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脳天気
博士と助手がコンサートホールに入ると、中では絶え間ない喝采の他に、むせるような血の匂いが充満していた。舞台から扇形に広がる空間は深紅の座席と観客席で埋め尽くされている。
劇場内の人間は年齢、性別、服装、全てがバラバラだ。彼らに等しく見られるのは生き生きとした規則正しいスタンディングオベーションと――首を無くしていることだけ。
「……ッ」
溢れた胃酸が助手の喉を焼き上げる。咄嗟に抑えて留めたものの、それでも血と吐瀉物が僅かに回ってしまった。
死 体が生 者のように 振 舞う
物が 人 の様に 存在す る
虚 ろ は充 実 を装 う
助手の恐怖と憎悪は音と空間に呑まれ、思考が閉じてゆく。体の底から沸々と顔を出す忌避感。自覚できない生理的嫌悪感が脳を支配する。
それでも拍手は鳴りやまない。
すっぱりとした切断面からはてらてらとした血が溢れ続けている。服は赤く染まり床は濡らし尽くされた。
その傍らで、博士は助手に一瞥もくれず、喝采の海をまっすぐに歩んでいった。
過去一酷い
しばらく書いてないと錆び付く




