第13話:混沌の転移者達6
三条の件で全班が急遽集められていた。
「何だろう?」
「緊急のようだって聞いたけど…」
(「まさか非戦闘スキルの私達を追い出すつもりなんじゃ…」)
生徒達は詳しく説明もされず急遽集められた為不安になっていた。
今回は修道女ではなく、若く綺麗なブランドのイケメンが前に出ていた。
因みに修道女は少し離れた所に立っている。
「どうも…皆さま、私はこの神殿で第一神官を務めております、アーゼルと申します…」
アーゼルは悲しそうな顔で自己紹介をする。
「皆様に残念なお知らせがあります…モンスターに襲われた仲間を救うために三条様がお亡くなりになりました…」
「え…?」「嘘でしょ…?」「どうして…?」
アーゼルから告げられた事に生徒達は教師が死んだ時以上に動揺する。
数人は泣いたり、倒れてしまう。
三条は皆んなにとっての希望でありリーダーだった。
「私では皆さまの心傷を推し量ることは出来ません…ですが…そんな私でも皆さまに寄り添う事は出来ます…どうか皆さま私達を頼ってください…」
その言葉と共に騎士達が泣いている生徒にハンカチを、倒れている生徒達に椅子に座らせたり、抱えてそれぞれの部屋に連れて行く。
「二度とこのような事が無いように今迄以上に強くなってください…どうかお願いします…」
アーゼルは涙を流しながら生徒達に懇願し頭を深々と下げる。
その姿に何人も生徒は心を打たれ…アーゼルの言葉を皆が聞き入っていた。
アーゼルはこの短時間で生徒達の心を完全に掌握していった。
アーゼルは顔を上げて涙を拭う。
「この後に三条様のお葬式を行います。皆さまも…お辛いでしょうがしっかりと三条様を葬いましょう…
お葬式の準備がありますので私達は失礼します」
アーゼルは修道女と騎士を連れてその場を離れる。
「どうして三条君が…」
「三条君で勝てないモンスターなんて…」
「通…」
「三条の仇を討つ為にも強くならないと…!」
「そうだな。」
1班と3班以外の生徒達は悲しみ、三条の仇討ちを決意を堅める。
(神殿の廊下)
「君と騎士達は彼に寄り添ってあげてください…」
アーゼルは修道女達に生徒を任せる。
アーゼルが暫く廊下を歩いていると…
ズズ
壁から何者かが透過して現れた。
アーゼルはその場で止まる。
現れた男はその場で膝をつき平伏した。
「お勤めご苦労様です…第11階位 灰燼王 アーゼル様…」
アーゼルは『神の使徒』の第11階位で教団の最高幹部だ。
「うむ…それで三条という男はまだ見つからないのか?」
「…はい」
「そうか…一班の奴らは嘘はついているが、本当に三条が死んだと思っている…
でもアイツらに変わった様子はない…
という事は何者かに助けられた可能性がある…
そして可能性は低いが…三条が覚醒したのかもしれない、急いで奴を見つけろ」
「はっ」
「わかっていると思うが…目撃者は消せ」
「はっ」
男は立ち上がり壁の中に入って去っていった。
「全く…殺すなら死んでいるか確認しろ…」
アーゼルはぼやきながらそのまま廊下を歩いていった。
(第三班の部屋)
「皆んな伝えなくて良かったのか?」
田本は不安そうに阿立に質問する。
「…今、神殿の人達と皆んなは大崩達一班の話を信じている…僕らがいくら言ったて無駄だよ…」
阿立は田本の意見を却下する。
「で、でも!」
「今…非戦闘スキルの人達が蔑まれている状況で山本君だけ意見が違えば山本君の身が危険が及ぶ可能性がある…だからごめん…」
阿立の懸念している事は正しく…
他の班員にとって、正しさの基準は既に戦闘スキルの有無と神殿になっていた…
「そ、そっか…そうだな…」
田本は自身の無力を痛感して泣きそうな顔で納得するしかなかった…
「俺の所為でごめん…」
山本は泣きながら二人に謝る。
「お前の所為じゃないだろ!大クズと浦杉の奴が…」
田本は山本を慰める。
ぐら
山本は貧血で倒れそうになる。
「山本!」
田本は山本の肩を支える。
「俺、念の為に山本を医務室に連れて行くよ」
「うん…」
山本と田本は医務室へと向かう為退室する。
「…」
ポタ
阿立の頬から涙が落ちる…
「僕は…なんで…僕を助けてくれた三条君のために動けないんだ…」
阿立は泣き崩れてしまう…
「なんて僕は弱いんだ…」
(一班の部屋)
「ひひひ」
大崩は壊れたように笑っていた…
「アイツどうしたんだ?」
「さぁ…」
班員も大崩の事を気味悪がっていた。
「俺の時代がやってきた」ボソ
「ん?」
「ヒャヒャヒャヒャヒャ!」
班員達は大崩の事を冷たい目で見始める。
大崩は壊れた理由は…
氏名 大崩スバル(邪神の悪しき加護)(光神の恩寵)
種族 人族(転移者)
レベル64
職業 なし
称号 なし
恩寵『異世界言語』
加護『重力魔法Lv.60』
『身体強化Lv.MAX』
呪詛『加護の譲渡』、『加護への執着』
大崩は三条のスキルを手に入れていた。
人を殺した事により自身が強くなり、
到頭…彼は人を殺すことに快感を覚えてしまった…
大崩は完全に壊れてしまった…
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