管理人さんにトン単位の感謝を☆ドキドキワクワク掃除大作戦!
「いい加減、片づけましょうよ」
「……片づけるって何を?」
博士は視線を逸らしながら答えた。
いや、いつも仮面を着けているから視線なんて分からないけれど……って今絶対に逸らした!
「シラを切らないでください。……というか自覚があるならなんでこんなになるまで放っておいたんですか」
管理人さんに叱られても知りませんよ、なんて嫌味も付け加えておく。
このラボと住居を兼ね備えている施設はなんでも世界から隔離されているらしい。隔離という言葉が実際に世界から分断されているのか、それとも人間が到達不可能の場所に建てられているのかは知らないが、兎に角、誰も来られない場所にあるのは確かなようだ。
この空間は管理人さんの「フィクション」を博士の謎技術で弄って作られた場所らしく、どういう仕組みで動いているのかよく知らない。というかこの開発経緯すらも極秘らしく助手の僕でさえ伏せられている。これまで「らしい」や「知らない」を多用して曖昧なことこの上ないが、これは本当に知らないので申し訳ない。
このことで僕が唯一知っているのはここへのアクセスの仕方くらいであり、それすらもイマイチ理解していない。なんでも「世界や人間が「扉」だと認識されている物に付属している鍵穴に、特製の鍵を差し込むとこの空間に移動できる」とか。
博士の言葉をそのまま使ったが要は、鍵穴の付いた扉に博士特製の鍵を使ったらここに繋がる扉になる。その扉は何処でも、誰の物でも関係なくただ鍵があればこの場所に移動できるということであり、今までこの認識で失敗したことがないから大丈夫だろう、多分。
見る人が見れば宝の山だし、聞く人が聞けば悪用なんていくらでも考えられそうな技術だけど、僕たちはこの技術を「隠れ家としての機能」と「移動の短縮」にしか使っていない。
それでも破格の機能だが、使いすぎると解析され、場所を特定されてしまうらしく、使用は最低限に、それも人目の付かない場所でしか使用しないように心がけている。
……と普段から制限はあるとはいえ、便利に使わせてもらっている代物ではある。
これ以上は高望み……ということは分かっているのだが……ここには唯一、弱点と呼べるものがある。
当然と言えば当然。当たり前と言えば当たり前ではあるがこの場所は「有限」なのだ。
この施設は逆ピラミッド型をした構造で窓がない建造物なのだが「外」がない。
――つまり何が言いたいかと言うとここは余分な物は建物内に溜まる一方で「自分で物を外に出す」ことをしなければ自由に使える空間が狭まり、物が空間を埋め尽くしてしまうのだ。
そんな住居に一人、少しでも興味がある物を持ち帰り、コレクションするといった趣味がある怪人がいたたらどうなるだろうか。際限なく物は増え続け足の踏み場が無くなるのは自明。しかも自分で持ち込んだものは片づけないのがこういう人種の共通点である。
……言うまでもなく、博士のことだ。
ここが作られた当初、博士は物をひっきりなしに持ち込んだ。ありとあらゆる場所を物という物で埋め尽くし最終的には入り口付近にまで事は及んだという。
これに管理人さんがブチ切れ。
普段は温厚な管理人さんが般若もかくやという顔で狂乱し、あの博士に反省という文字を刻みつけたたしい。
……尤も僕はあの優しい管理人さんが怒っている場面なんて想像もできないのだが。
それからというもの博士は定期的に掃除をすることを誓わされ、一カ月に一回、管理人さんのチェックが入るようになり、それが今日の事前準備「管理人さんにトン単位の感謝を☆ドキドキワクワク掃除大作戦!」に繋がるとかなんとか。
そんな訳で自室の清掃を済ませただ僕は今、博士の掃除を手伝いに来た。
少しは小説らしくなっただろうか……
これは序盤も序盤。話の入り口でしかないので、いつか完全版を作ります。いつか。




