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ユウキと勇気

どうなっている……?

目の前には……俺の遺体が転がっていた。

ナイフに反射する自分の顔を覗きこみ、思考がまとまらない。

俺は――あの監視の姿になっていた。


入れ替わり? 乗り移り? それとも夢?


様々な考えが頭をめぐる。

混乱――俺は混乱していた。


だが視界に入るそれが、混乱する俺の頭を一瞬で静めた。

そして、俺はその名を叫んだ――


「ユウキ!!」

「…せん…ぱい?」


「はは……ずいぶんイメチェンしたっすね…」

「俺だって、わかるのか…?」

「わかりますよ…その優しい目は、先輩にしかできないっす…」


ユウキの腹部からは血が零れていた、

俺は服をちぎっ押し当てて止血を試みる。

だが血は止まらない。

明らかな致命傷だった。


「じっとしていろ、直ぐに医務室に連れていくからな」


もう助からない、頭ではわかっている。

それでも諦めたくなかった。

だってユウキは、きっと初めての友達だ。


「もう無理っすよ、何となくわかるんすよもう死ぬって。それに僕エルフなのに魔法が使えないから、だからこの仕打ちも…しょうがないっすよ」


「しょうがないって……」


ユウキはいつものように笑っていた。


でもその笑顔は違和感があった。

正しくない。

正しくなかった―


「……それは、本心か」

「……?」

「生まれた時から罪人って決めつけられて、それで納得してるのかよ……!」


エルフ族の大罪が何なのか俺は知らなし、どうだってよかった。

ユウキは優しい。そんなユウキが罪を背負って生きるのはおかしいと思った。


「おかしいっす…」


ユウキは涙をこらえながら小さく震えてぽつりと言った。

それは、いつも笑っていたユウキが俺に見せる初めての本心だった。


「エルフだからってこんな仕打ちおかしいっすよ。

みんないい人だったっす。大罪なんて関係ない…

魔法を使えない俺を気にかけてくれて、遊んでくれて、ご飯作ってもらって、

なのに、殺されたり、売られたり、なんでこんな――」


ユウキの顔は涙でくしゃくしゃだった。


「先輩…ひとつお願いがあるっす…」


ユウキは瞳を必死に俺に向け、ユウキは言った。


「こんな理不尽な世界を…壊してください…」


ユウキはゆっくりと瞳を閉じた。



その後、俺は医務室にユウキを連れて行った。

しかし、ユウキはもうこの世にはいなかった。


俺は囚人部屋の近くにユウキを埋めた。

監視になった俺が、この部屋で住むことはないだろう。


本来なら、囚人の死体は焼却炉で燃やすのが決まりになっている。

だが、それはしたくなかった。

そんなことをすれば、まるで言いなりになってるみたいだ――俺は抵抗したかった。



…これから、何をすればいい?


監視の姿になってからもう数日が経っていた。

ここで監視のふりをして生きていくべき――

この姿のまま、ここから抜け出すべきなのか


――こんな理不尽な世界を…壊してください…


あのときユウキが言った言葉が脳裏をよぎる。

世界を変えるだなんて…

俺にそんな資格が本当にあるのか?

人を殺し、友達を失い、こうして他人の姿で生きている俺に――。


そもそもこの乗っ取りの能力がどういうものか、俺は何一つ掴めていない

一度きりかもしれない。二度と使えないかもしれない。


(俺にはやっぱり世界を変えるなんて…)


その瞬間だった。

「やめてください!」


視線を向けると、小柄な囚人が監視に鞭で叩かれていた。

「なんだこのふざけた鉱石の量は?」

「こんなんで仕事した気になっているのか?」

「すみません!すみません!」


その光景を見た瞬間、俺は苛立っていた。

――あの頃の自分と、重なって見えた。


気がつけば、体が勝手に動いていた。


「お?お前もやりたいか?」


俺の手はそいつの肩に触れていた。


「おい、なにをして――」


ドカンッ!

轟音とともに、目の前で監視の体が爆散した。

俺の手に火傷の痛みが走る。


魔法を使ったのは初めてだ。

なのに、俺はどうしたら使えるか、なぜか理解できていた。

まるで誰かの記憶が染みついているみたいだった。


「ひいいいい!すみません!すみません」


叫びながら逃げていく囚人を見て、我に返る。

途端に吐き気が襲ってくる。

俺は今、人を殺したんた。


本当にこれが正しいのか?

これで何か変わるのか?

後悔、反省、懺悔――

様々な思考が渦巻く中、ユウキの笑顔がふと浮かんだ。


いや……

もう理由を探すのはやめよう。

そうやって、いつも言い訳を並べて逃げてきた。

元いた世界でも今でも。


勇気を出し、決意した。


俺の手で理不尽な世界を壊す。

その第一歩として、この収容所を粉砕する。

この乗っ取りの力を使って――

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