豆大福
オーク肉は食べてみると……血生臭く、味もただ単に焼いた豚肉を食べているようで味気なかった。街に着いたら調味料を買おう……そう思った。
「「うぇぇぇぇぇ」」
良子ちゃんはもちろんだが……さすがの勇者も口にしたオーク肉を吐き出した。
「吐くぐらいなら、初めからおばあちゃんにもらった豆大福。食べればいいのに――――」
私がそういうと、勇者様は「そうだった!!」と言ってナップサックから豆大福を出した。紙袋を開けると豆大福が三つ見えた。それを見た良子ちゃんは、すかさず――――
「まこちゃん……いや、勇者様~。どうか私にも一つ~」
綺麗にまこちゃんの前で正座をして、頭を下げ両の掌をまこちゃんに向けた。
「言われなくてもあげるわよ。その代わり……その勇者様っていうのやめてよ。まこでいいし」
どうやら、勇者様と呼ばれるのには抵抗があったようだ。はにかんだ感じが良い。私も便乗しようじゃないか――――。そう思ったのだが、なぜだろう……
「まこちゃん……いや、勇者様~。どうか私にも一つ~」
綺麗にまこちゃんの前で正座をして、頭を下げ両の掌をまこちゃんに向けた。
「はあ? おばさんは豚の肉でも、食ってろし」
「おば? おば? おばおばおばおばおば?」
まるで、汚物を見るような目でそう言った勇者様の言葉が理解できず、私の首はカクカクしながら良子ちゃんの方へと向いた。救難信号である。良子ちゃんはそれに気づいて、豆大福で頬を膨らませながら
「まごぢゃん、おばざんばだめだよ。ごう見えでも、あざりざんば…………二十五歳なんだから!」
もぐもぐそういった良子ちゃんは一番濁してほしい所の前で、豆大福を飲み込んでいうのだった……。
「……冗談だし。変なもの、食べさせたお返しだし!」
そっぽを向いてそういうまこちゃんの差し出した手には、包みに残った最後の豆大福があった。やっぱり勇者ね……そう思った瞬間だった。
豆大福をもらえるなら……私も早速することがある。
「ありがとうまこちゃん」そうお礼を言って、一旦……。豆大福は置いて……。
少し離れたところに向かい――――
「オロロロロロロロロロロォ」
指を喉奥に突っ込んで嘔吐した。
口元と汚れた手をハンカチで拭き、スッキリした顔で戻ると……二人が若干引いているように見えたのだが……。
なぜだろう……さっき二人も吐いてたはずだが???