第18話:自己犠牲
ホノカは漸く弟の行方を調べる為に教団の資料を手当たり次第に漁っていた。
「放せ!」
その傍らには大崩達一班がいる…
「五月蝿いな…」ボソ
彼らはずっと喚き散らしその五月蝿さにホノカは辟易していた。
ホノカは無視しながら作業していると一通のクシャクシャになった手紙を見つける。
その手紙はあまりにもシワが出来た所為で文字が滲み所々が読めなかった。
第11階位様へ
貴方が難色を示していたイグラシアの件ですが、私自身で解決する事が出来ました。
この事により、貴方が私に任せた計画は私が一任されることになりました。
第12階位 巌頭王より
(「手掛かりは少ないが…次の目的地はイグラシアか…ペンドラゴンの方に戻るのな…」)
「おい!ガキ!無視してんじゃねーぞ!」
「放せって言ってんだろう!」
「ぶっ殺してやる!」
彼らは諦めず喚くのをやめない。
「お前らみたいなクズを解放するわけないだろう…」
ホノカはイラついて、つい返答してしまう。
「だれがクズだ!」
大崩は怒り狂い縛られたまま暴れ出す。
(「くそ、返答するんじゃなかった…」)
ホノカは返答してしまった事を後悔し始める。
(「あとは無視しよ」)
一班は騒ぎ続けるが、ホノカは無視をして資料を一通り漁り、“アイテムボックス”に入れていく。
助けた生徒達が他の生徒を連れて戻って来た。
「君!みんなを集めて来たよ!」
「おい!お前ら俺様を助けろ!」
大崩は他の生徒を脅して助けを求める。
しかし他の生徒達は嫌悪の顔を向けて、大崩の事を無視する。
「それじゃあ、あんたら手を繋いでくれ、今から転移する」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺は此処に残りたい」
一人の生徒が逃げる事を拒否し始める。
「は?」
ホノカは唐突の事に驚き怪訝な顔を生徒
に向ける。
「わ、私も!」「俺も!」
更に他の生徒達も拒否し始める。
「なんでだ?」
「だって俺達はこの神殿で充分暮らせている。それなのになんで出る必要があるんだ?な?」
彼は他の非戦闘スキルの生徒に同意させてようとする。
非戦闘スキルの生徒達は肯定せずにただ俯く。
「おい!」
彼は無視された事にイラついて無理矢理に同意をさせようとする。
「どうやら違うみたいだな…」
ホノカは彼と非戦闘スキルの生徒の間に入る。
「そんなわけ無いだろ!神殿の人達が今迄良くしてくれたのに、それを仇で返すわけ無いよな?!」
ホノカの後ろにいる非戦闘スキル生徒に再び同意を強要する。
ズン
話が拗れてきたので彼の鳩尾を殴り眠らせた。
「ちょっとあんた何してんの?!」
他の生徒がホノカを非難する。
「安心しろ。気絶させただけだ」
(「呪い所為もあるだろうけど教会の奴らの洗脳もあるだろうな…」)
「お前らこうされたくなかったら黙って手を繋げ」
ホノカは反対していた生徒達を凄んで、転移する為に手を繋ぐ事を促す。
「何をしているんですか?」
しかしアーゼルが来てしまう。
「「アーゼルさん!」」
ホノカが凄むことで手を繋ごうとしていた生徒が6人がアーゼルの元に行こうとする。
(「何で生きてんだ!?」)
「おい馬鹿!そっちに行くな!」
ホノカは止めるが彼らはそれ無視しアーゼルの元に向かう。
「さぁ、他の皆さんも此方へ」
アーゼルは他の生徒達も来る様に仕向ける。
しかし、彼らは疑念と怪訝の顔をして、アーゼルを睨み、見つめていた。
「おい!何してんだよ?!」
「そうよ!そんな怪しい奴から離れてこっちに来なさいよ!」
アーゼルの元に行った生徒もアーゼルの元へ行くように促す。
「…嫌」
一人の生徒が口を開く。
「桜さん!嫌って何!?いいか…」
「嫌に決まってるでしょ!!この神殿が非戦闘スキルの私達を蔑ろにして来た!そんなとこに居続けたいのは戦闘スキルを持っている貴方達だけでしょ!?」
桜舞は怒り、今迄溜め込んでいた事を全て吐き出す。
「俺は通に会いたい…ガキの頃からのダチなんだ」
「そんな嘘かもしれないだろ?!」
「確かにな…でもコイツは大崩に襲われてた俺達を助けてくれた…俺はそれに賭ける事にしたんだ」
彼は真っ直ぐな瞳でアーゼルの元に行ってしまった彼らを見つめる。
「はぁ…」
アーゼルがため息を吐く。
「大崩様」
ビク
大崩は急に声をかけられて驚いてしまう。
「強くなっていますね」
アーゼルは大崩に微笑みかける。
「はい」
「貴方の方法は間違っていません」
「はい!」
大崩は自身の全てを肯定された様に感じ悦に浸る。
「さぁもっと強くなってください」
ブチ
アーゼルは大崩達を縛っていたロープを切り裂く。
「死ねぇ!」(“身体強化・極”)
大崩はホノカを殴ろうとする。
ガキン
しかし、阿立がホノカを庇う。
「退けぇ!雑魚がぁああああ!」
阿立は一切抵抗する事なく殴られ続ける。
「?!」
ホノカは反撃しない阿立に疑問に思うが、取り敢えず救う為に大崩を蹴飛ばす。
「ぐえ」
大崩は吹っ飛んで壁へ叩きつけられる。
「お前ら早く手を繋げ!」
彼らはホノカに従い手を繋ぎ始める。
ホノカは彼らを掴む。
(「空間神法術 高等転移『ウラの森』」)
ホノカ達は何とか逃げ出すことが出来た。
「ほう…」
アーゼルはホノカの実力に喜び微笑む。
「に、逃げやがった?!」
大崩はホノカ達が消え去った事に驚く。
「いいんですか?行かせちゃって!」
残った生徒がアーゼルに質問する。
「大丈夫ですよ。彼はまた来ますよ。まず皆さん疲れてしまったでしょう?身体を休めてください」
(ウラの森)
ホノカ達は幸運にも隠れ家の目の前に転移出来ていた。
「皆んな!」
既にホノカに助けられた生徒達が外に出て来て、今逃げて来た生徒達を出迎える。
逃げて来た生徒は集まり慰め合う。
「おい」
ホノカは阿立を呼び止める。その顔は少しだけ怒気を含んでいた。
「さっきは守ってくれて感謝する」
意外にもホノカは先程の礼をした。
「別にいいよ…気にしないで…」
「そうか…じゃあ一つ聞きたい事がある…なんで反撃しなかった?」
「…」
「何故答えない?」
ホノカの声に怒気が増していく。
「…僕は誰も、誰も傷つけたくないんだ…」
「それで自分が傷ついてもか?」
「あぁ…」
「それで他の人が傷ついてもいいのか?」
「…」
「あのクズがお前を攻撃するのを諦めて他の奴を攻撃していたかもしれなかったんだぞ」
阿立はそれに気づいていた為に何も返す事が出来ない。
「自分の考えで自分が傷つくのは勝手だ、だけど一つ言っとくぞ」
ホノカは阿立の胸ぐらを掴む。
「それの所為で誰かが傷つくのを…その可能性に気づいているのに何もするつもりが無いなら…お前はアイツら並のクズだ」
バッ
ホノカは阿立を押すように手を放す。
「俺は残った馬鹿共とクズ共を連れてくる」
「え?」
「アイツらは呪われている。それの所為で思考が一部操作されている。お前とあの女以外皆んなそうだ」
ホノカは桜舞の方を見る。
ホノカはこれからの事を説明する為に他の生徒達の方へ向かう。
「おい。お前ら…」
阿立は一人俯く。
「…」
『お前はアイツら並のクズだ』
「並みか…君は優しいんだね…」
阿立は自身がそれ以上だと言われるような事をしているのはわかっていたが…動く事が出来ない…
阿立はそのまま目を閉じて俯く事しか出来なかった。
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