自殺
僕の彼女が自殺した。僕の目の前で。
その日の昼休み、僕は彼女に呼ばれて学校の屋上へと足を運んでいた。その時の僕は「お昼ご飯の誘いだろう。」等と考えていたが、あいにく、その日の天気は雨だった。お昼ご飯じゃないならなんだろうと考えてみたが、僕にはさっぱり分からなかった。だが、彼女からの呼び出しは初めてだったので僕は何か重要な事だと思うと同時に初めての呼び出しと言う事で浮足立っていた。そして、人がこない埃と湿気が混じった不快な匂いのする階段を超えて屋上の扉を開けた。そこには、濡れていて下着がうっすら透けている官能的な僕の彼女がいた。僕は話しかけた。「急に呼び出してどうしたの?初めての君からの呼び出しでびっくりしたよ。何か重要な話があるんじゃないかって。あと、そんなに濡れていたら風邪ひくから僕がいる屋根のある所へおいでよ。」そう言ったが、彼女は「心配ありがとう。でも大丈夫。」そうとだけ返答した。そして、僕は本題に入ろうと口を開いた。「えっと、何の用事なのかな?お昼休みだったからご飯でも食べるのかと思ったけど、今日はあいにくの雨だし、それなら何か話があると思って来たんだけど…」彼女は僕が喋り終わると少し感覚を開けて喋り始めた。「今日、こんな雨の中呼び出したのはね、君だけには伝えて、見てもらいたかったからなの。」それを聞いて僕は返答をする。「聞いてもらいたいなら分かるけど、見てもらい?何か見せたいものがあるの?」そう僕が言うと彼女はいきなり、屋上の柵を超えだした。。その動きに対して僕は言った。「何してるの!危ないよ!」だが、彼女はそんな言葉気にすることなく柵を超えきり、僕の方を見てこういった。「私は最愛の彼氏である君に私が死ぬ所を見てもらいたかったんだ。」そう彼女が言った。僕は理解出来なかった。死ぬ?なんで?どうして?僕、何かしたっけ?と疑問ばかりが頭に浮かぶ中、彼女が続けて喋る。「君は何も悪くないよ。これはただの私のエゴ。この世界で生きていくのが辛くなって死ぬことが救いだと考えてしまった私のエゴなの。だから君は悪くない。逆に君と付き合えたからこそ昔の灰色に染まった人生が色づいてとても楽しくて幸せだった。こんなに幸せでいいのかってくらい。でも、ごめんね。私はもう死なないと救われないの。もう、生きていけないの。」そう聞いて僕は頭はパニックになりながら冷静を装って言う。「いや、少し、落ち着こうよ。僕が話ならいくらでも聞いてあげるしだから、考えなおそうよ…」それでも彼女は強気な態度で言う「もう、私がこの世界で生きるっていう選択肢は無いんだ。何故かは話すと君が絶対に私の為に動いて【私】という存在に囚われたままになるから言わないけど。」そう言い終わると同時に予鈴のチャイムが鳴る。そして彼女は言う。「あーあ、ゆっくり話してられるのもここまでか。もっと君と話して愛し合って楽しく幸せに暮らしたかったな。」と彼女は震えた声で言う。それに対して僕は冷静なんて装えずに本心をむき出しにして言う。
「なら!なんで!君が死なないといけないんだ!考え直してくれよ!君が欲しいものがあるならなんでも買うし、行きたい所があるなら何処ヘでも行く!だから、死ぬなんて考え直してくれよ!」そういう僕の声は雨の音で小さく、響かない声へと変わってしまう。その声は彼女へと届くことは無く、彼女は最後に「ごめんね。ありがとう。」と言いながら屋上から姿を消した。それと同時に雨の音では無い大きな音がした。それと同時に僕は彼女が飛び降りたのだと分かった。僕が最後の希望だったのに僕は彼女の重い言葉に足がすくんでその場から動くことが出来なかった。僕なら彼女を助けられたかもしれなかったのに。僕は愚か者だ。そう思い、僕も彼女と同じ道を辿ろうとしてしまっていた時、彼女の明かりの付いたスマートフォンが柵の下に落ちていた。そこには「愛してる。だから、私の分まで幸せになっt」と表示されていた。その時僕は膝から崩れ落ちて、涙を流した。その日の雨と同じくらい。彼女を思う愛情と同じくらい。彼女と一緒に過ごした想い出を思い出しながら。