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「魔力ってなに?」

根鈴視点


私は、見習いの魔法使い。

学園に通いながら同級生の黒羽に魔法の講義を受けている。

今日はその講義の1回目だ。


「さて、今日は何をしようか……」

黒羽さんが腕を組んで考え込む。


「あの……魔力って、結局なんなんですか?」

つい、素朴な疑問が口から出た。


黒羽の顔がパッと明るくなる。

「いい質問だ! じゃあ今日は“魔力=仕事量”を題材にしよう」


「まず、魔法ってね。結局のところ“エネルギーをどう動かすか”なんだ」

「え、エネルギー……?」

「うん。火を出すにしても、水を作るにしても、現実でやろうとしたら全部エネルギーが要るだろ? それを肩代わりしてるのが魔力なんだよ」


「つまり……電池?」

「そうそう! で、その魔力を“ジュール(J)”っていう仕事量に換算できる」


黒羽はノートに数字を書き始める。


火球1発:1MJ(爆薬数kg分の熱量)


飛行魔法:5MJ(車を宙に浮かせるくらい)


雷撃:10MJ(小さい建物を壊す規模)


「……え、魔法ってめっちゃ燃費悪いじゃないですか」

「だろ? チート魔法って案外エネルギー的に超大変なんだよ」


「あと重要なのはね、魔法で作った物質は“仮想物質”なんだ」

「仮想?」

「そう。本物の水や雷じゃなくて、魔力で形作ったコピー。だからそのままだと崩壊しちゃう。安定化しないとすぐ消えるんだよ」

「……使い捨て、ってことですね」

「うん。魔法は基本ワンショット芸だ」


「絶対そうなっちゃうの?」

「魔力から直接作る場合は、そうだね」

「そうじゃない場合もあるの?」

「うん。魔力……エネルギーからの対生成、素粒子レベルの干渉・操作、原子核融合……

これらを丁寧に演算すれば魔力からなじみ深い物質が作れるらしいよ。

まあ、僕たちには無理だけど」

「え」


「その理由を説明するためにも……

最後に“人間が出せる魔力の上限”。これは代謝から逆算すると、1日で30〜35MJくらい。

つまり、全然足りない」

「え、もうほとんど決まってるんですか?」

「ATPが燃えるときに、ちょっと魔力が漏れてる……そんなイメージだね」

「……つまり私たち、体内発電機?」

「そう! 人間発電所だ!」


黒羽が妙に楽しそうに言うので、つい笑ってしまった。


◇◇


「……ところで、ATPって?」


「アデノシン3リン酸、まあ、筋肉の燃料ってところ」


じゃあ全身の筋肉が燃料タンクか。


「ううん、違う。実際には視床下部っていうところから分泌されてる。

あくまでATPから染み出してるっていうのは量のイメージだね」


「視床下部って……?」


「視床下部は脳の中心付近、視床のすぐ下にある小さな領域。

体温・睡眠・食欲・性欲・ストレス反応・ホルモン分泌の司令塔など、

とても多くの生命維持機能を調整してるんだ。

勿論魔力産生もね?」


「へー……そうなんだ」

無意識に手で頭のあたりを触る。


「つまり魔力は、食欲と性欲と同じくらい大事ってこと」


「えっ!?」

急に同年代の異性から性欲なんて言われて赤面してしまう。


「ちなみにこれらの欲求や感情が大きくなると魔力も増えるよ」


「ひゃー……」

もうやめてほしい。まるで魔力を鍛えるというのは、

そういうのを鍛えるのと同じってことじゃん。


「あはは、話を変えようか」



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