深く……深く。
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「あさりさん! 早く次っ、したいですね!」
興奮のおさまらない良子ちゃんと医務室に戻ると、同じ制服を着崩したギャルっぽい女の子がいた。
「お二人さん……そんな所から出てきて、何してたの?」
不覚にも隠し通路から出てくるところを見られてしまった……。汚れた血ではないようだが、目撃者には消えてもらうしかない。髪留めにしている簪に手を伸ばそうとした時だった――。
「ジュ――ン!」
良子ちゃんはそう言ってギャルの子に抱きついた。
「お見舞いに来てくれるの遅いよー」
「ああ、ごめんごめん。キモい神官たちが中々帰してくれなくてさ。元気そうで良かった」
はじめに来ていたクラスメイトたちとは、明らかに良子ちゃんの対応が違う。
「あさりさん。この子、私の幼馴染みのジュン。帆立純って言います。この子も一緒に連れて行って良いですか?」
この状況……すぐにNOとは言えなかった。
〜〜〜
「帆立さん。ちょっと良子ちゃんと、二人で話してもいいかしら?」
帆立さんに汚血の表示がないのは良しとして、少し先走った良子ちゃんとは話さないといけない。
「あ、ジュンでいいですよー。自分、何か食べ物でも貰ってきますねー」
「あーやっぱりジュンは気が利くなあ。なんであんた、男じゃないのよ!」
そう言った良子ちゃんに、ジュンさんはあっかんべーをして医務室を出た。
「良子ちゃん」と名前を呼ぶのを待たずに、良子ちゃんは私に謝った。
「ごめんなさい。私、バカだから小さい頃から同級生にからかわれてて……だけど、ジュンだけは私を庇って一緒に遊んでくれたんです。だからお願いです。私の親友を一緒に連れて行ってください」
良子ちゃんは恐らく、私が彼女を殺そうとしたのに気づいていた。
「……ひとつだけ。絶対じゃないけれど、ジュンさんにも見えるようになる方法があるわ」
「やります!」
良子ちゃんは内容も聞かずに答えた。
「私の前で、彼女と…………ディープキスできる?」