博士の愉快なお話
博士は微笑みながら、語り始める。
「結局さ、一つの法則で人間を区分するのは傲慢なことだし、無理があるんだよ」
「無理がある、とは?」
つい、聞き返してしまった。
少し前、博士は「フィクション」という世界の認識を僕に提示した。人間が世界に干渉する力。世界を意識的に、無意識的に歪める異能。先日、博士は実際にその能力を僕に見せ、その法則を説明した。その力の源を解体し、客観的に「変わらない結果」にしたハズだ。
ならばこれは現実世界を基準とした原理として固定化され、他と比較できる現象として詳述ができる状態とも言い換えることも出来る。「傲慢」であっても「無理に」とはならないだろう。
「価値基準を外に求めすぎなってこと。助手君、君はもっと人間の力って奴を信じなさいよ」
余計に分からない。博士の言葉はいつもそうだ——無駄な説明はしないくせに、要点は曖昧にする。人の心が分からない人、なんだと思う。慣れてるからいいのだけど、面倒くさい。
「……いいかい、フィクションとは人間から生み出される力だ。自己の認識やパフォーマンスにも働きかけることは、もう説明しているだろう。それに、だ。君は客観的な基準ってのを絶対視しすぎているね。忘れるな、人間ってのは世界の下にいる存在じゃない。世界と同じ位置にいるから「フィクション」とかいう暴挙が許されているんだよ」
「はぁ。」
「分かっていないようだね。……じゃあ、例え話をしようか。君は小説とか漫画を読んでいたとする。最近のトレンドは知らないが「バトルもの」ぐらい読んだことはあるだろう?その中では「魔法」とか「超能力」なんて概念があって、その登場人物たちはその「設定」の中で能力を使ったり、縛られたりしている」
……なんか急に俗っぽい例えになった。
「それは創作であり、作者の都合、話がとっ散らからないため、なんて理由なんていくつもあるけど、それは空想だ。フィクションだね」
「ややこしいだけで上手い事言えてませんよ、博士」
「うるさい。で、私たちが生きる世界ってそんな単純じゃないだろう。私たち人間から見たら世界は「あるもの」ではなく、認識して初めて「生まれた」ものだ。設定が人間を作る物ではなく、人間がいるから設定を成り立たせているんだ。……そうは考えてない人もいるけど今は一旦放置。紛らわしいからね。――よって世界の見方・法則は、世界観は人の数だけ生まれ、重なることはあっても重複しない世界が出来上がる。言うならばアレだ。一つの作品に「魔法」とか、「超能力」とか、「異能」とか「錬金術」とか、「呪術」とか、「妖術」とかが、それぞれ矛盾しながら存在しているイメージ、とでも言えばわかりやすいかな」




