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冬は過酷だ。一面を雪が覆い、木々は枯れ、動物は息を潜める。水は凍り、寒さは体力を奪い、薪すら容易くは手に入らなくなる。

 飢えは争いを呼び、争いは死を生み出す。

 しかし闘争は時に進化を促し、その新たな可能性が変化をもたらす。

 新たな争いか、平穏か。どちらにせよ新たな世界に順応できた人間のみが生き残るのだ。


 カイドウ魔法学校学長。ミゼルハイネ・インテルリア。



「おじさん。カイドウにいくにはどの馬車に乗れば良いんだい」


「カイドウ?馬が溺れちまうよ。それともシーホースの友達でも居るのか。まあ、金が有るならおとなしく船に乗るべきだな。それとも死にたいなら桟橋はすぐそこだぜ」


「陸路ではいけないのか。困ったな。船に乗るのにこれで足りればいいんだけど」


 少年が皮袋を懐から取り出した。袋からはジャラジャラと金属の音が鳴り。それなりに硬貨が入っていることがうかがえる。いくら持っているかは分からないが、音からして極貧ではない。男はどうやらこの少年は宿の客だと認めたのだった。


「坊主はどこからこの町に」


「南西のほうの小さな村だよ。ひどいところさ、ひどく乾いていて、作物もあまり育たない。岩肌をさらけ出した山の奥でね。石炭の粉を吸って生きている」


「そりゃ似ているようで、似つかないところだ。特にこの町はこの辺りで一番豊かだからな。さすがに、魔法学校には劣るけどよ。まあ凍死者が出ないのは良さそうだ」

 

 少年は黒ずんだ白い硬貨を10枚取り出した。

 宿を借りるには十分だが、船の運賃には少し足りない。

 もし季節が秋であったら、そこらの漁船に頼むという方法もあっただろう。まだ海は完全に凍りきっていないとはいえ、既に冬。既に魔物の力で薄く氷が張り、小さな船は動けやしない。

 魔法の船か、手漕ぎの砕氷船でなければ、遠く水平線に見えていても、かいどうにはたどり着けないのだった。


「なるほどね。その魔法の船はいくらあったら乗れるかな」


「言っておくが高いぞ。子供にゃ払えねえだろうな。相場はまちまちだが金貨一枚はいる。何なら春まで待った方が安上がりだ。この町なら仕事に困らないからな、ここまで旅をして来られたならなんとかなるだろ」


「忠告ありがとう。けれどそういうわけにもいかないんだよね。春には向こうにたどり着いていないと不味いみたいで。そうだなあ。この町で一番のお金持ちは誰だい」


商人は、質問の意図こそ読み取れなかったが、朗らかなな少年の声に答えを渋る理由も思いつかなかった。


「そりゃあ、一番の金持ちといや領主様だろうな。坊主は会うことも難しいと思うが、それなりに良い領主だ。今の時期なら、運が良いと港で見かけることも有るかもな。カイドウからやって来た客を迎えに出てる事が度々ある」


「その他には誰かいないかい、商人とか、金貸し、それか 魔法使いとか」


「それだったら、港の近くの店を見て回ると良い。そこで宝石か金を扱っているヤツは大抵金持ちだ。後はギルドだな。漁師組合をとりまとめてるギルド長は、ここらの食糧事情を支える大黒柱だ。相当儲かっているだろうぜ」


「この町では、魚ばかり食べているのかい。漁師組合が大国柱だなんて」


「まさか。この町では麦が育たないからな。干した魚を南の方まで持っていって、麦を代わりに買ってくるのさ。あそこは交易船の管理もやっているからな。海賊退治もやっているし、商人が買い付けてきた麦の倉庫だのも漁師組合の持ち物だ。倉庫を商人に貸し付けているんだとさ。魚はほとんど税と食事で無くなっちまう。おかげで安く飯が食えるんだが。組合の収入のほとんどは、土地貸しだって話だぜ」


「へー。町全体の心臓って訳だ。大変だねえ」


「そういうことよ。商人としては少々羨ましいが、俺には海の上で命を賭けるなんて出来ないからな。ありがてえ話だ。ただ。今年は南の方で麦が不作だったとかで、倉庫も寂しいみたいだけどよ。代わりに漁船を増やしているらしいから、飢える心配はしてないけどな」


「ありがとうおじさん。部屋を1つ借りれるかな」


 少年は銅貨を7枚取り出した。1日分にしては少し多い。それを受け取った商人は笑顔で干し魚とスープをつける事を約束した。


「あいよ。いくだけ行ってみるがいいさ。あれだ当たって砕けろってやつ。何にせよ俺は春まで待って漁船に送って貰う事をおすすめするね。という訳で6泊まとめてどうだい。銀貨2枚と銅貨5枚で安くしとくぜ」


「ありがとうとりあえず一泊で十分だよ。だって他に食べ物が旨い宿があるかもしれないだろ」

 

「言うねえ。それで坊主。名前は」


 帳簿をペン先で指し示すして少年に問う。


「エース。結晶のエース、魔法使いの見習いさ」

 

 

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