第32話:お助けの筈が…
「そう…ん?あれ?」
リントはホノカの後ろに起こってる事態に気づく。
「どうした?」
ホノカは振り返って後ろを見る。
後ろ…外で銅色の制服であるCクラスの生徒をSクラスの生徒6人が囲んでいた。
「おい…俺が聞いてるのはなんでたった1年でCクラスに落ちてんだよ」
テングザルの獣人がリスの獣人の胸ぐらを掴み尋ねていた。
「すみません、すみません…」
リスの獣人は胸ぐらを掴まれ所為で服が首に軽くしまっているのに何とか泣きながら謝罪する。
ホノカはこの光景が許せずに止めようとするが…
ガシ
リントはホノカの肩を強く掴んで止める。
「あれに関わちゃダメだ」
ホノカは不満そうな顔でリントに質問する。
「どうしてだ?」
「猿の彼は男爵で、リスの彼はその男爵家の寄子なんだ。寄親にとって寄子の実力は死活問題なんだ」
「?、じゃあ周りは同じ取り巻きか何か?」
「…いや違う…」
リントは一瞬言い淀む。
「じゃあなんでだ?」
「…面白いから、ストレス発散とか君が嫌いそうな…、!?」
ホノカはこの言葉を聞いて一瞬にして消え去る。
「謝ってないで成績を上げ…」
テングザルの生徒はリスの生徒を殴ろうとする。
ガシ
ホノカが腕を掴み止める。
「あぁ?」
テングザルの生徒は掴んだホノカを睨む。
「それぐらいにしたらどうだ?そんなにストレス与えていたら、更に成績が下がると思うぞ」
「はぁ?テメェには関係ない…ってかお前1年だな?しかも見ねぇ顔だな」
猿の獣人生徒はホノカの制服を見て1年生だとわかる。
「あぁ転入生だからな」
「なら余計関わるな、これは俺とコイツの問題だ。お前が介入できる余地はない」
「だからと言って集団でリンチされそうな奴を見て見ぬフリは出来ないんでね」
この言葉でテングザルの後ろにいた生徒が反応し始める。
「あ?俺たちに言ってんのか?」
「後輩の癖に態度デカイな」
「は?何コイツ?」
一緒にいた貴族の生徒がホノカを睨む。
「俺も貴族だからあんたのやってる事は少なからず理解できる。だけど…」
ホノカはテングザルの生徒の腕を解放する。
「虐げられている人間を見て気持ち悪い顔でニタニタしてるテメェらは理解出来ねぇんだよ」
ホノカは後ろにいた生徒を睨み返す。
「あぁ?」「チビが…」「調子乗って…」
一人がホノカへ禁句を言ってしまう。
ゴン
ホノカは一瞬で禁句を言った生徒の懐に一瞬で入り顎にアッパーを入れる。
「「「「「!?」」」」」
その場いた生徒達が何が起こったか分からずに全員が驚く。
「おい!お前何をした!?」
猫の獣人の生徒がホノカへ問いただす。
「何の事だ?」
ホノカは惚ける。
「惚けてんじゃねぇぞ!!」
もう一人の九官鳥の獣人が殴りかかる。
ホノカはさっき倒した生徒にした事をしようとするが…
「やめなさい」
一人の教師がこの場を治める。
「ドゥエル先生…」
ホノカ以外の生徒達がたじろぐ。
「我が校は実力主義だ。だが、成績を悪い者を虐げていいという校則も校風もない。それはわかっているかね?」
グエルはジト目で貴族の生徒達を見つめる。
「「「「は、はい…」」」」
四人の貴族の生徒達は謝るが…
「君たち…」
ビク
平民の生徒二人が逃げようとしてグエルに止められる。
「君たち…成績が良くて自由に出来るのはこの学園での特権だよ。優秀の者は良い役職に就けるがあくまでもそれは平民としての役職だよ。
私が何を言いたいかわかるね?わかったらそれを夢夢忘れないように…」
グエルはこの学園で浮かれた平民の生徒二人に現実を教える。
「「は、はい…」」
二人はグエルが言っている意味を理解して青い顔になり返事をする。
「君が転校生だね?」
「はい…」
「そうか…ではリント君の案内が終わったら、私の部屋に来る様に…」
そう言うとグエルは手を後ろに組みながらその場去っていく。
グエルが去った事により、先程の貴族や平民の生徒達は蜘蛛の子を散らしたように消えていく。
そしてリントがホノカの側にやってくる。
「一様聞いておくけど大丈夫だったかい?」
リントはホノカが大丈夫なのを知っているが礼儀として心配の言葉をかける。
「あぁ…さっきのは先生なのか?」
「そうだよ。あの方はドゥエル先生だよ。この学園で5本の指に入る優秀な先生だよ」
リントの言葉にホノカは意外そうな顔をする。
「君がそう言うって事は本当に優秀なんだろうね」
「うん。他の先生は自身の研究課題だけに熱中する人や貴族の顔色を窺っている人が多いのに、あの方はそんな事を一切しないスゴイ方だよ」
リントはグエルを誉めちぎる。
「じゃあ案内の続きをしようか、ドゥエル先生のところにも連れていかないと行きけないし」
リントは再び案内を再開する。
ホノカは別館である図書館とSクラス専用食堂、1〜3年のSクラスが使用する運動場へと案内される。
「1、2年生は実技の授業が少ないから忘れないようにね。
一定数この場所を忘れて遅刻する生徒がいるから」
ホノカは案内されながら注意を受ける。
「覚えておくよ。教えてくれてありがとう」
ホノカはリントに感謝する。
「いいよ。」
リントは一度止まる。
「まだ案内するところはもう少しあるけど、そろそろドゥエル先生の所に向かうよ?」
「あぁ、頼む」
二人はグエルの部屋へと向かう。
「ここがドゥエル先生の部屋だよ。」
「そういういえば教師一人一人に部屋が与えられるのかい?」
ホノカはふと疑問に思いリントに質問する。
「うん。エストゥデルの先生達の殆どは教授でそれぞれ自身の研究があるから一人一人に個室とか研究室が与えられているんだ」
「成る程」
「じゃあ僕は教室に戻ってるよ」
リントは教室へと向かっていく。
「あぁ、ありがとう」
ホノカはリントに感謝をして、グエルの部屋に身体を向ける。
ホノカは深呼吸をしてからノックをする。
コン、コン
『入りなさい』
中からグエルの声が聞こえる。
「失礼します」
ホノカは部屋と入っていく。
部屋にはグエルの他に青色の制服の女生徒二人が教科書を拡げて勉強していた。
「すまないが、少しそこに座って待っててくれ」
グエルは椅子を指してホノカを座らせる。
座るホノカを女生徒が見つめる。
ホノカが見つめられている事に気づき、女生徒達と目が合うと女生徒達は急いで前を向く。
グエルは少し呆れた表情で女生徒を見ていた。
「続けてもいいかね?」
「「は、はい、お願いします…」」
女生徒は頬を赤らめながら返事をする。
「では…」
グエルは女生徒達の勉強を教えていく。
「ありがとうございます!」
「これで授業についていけます!」
女生徒達はグエルに感謝する。
「うむ。次は自身で復習できるようにしなさい。
私は彼と話があるから、君たちは早く出なさい」
「「はーい」」
「「失礼しました」」
女生徒達はニコニコしながら退出していく。
「やれやれ…」
グエルは先程の女生徒達が使っていた椅子を一脚だけ片付ける。
グエルは自身の椅子に座るとホノカ声をかける。
「こっちに座りなさい」
「はい」
ホノカは返事をして机の目の前に座る。
「さてまず入学おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
ホノカは先程の揉め事で呼ばれたと思っているので、素直に喜べないでいた。
「次に君には教えておかなければならないことがある…」
(「来るな…」)
ホノカは身構える。
「試験の件だ」
(「?」)
ホノカは予想していた内容ではなかったので心の中で首を傾げる。
「あの試験は普通の試験より異常に難しくされていた。」
「えっ…?(はぁあああああああ!??!)」
ホノカは心の中で怒り雄叫びを上げる。
「あれは教師陣の一部が君に恩を売ろうとしたものだ。
教師を代表して謝罪させてくれ…すまなかった…」
グエルは立ち上がり生徒であるホノカに頭を下げて謝罪する。
「え…でもドゥエル先生?がやった訳ではないんですよね?」
「あぁ…だが彼らを止めれなかった私にも責任はある。」
「そんな…」
ホノカはスキルでグエルが本当の事を言っている事に気づく。
「そして…これを聞いてどうか自主退学をしないでほしい…
君の様な優秀な生徒は他の生徒にもいい刺激になる。何よりこの事でイグラシアとペンドラゴンの関係が悪化するのを避けたい…」
グエルは真剣な表情でホノカに懇願する。
「先生…安心してください…私は辞めるつもりはありません。」
ホノカはグエルに好感をもてた。
「助かる…」
グエルはホノカへ頭を下げて感謝する。
「わざわざありがとうございます…」
ホノカは忘れかけていた疑問を打つける。
「そういえばコルナ嬢を知りませんか?探せなくて…」
「あぁ…彼女は体調を崩して今日だけ休ませてほしいと本人の希望で休んでいるよ」
「そうですか…教えていただきありがとうございます」
「これで話は終わりだよ。次の授業の準備をしなさい。
戻るときは気をつけてなさい」
「ありがとうございます。先生もお身体に気をつけてください」
ホノカはクマの酷いグエルを心配する。
「生徒が教師を心配するんじゃない。私はこう見えて強いんだよ。身体造りはしっかりとしてるよ」
ホノカはグエルのぽっちゃり体型にグエルの言葉を信じきれなかった。
「そうなんですか(本当か?、“鑑定”)」
隠蔽
氏名 ドゥエル・ファルマス
所属 エストゥデル学園 教授
種族 獣人族
Lv.200
第一職業 斧術師
第二職業 薬師
称号 名誉貴族
(「隠蔽…?まさか…」)
氏名 グエル
所属 神の使徒 第12階位
種族 獣人族
Lv.1,000
第一職業 斧王
第二職業 薬師
第三職業 錬金術師
称号
(「コイツが…」)
ホノカは一気に殺気だってしまう。
「!?」
グエルがホノカの殺気に気づく。
ホノカは神法術を使ってグエルを連れ攫おうとするが…
バン!
「すみません!先生、教科書忘れちゃって」
先程の女生徒が急いで戻ってきた。
「あ、あれ…?まだお話中でしたか?」
女生徒は二人の唯ならぬ雰囲気を察する。
「…いや、話は終わったよ…ヴィクトル君…悪いが私は次の授業の準備があるので…」
グエルは何とか声を発する事ができ、逃げるように自身の部屋から退出する。
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