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Just place of Love  作者: 諏訪貴信


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悲恋のような日常

 青年がいた。青年は恋をした。ある日のことである。


 何の変哲もない日常だった。僕にとっては、そうなる予定だった。僕は人に会うと緊張をする。できるだけひとりでいたい。人に会うとその人に合わせなくてはいけない。それが億劫だった。彼女に会うまでは。


 何の変哲もない日常だった。わたしにとっては、そうなる予定だった。わたしは読書が好きだ。本を読んでいるときだけ、自分でいられる。いやなことも全部忘れられる。それが楽しかった。彼に会うまでは。


 静かな女性がいるな。そう思った。年齢不詳。まあ美人だ。しかし、余計な人間関係は嫌いだ。話しかけないでおこう。僕は、そもそも不必要なおしゃべりが苦手なのだ。

 

 あれ?知らない男性がいる。しかも神経質そうだ。違う・・・、人見知りじゃないかな。そもそも顔が前を向いていない。全身から漂う緊張感がその証拠だ。


 先程の静かな女性が意外に博識な事がわかった。物知りじゃないか。しかし、物知りは君だけじゃない。僕も多少は本を読んでいる。ここぞとばかりに本から得た知識を披露した。


 なんか、さっきの男性の調子がおかしい。ちらちらこっちを見てくる。そして、表情が満面の笑みだ。「それはねー。前期資本主義の特徴なんですよー。アダム・スミスですねー。見えざる手ですよー!」

この人、話そうと思えば話せるじゃん。でも、先生じゃなくて、わたしに向かって話してくるのは気のせいなのかな?


 いいぞ!僕が知性に満ちた人間であることをアピールできた!でも、ちょっと話しすぎてしまった。僕は、話し出すと止まらないのだ。しまった。もう少し、控えめにいかなければ。


 あの人、わたしに惚れてるな・・・。話の最後にわたしに向かって「その髪型似合ってますよー」と言ったのを聞き逃さなかった。単純な人なんだな。でもけっこう面白い。


 女性に好かれるために聞き上手になることだ。しかし、話が止まらない。「民主制と言うのは衆愚政治になるとプラトンが言っています。それを防ぐためには、賢い人間。つまり哲学者が政治を行わなければならないということです。いいですねー、そのピアスお洒落です!」と彼女に対して余計なことまで言ってしまった。


 かなり面白い展開になってきた。必ず話の終わりに彼はわたしを褒める。「頭いいですねー」「良くご存じですねー」「いいですねー」「すごいですねー」。これはもう完全に好きってことだよね。「休日は何をしてるんですかー?」は、あまりにもストレートで面白すぎる。単純でいいなー。


 「また会えませんか?本当に暇な時でいいので」気づけばそう言っていた。僕がこの言葉を口走るとは、不覚をとった。しかしこの出会いは、ただの偶然じゃない気がしていた。直感、いや確信だ。

 しかし、やがて僕は気づく。彼女を好きだったのではなく、彼女を理解したつもりになっていただけだと。

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