ルールの外側・外側のルール
「博士のマスクって誰かの形見……なんですか?」
「ん?あぁこれのこと?」
コンコン、と博士はマスクを叩きながら答える。
「違うよ。コレは僕の自作――というか成り行きでこの形になったんだけど……それがどうかしたの?」
「なら他に見本があったりとかは――」
「ないね」
「えっと、それじゃあ……その……」
言葉に言い淀む。
先日、博士の部屋を掃除していたところ、一枚の写真を見つけた。随分とガラクタの底で眠っていたようで、真鍮のフレームは錆に覆われ、モノクロの写真は劣化によりセピア色へと褪せている。隙間から埃が入ってしまったのだろうか。写真には所々に小さな穴とシミが散らばりより古めかしさを後押ししている。明らかに何十年も前の代物であり露骨に怪しい雰囲気を漂わさせているのに被写体の人物のせいでそれは一層胡散臭さを引き立てていた。
そこに写りこんでいたのはいつもと変わらない博士だった。ゆったりと椅子に腰かけ、足を組んでいる。その上に頬杖を突いた姿はまさに大胆不敵で傲岸不遜。出で立ちから性格の悪さが滲み出ている。
服装も普段の博士と変わらない。
顔にはガスマスクとベネチアンマスクを互いに無理やり縫い合わせたような、奇怪でちぐはぐな面を身に着けていて、頭には無機質なホンブルグハット。全身にはひょろ長い真っ黒のロングコートを羽織っており、手には白手袋を嵌めている。いつものように肌を一切晒さぬ堅苦しい装い。そこに映る博士は今の姿と寸分変わらない姿でこちらを見据えていた。今の状況を楽しむように。
「この前の清掃でこんなものを見つけまして……」
……面倒になったので、正直に話してしまった。
なんだか掌で躍らされていそうで癪に障るがこれはこれで被害が最小限になるだろうから良しとする。
博士は写真を見ると満足そうに頷いて、
「んー、あっそれ六十年位前の写真じゃないかな。懐かしいねぇ、どこにそんなのあったのさ」とワザとらしくそう言った。それも〝助手君の聞きたいことも分かったよ〟なんて気配を漂わせて。
「はぁ……じゃあ単刀直入に聞いちゃいますけど、博士って不老とか不死とかなんですか?」
ズバリ、と聞いてしまう。
「ふふ、よくぞ聞いてくれたね。だが残念だけど僕は不老でも不死でも――ましてや不老不死でもないんだよね」
博士はそう言って椅子に腰かける。
しまった、長話を始めるらしい。
珈琲でも淹れておくべきだったなと考えたがもう後の祭りだった。
博士のイメージをまだ出していなかったなと




