合わないふたり
◆◇
「……ちなみになんだけど。良子ちゃんはお友達の《汚血レベル》を見てどう思った?」
これは聞いておかないといけない質問だ。返答によっては…………。
「そうですねえ。初めは驚いたんですけど、亀井さんと少し話したら私だけじゃないんだって思えて。そしたら、この湧き上がるような気持ちも変じゃないのかなって。すみません、私。説明するの下手で…………要するに、あの子たちを殺したいです」
良子ちゃんがそう言って見せた笑顔は、私が夢で見たような……海面から差し込むキラキラした光りのようであった。
「……そしたら、まずは誰から?」
私はそう聞いて、すぐに名前を言おうとした良子ちゃんの口を人差し指で押さえた。柔らかさと、押し返す弾力のある下唇……その間には僅かに湿り気があった。
「……じゃあ、小さい声で。せーの、で言おうか?」
良子ちゃんが頭を小刻みに上下させる。なんて、自分の欲求に素直な子なんだろう。私は自分が良子ちゃんと同い年の頃にどれだけ理性で自分を縛っていたのか……。そんなことを思い出していた。
「「せーのっっ!!」」
「カイト」
「勇者の子」
呼び方は違えど、同じ人物であることは間違いない。
私たちは、お互いが呼ぶだろう呼び方をしたことに笑った。