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あっさり読めるーショートショート・カプセル

ショートショートー返してくれない?

作者: あみれん
掲載日:2025/09/20

「ショートショート・カプセル」シリーズVol.2です。

夢を見た。

夢の中で知らない女が『そろそろ返してくれない?』と言っていた。


次の日も夢を見た。

またあの女が言った。

『ねぇ、そろそろアレを返して欲しいのよ』


それから毎日、同じ夢で同じ女が『アレを返して』と言うのだった。


気になって考えた。

借りたまま返してない物……漫画本、小説の文庫本、映画のDVD、雨傘、あっ、飲み代の3,500円!

う〜む、結構あったんだな。

でも、女からは借りていない。


今日もまた見るんだろうなぁ、あの夢。


やはり見た。

だが女の言うことが少し違っていた。

『あと1週間だけ待ってあげるわ』


期限を切ってきたぞ!


それから毎日、夢の中でカウントダウンが始まった。


『あと6日だけ待ってあげるわ』

『あと5日だけ待ってあげるわ』

『あと4日だけ待ってあげるわ』

『あと3日だけ待ってあげるわ』

『あと2日だけ待ってあげるわ』


女から借りたものなど何もない。

これは単なる夢だ! そう思ってみるが、気になって仕方ない。

それに、なんか少し怖い。


よし、今日見る夢で『何を返せばいいのだ?』とあの女に聞いてみよう。


夢を見た。

あの女だ。

よし! 聞いてみよう。


あのぉ、私がいったい何を――


『明日取りに来るわね。まさか失くした、とか忘れた、とか言わないでよね。そんなこと言ったら……分かっているわよね?』


ビビってしまった。

聞くことができなかった。


どうしよう。分からないものは分からないのだから、「分からない」と言うしかないか。

待てよ、夢なんだから、返す物が分かりさえすれば何でも返すことが出来るんじゃないか?

それとも、夢を見ることもないほどに、しこたま酒を飲んで泥酔状態になってみるのもいいかもしれない。

そうだ!

今日一日寝ずに起きているか。


そう決意した――はずだった。


……目を開けると、白い天井。


『はい、お疲れさまでした。起きて頂いて結構ですよ。15分ほどで検査結果が出ますので、外の待合室でお待ちください』


女の看護師が、私の頭や胸に貼り付けてあったコード類を取り外しながら、体を起こしてくれた。

どうやら眠っていたらしい。


待合室で呼ばれるのを待ち、診察室に入ると、医師がモニターを見ながら話し始めた。


『詳細な診断結果は後日送付しますが……当院のAI睡眠下潜在意識解析方式によりますと、あなたの性格診断結果ですが……』


医師はキーボードを叩きながら言った。

『あなたには、問題を先送りにする傾向があるようです。診断結果は後日、あなたとあなたの会社に送付されます。はい、お大事に』


診察室を出る瞬間、耳の奥で声が囁いた。

『明日……取りに行くわ』

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