賊退治か…これも根本的に無理だから却下」
「モンスター退治か。これなら出来そうだな」
「伶君!!!! 」
「うおっ! マスター! 」
「無視しないでよ! これでも傷つくんだからね! 」
マスターは半分涙目で叫び、恨みたっぷりに伶を睨み付けた。いつもはぴょんぴょんとはねている栗色の髪も今はすっかりしなだれている。
「大人げない人ですね」
「そんな! ボクまだ十歳だよ!? 」
伶は呆れたようにマスターを見下ろした。
「それは見た目だけでしょ。本当は四十九歳のおじさんなのに」
「うぅ。ひどいよ」
「それで、何があったんです?」
茶色い瞳がまんまるになった。
「な、何で分かったの? 」
「マスターがわざわざ所属している人に話しかけるなんて滅多にない事なので。何かあったとしか考えられません」
「いや~。ここに所属してくれて助かった。おかげで手間が省けたよ~」
「で、どうした? あ、まさか脱税でギルドが閉鎖されるんですか! 」
マスターは慌てて反論した。
「それだけは無いから!きちんと払ってるからね! 」
今度は黒い瞳がまんまるくなった。
「え、きちんと払ってたんですか? 」
「当たり前だよ!何で払ってないんだよ! 」
「いや、子供のふりをして免れていたのかと」
「そんなことする訳ないじゃん! もう、全っ然違うよ! 」
マスターは荒くなった呼吸をゆっくりと整えて口を開いた。
「修道女が来たみたいなんだ」
評価大歓迎です!