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月と一番星
夜空には、巨大な目玉が瞬いていた。その瞳孔からは無数の粒子が、滝のように流れ落ちる。
視界は歪み、星々は狂ったように踊っている。
……ただ一点、月だけを置き去りにして。
降り注ぐ粒の流れは、絶え間なく自我を浸食し、記憶を削り取り、思考の形を壊していく。
身体はもはや命令を受けつけず、ただ痙攣するばかりだった。
それほどまでに、彼の夜空は醜く――美しかった。
「助・手・君。君は本当にお人よしだねぇ」
博士の声が、狂気の膜を裂くように響く。
「月を見なさい。夜を飲み込む彼でも、太陽の残り火を反射する月には触れられないと言ったじゃないか。それに、月は兎に、蟹に、鰐に、ロバに、ライオンに、“女性の横顔”に見えるなんて考えられている。ここは日本だけどそれでも繋がりはあるからね。意味づけなどいくらでもできるし、抜け道はこじつけ次第でいくらでも作れるんだよ。わざわざ彼の世界に付き合ってやる必要なんてない。さぁ、帰っておいで」
文章の練習です。
色々と設定はあるけど今はこれだけで。