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三題噺もどき5

登校

作者: 狐彪
掲載日:2026/02/24

三題噺もどき―はっぴゃくさんじゅう。

 




 冷たい風が頬を撫でる。

 前髪が風に煽られて後ろに流れていく。

 短く切りそろえていた髪も気づけば長くなりつつあって、少し鬱陶しい。もう少ししたら切りに行こうかな。

「……」

 スピードをブレーキで調整しながら、自転車を漕いでいた。

 何も気にせずに漕いでいると、気づかないうちにスピードが出ている事がある……らしい。一度、私が自転車を漕いでいるのを見た妹に、早すぎと怒られた。別にそんなつもりはないのだけど。

「……」

 耳元では、イヤホンからお気に入りの曲が流れている。

 片方だけのせいで少々聞きづらいところはあるが、まぁ、それはそれ。自転車を漕いでいるのにイヤホンをしている時点でアウトではあるので、文句は言わない。分かっているのなら外せと言う感じだが、それもそれ。

「……」

 今日は天気がいいのか、少々温かい。

 風は冷たいが、そこまで強く吹いていないので心地いいくらい。

 昨日は暑いくらいだったが、今日はどうだろう。どうやら全国的に夏日を記録した箇所がいくつかあったらしい。2月に夏日という単語を聞くことがあるとは思ってもいなかった。

 それにしては、公園に並んでいる桜も咲いていないのだけど……これから咲くのかな。

「……」

 まぁ、このまま温かくなれば御の字だが。

 また寒くなったり、雪がちらつくようなことがあったりしたら、もう……いよいよ地球も終わりだと思う。

 暑くなったり寒くなったり……ほんとに勘弁してほしい。

「……、」

 視線の先にあった横断歩道の信号が赤になった。

 スピードをさらに緩めながら、進んでいく。

 真横の道路を、信号に捕まるまいとスピードを上げた車が走っていく。

 ……そういえば、いつからか自転車のそういうルールとかがさらに厳しくなるらしい。詳しいことは生憎知らないのだけど、まぁ、そういうのは高校で周知されるだろう。

 でも、車道を走るとかは物理的に無理なのでしたくないのだけど。

「……」

 都会はどうなのか知らないが、この辺りの田舎で車道を自転車が走ろうものなら、邪魔にしかならないし、そもそもそれ用の道路が整備されているわけでもないのだ。

 歩道でさえ狭いところがあるのに、無理がある。

「……」

 キュ―、と完全に自転車を止め、横断歩道前で待つ。

 少し離れた位置に、もう一台自転車が止まる。

 歩行者も数人いるが、まだ時間が早いのかそれとも遅いのか、割とまばらだ。

 小学生はこの辺りは歩いていない。

「……、」

 少し、きょろ、と周りを見渡す。

 数人ほど、見慣れた制服を着た学生が歩いたり、自転車を漕いだりしていた。

 ので、あの子は、いないかなと。

「……」

 同じ自転車通学なので、歩いていることはないのだけど。

 反対側の道路の先を見てみる……も、それらしい影はなかった。

 あの子は、髪が長いから割と分かりやすい。それと、リュックにりんごのキーホルダーがついているのも目印になっている。

「……」

 好きなアーティストのものだ。私も勧められた。色々グッズも集めているらしく、CDはもちろん、ポーチとかも持っている。いいでしょ、とニコニコしながら教えてくれた。可愛かった。

 イヤホンから流れているのは、そのアーティストの曲だったりする。

「……」

 やっぱりいないか。

 最近はあんまり登校時間に会う事がないなぁ。

 何度も言うが、約束をしているわけではないので、仕方ないのだけど。

「……」

 信号が青に変わる。

 離れた位置にいた自転車は、さっさと進んでいった。学生ではなく、社会人だろう。ロードバイクっぽいものに乗っていたので、一瞬で距離があく。

 歩行者は信号が変わったことに気づかず、スマホをいじったままだった。

「……」

 ここで待つわけにもいかないので、私もさっさと自転車を漕ぐ。

 今日は、朝会えればいいけど。












 お題:公園・ポーチ・りんご

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