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ナップサックの中身

◆◇■


「いってらっしゃ~い。気をつけてね~」


 団子屋のおばあちゃんは私たちを『手のかかる子が友達の家に泊まりに行くと知った母親』みたいなテンションで見送った。


「これからどこに向かうの?」


 そう聞く、まこちゃん……いや勇者様は行き先も知らないのに先頭を歩いている。ナップサックの両紐を掴む後ろ姿は、ピクニックに向かう小学生にしか見えない。


「そうですね~ここから近くの街はクサカネシティですので……そこに向かいましょうか」


 おばあちゃんにもらった地図を見ながら答えると、何かにぶつかった。地図をどけると、立ち止まった勇者様がいた。


「……どうかしましたか?」そう聞くと、まこちゃんは目を輝かせていった。


「クサカネシティはね、転移者がいっぱい住む街なの! だからあそこは、漫画や文庫本がいっぱいあるの! 私、おばあちゃんに教えてもらった近道知ってるからついてきて」


 そういって脇道に()れた……まこちゃんを追ってついてきたのだが、ここは森の中のどこらへんなのだろう。


 あたりは暗くなりかけている。まあ、野宿になるのはほぼ決まりとして、焚き火をするための薪になるものを集めないといけない。


「良子ちゃん、近くに落ちている薪になりそうなものを集めて」

「了解ですっ」


 先陣を切って進んだ勇者様は私の後ろで少し震えながら怯えている。


 ふと、薪を集めても火をつける手段がないことに気づいてしまった…………。


「まこちゃん、そのナップサックの中に火をつける物とか入ってるかな?」


 私の見立てでは、ナップサックはおばあちゃんが作ったもの――。つまり、中身もおばあちゃんが――


「そんなの入ってるわけないじゃない。おばあちゃんが色々入れてたけど、重いから替えの下着ぐらいしか入ってないわ」


 ですよねえええええ。やけに、ふさっふさっと縦揺れしてると思ってたものおおおお。表には出さないが、内心うろたえている私にまこちゃんは続けて言った。


「それに私『勇者』よ。火ぐらい……いくらでも出せるわ」


 そういって、私の服を掴んでいた手を離した手のひらには――小さな火の玉があたりを照らしていた。

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